3行でいうと
- 「国産」と名乗っていても、中身まで国産とは限らない。
- 日本のモデルの作り方は、ゼロから学習、海外モデルに日本語を足す、そのまま自社名で出す、の3つ。
- Rakuten AI 3.0は、DeepSeek V3が土台だと楽天が3月27日に認めた。
- 土台が海外でも、それだけで悪いとは言えず、土台を明示しているかを見る。
「国産のAI」という言葉は、よく見かけます。ただ、国産と名乗っていても、中身まで国産とは限りません。
ここでは、日本の組織が出しているモデルを、「中身は何か」と「手元にダウンロードできるか」の2つの目で並べました。ローカルで使うAIを選ぶ前に、押さえておきたい話です。
なぜ中身を見るのか
ローカルで動かすAIは、いちど手元に置けば、あとから使用を止められることがありません。クラウドのAIが使えなくなる場合の、保険になります。
ただ、保険として選ぶなら、「そのモデルが何をもとにしているか」は知っておきたい点です。たとえば、中国のAIを避けたいと考えているときに、国産と書かれたモデルの土台が中国製だったら、狙いとずれてしまいます。
3つの作り方
日本のモデルは、大きく3つの作り方に分けられます。
- ゼロから学習する。 設計も学習も自前で行います。手間と計算資源がいちばんかかります。
- 海外のモデルに、日本語を足す。 公開されているモデルに、日本語のデータで追加の学習をします。日本語に強くなり、費用も抑えられます。これ自体は、正当なやり方です。
- 海外のモデルを、そのまま自社の名前で出す。 土台を明かさずに出すと、問題になります。
2番は、ライセンスを守って土台を明示していれば、悪いことではありません。問題になるのは、土台を伏せたり、「国産」と受け取れる見せ方をしたりする場合です。
並べてみる
公表されている範囲で、整理しました。「手元に置けるか」は、重みファイルを自分でダウンロードして動かせるか、という意味です。
| モデル | 開発 | 中身(公表されている範囲) | 手元に置けるか |
|---|---|---|---|
| LLM-jp-4(32B-A3B) | 国立情報学研究所など | ゼロから学習。11.7兆トークン。設計はQwen3のMoE系を借りている | 置ける(Apache 2.0) |
| PLaMo 3(31B・ベース版) | Preferred Networks | 自社で学習。120Bのモデルから蒸留 | 置ける。ただし会話用の調整前。PLaMo Community License(商用は登録が必要で、年間売上10億円未満が条件) |
| PLaMo 2.0 | Preferred Networks | 自社で学習 | 置けない。さくらのAI Engineなど、API経由 |
| tsuzumi 2(30B) | NTT | 他社のモデルを土台にせず、一から開発したとNTTが説明 | 確認できた範囲では置けない。Microsoft Azureで提供 |
| Sarashina3 | SB Intuitions | 大きさも作り方も非公表 | 置けない。ソフトバンクのクラウドでAPIのみ(東日本は6月30日から) |
| Sarashina2.2(3Bなど) | SB Intuitions | 前世代のオープン版 | 置ける(MIT) |
| Qwen3-Swallow(30B-A3B) | 東京科学大学・産総研など | Qwenに、日本語の追加学習 | 置ける(GGUF版あり)。ライセンスは要確認 |
| Rakuten AI 3.0 | 楽天 | DeepSeek V3をもとにしたことを、楽天が3月27日に認めた | 置ける(Apache 2.0)。ただし6710億パラメータで、家庭では動かせない |
楽天の件で分かったこと
Rakuten AI 3.0は、2026年3月17日にHugging Faceで公開されました。公開後、設定ファイル(config.json)に「deepseek_v3」と書かれていることが見つかります。大きさや構造も、DeepSeek V3と一致していました。
楽天は、3月19日の時点では、土台のモデルは非公開だと説明していました。3月27日に、DeepSeek V3が土台であることを認めています。最初の公開時には、DeepSeekのライセンス表示が抜けていましたが、3月21日までに注意書きが加えられました。
この件は、「国産LLM」という言葉に、決まった定義がないことをはっきりさせました。日本企業の主要なモデル10本のうち、6本がDeepSeekまたはQwenをもとにした二次開発だ、という指摘も報じられています。ただし、これは又聞きの数字で、僕らは元の調査を確かめられていません。
ローカルで使うなら
見立てです。
- 土台まで国産に近いものを選ぶなら、LLM-jp-4です。 ゼロから学習したと公表されていて、Apache 2.0で商用にも使えます。日本語の対話の評価(MT-Bench JA)は7.82で、GPT-4oの7.29を上回った、と紹介されています。ただし、これは比較記事に載っていた数字です。
- 32GBのMac miniに載るかは、まだ確かめていません。 32B(動く部分は3.8B)のモデルなので、4ビットに圧縮した版があれば、載る見込みです。公開されている形式と大きさを、確認してから書きます。
- PLaMo 3は、いまのところ素材に近い位置づけです。 公開されているのは、会話用に調整される前のベース版で、そのままチャットには使えません。
- 道具を使う作業は、別に考えます。 以前の記事で触れたとおり、国産モデルの道具の呼び出しは、ある実測でまだ弱いという結果でした。日本語に強いことと、エージェントに向くことは、別の話です。
気をつけること
- 「手元に置けない」と書いたものは、確認できた範囲の話です。提供形態は変わることがあります。
- 数字の多くは、比較記事や、開発元の自己申告です。独立した検証は、まだ多くありません。
- 土台が海外のモデルでも、それだけで悪いとは言えません。見るべきなのは、土台を明示しているかどうかです。
出典
- 9 Japanese LLMs in April 2026 compared(lilting.ch)
- pfnet/plamo-3-nict-2604-31b-base(Hugging Face)
- Sarashina3とは?5モデル・性能・料金・tsuzumi比較(AI Revolution)
- sbintuitions/sarashina2.2-3b(Hugging Face)
- 国産LLM「tsuzumi 2」提供開始(@IT、2025年10月23日)
- tsuzumi(NTTデータ)
- 楽天 Rakuten AI 3.0 = DeepSeek V3 リブランド炎上のその後(AI Revolution、2026年7月続報)
- Rakuten AI 3.0 正式公開—「DeepSeek発」論争の核心(Innovatopia)
- 国産ローカルLLMを実測【地政学リスクと日本語エージェントの現実】(ai-local-lab)
