3行でいうと

  • クラウドのAIが使えなくなる理由は、地域の制限、規約の変更、価格、提供終了、障害、アカウント停止の6種類。
  • 備えは4段階。まず会話や資料を自分の手元に保存し、次に別のサービスの無料アカウントを作っておく。
  • さらに、手元で動くローカルモデルを1つ入れて動作を確かめておく。止まると困る仕事だけ、ローカルでもできる形にする。

クラウドのAIは、毎日使っていると「あって当たり前」に感じます。けれど、使えなくなる理由は、実はいくつかの種類に分かれます。種類が分かれば、備えも種類ごとに考えられます。

ほとんどのサービスは、今日も普通に動いています。ここでは「起こりうること」を、公式のページなどで確認できた範囲だけで並べます。確認日は2026年10月6日です。

使えなくなる理由は6種類

先に表にまとめます。実例は、すべて僕らが実際に読んだページに書かれていたものです。

種類 実例(出典で確認できたもの) 起きる範囲
①地域・国による提供制限 OpenAIのAPIは、対応国の一覧にない地域からの利用で、アカウントが止まりうると書かれている 地域ごと
②利用規約・所有者に関する制限の変更 Anthropicが、中国など対象地域の企業が過半を持つ会社への提供を制限した 該当する会社
③価格・課金の変更 Googleのリリースノートに、新しい課金の開始日が載っている 利用者全体
④モデル・APIの提供終了 OpenAIのSora 2とVideos APIの終了日が、公式の廃止予定ページにある そのモデル・機能を使う人
⑤障害・混雑 Claudeで、複数のモデルとサービスに影響した障害の記録がある 一時的、全体
⑥アカウント停止 OpenAIの利用規約に、停止や削除の条件が書かれている 個人のアカウント

以下、1つずつ見ていきます。

①地域・国による提供制限

OpenAIのAPIには、対応している国と地域の一覧があります。公式ページには、一覧にない地域でサービスを使ったり、使えるようにしたりすると、アカウントが止められたり停止されたりする可能性がある、と書かれています。日本は一覧にあり、中国は一覧にありませんでした。

実際の運用の例として、開発者向けのフォーラムに、ある開発者の報告があります。OpenAIから「対応外の地域からの通信がある」というメールが届き、2024年7月9日が期限として示されたそうです。原因は、Cloudflare Workersという仕組みの通信の一部が、中国・香港・マカオのデータセンターを経由していたことでした。つまり、本人が中国から使っていなくても、通信の経路で引っかかることがあります。

これは1人の開発者の書き込みで、OpenAI自身の説明ではありません。公式の一覧が「対応国の外では止まりうる」と書いていることは、確かめられました。日本から普通に使う分には、直接の影響は小さいはずです。

②利用規約・所有者に関する制限の変更

2025年9月4日、Anthropicは「対応していない地域」への販売制限を強める、と発表しました。内容は、対応していない地域の企業が、直接または間接に過半(50%超)を持つ会社には、サービスを提供しない、というものです。

Anthropicが示した理由は、中国のような地域の企業には、データの提出などを求める法的な義務があり、安全保障上のリスクになりうる、というものでした。これは同社の説明で、方針の是非はここでは論じません。

ここで大事なのは、制限の対象が「どの国から使うか」ではなく「会社の持ち主が誰か」にもなりうる、という点です。自分の使い方は何も変わっていないのに、会社の資本構成が変わっただけで、条件が変わりえます。個人で使う分には関係が薄いですが、仕事で使うなら、出資関係を一度見ておく価値はあります。

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③価格・課金の変更

価格は、上がることも下がることもあります。ここで確認できた例は、GoogleのGemini APIのリリースノートです。「Gemini 3での、Google検索を使った裏付け機能の課金を、2026年1月5日に始める」と載っています。それまで課金されなかった部分に、課金が始まった例です。

OpenAIの規約には、重要な変更は少なくとも30日前に知らせる、と書かれていました。ただ、告知があっても費用が増えることは変わりません。「止まる」のではなく「続けにくくなる」タイプです。

④モデル・APIの提供終了

いちばん、予定が見えやすい種類です。

OpenAIの廃止予定のページには、Sora 2と、動画を作るVideos APIが、2026年9月24日に終了すると載っています。対象は、sora-2、sora-2-proと、日付つきの各版です。ページには、おすすめの代わりのモデルは載っていませんでした。2026年9月に報じられた件は、これにあたります。日付はすでに過ぎていますが、終了後の実際の状態は、この記事では確認していません。

同じページには、ほかにも、Assistants API(2026年8月26日)や、文字起こしのwhisper-1(2027年2月26日)などの終了予定があります。

通知の期間も書かれています。一般提供のモデルは、少なくとも6か月前。特別な版は3か月前。試験的な版は、2週間前ということもある、とのことです。

Anthropicにも、廃止予定の一覧があります。公開されたモデルは、終了の少なくとも60日前に知らせると書かれています。たとえばclaude-3-opus-20240229は、2025年6月30日に廃止予定となり、2026年1月5日に終了しました。同社は、モデルの重みを長く保存する、という方針も示しています。将来また公開したい、という希望も書かれていますが、利用者が使えると約束するものではありません。

Googleでは、Geminiの変更履歴に、Gemini 2.0 Flashの2026年6月1日の終了が載っています。2026年9月18日の更新では、Gemini 2.5の利用が、過去に使ったことのある利用者に限られました。

モデルは入れ替わるもので、同じ名前で同じ答えが返る状態が、ずっと続くとは限りません。

⑤障害・混雑

どのサービスでも、一時的な止まりはあります。確認できた例を1つ挙げます。Claudeの状況ページにある、2026年3月下旬の記録です。Claude Opus 4.6とSonnet 4.6、そしてclaude.ai、API、Claude Codeなど、複数のサービスで、エラーが増えました。同社の説明では、社内のネットワーク性能の低下で、部品同士の通信が乱れたことが原因で、影響を受けた処理を正常な環境へ移して解消した、とのことです。

所要時間は、読んだページの数字を整理しきれなかったので、書きません。障害は他社でも起きる、一時的な種類です。

⑥アカウント停止

OpenAIの利用規約には、規約違反や利用ポリシー違反、本人や他者へのリスク、法的な要件を満たさない場合に、アカウントを停止または削除することがある、と書かれています。停止には、サポートを通じた異議申し立ての道があるとのことです。

サービスそのものを終了する場合は、事前に通知し、前払いで未使用の分は返金する、とも書かれていました。

止まったときに困るのは、アカウントの中にある自分の会話や資料です。次の節で、そこから備えます。

備えは4段階

6種類は原因が違いますが、備えは重なります。難しいものから順ではなく、手間が小さく効果の広いものから並べます。

段階1:データを、自分の手元にも置く

最初にすべきことは、AIそのものではなく、自分のデータです。

  • ChatGPT:設定のデータ管理から「エクスポート」を選びます。履歴などがZIPで届きます。届くまでに最大7日かかることがあり、ダウンロードのリンクは、受け取ってから24時間で切れます。無料、Plus、Proなどの個人向けで使えます。Business、Enterpriseなどでは使えません。
  • Claude:設定のプライバシーから「データをエクスポート」を選びます。会話などのデータが、メールのリンクで届きます。リンクは24時間で切れます。ウェブ版とデスクトップ版で使えます。モバイルアプリからはできません。別のアカウントへの移し替えは、今のところ対応していないとのことです。

ZIPを手元に置くだけで、保険になります。加えて、大事な資料や、繰り返し使う指示文(プロンプト)は、普通のテキストファイルで自分の管理する場所に置いておくと、乗り換えが楽になります。

段階2:複数のサービスを使えるようにしておく

1つのサービスだけに頼ると、①から⑥のどれが起きても、全部止まります。普段使いは1つでかまいません。ただ、別のサービスのアカウントを、使える状態にしておくと、止まったときに切り替えられます。

ポイントは2つです。

  • 無料枠でも、アカウントは作っておく。困ってから登録すると時間がかかります。
  • 開発で使うなら、モデル名をコードのあちこちに書かず、設定の1か所に集める。④のモデル終了のときの変更が小さくなります。

段階3:手元で動くローカルモデルを1つ入れておく

ここまでは、クラウドの中での備えです。ローカルモデルは、サービスに関係なく、自分のパソコンの中で動きます。回線が切れても、規約が変わっても、モデルが終了しても、止まりません。入れた時点のものが、そのまま残ります。

前の記事で書いたとおり、メモリ32GBのMacでも、gpt-oss-20bや、Qwen3.8-27Bの4ビット版が、実用の範囲で動く、という出典があります。選び方は早見表の記事に、最初の1時間の手順はLM Studioの記事に、Qwenの種類は地図の記事にまとめました。ここでは繰り返しません。

大事なのは、「最高のモデルを入れる」ではなく「1つ入れて、動くと確認しておく」ことです。使えなくなってから初めて入れようとすると、ダウンロードの時間も、設定も、一度に降りかかります。普段は使わなくても、入れて、1回質問して、動くところまで確かめておく。それだけで、備えの大部分は済みます。

段階4:何をローカルに任せ、何をクラウドに残すか

ローカルモデルは、クラウドの最上位のモデルと、同じ品質ではありません。全部を手元に移す必要はありません。線引きの考え方を、表にします。ここは見立てです。

仕事の種類 向いている場所 理由
他人に見せたくない文書の要約、下書き ローカル 外に出ないから。規約や地域の変更に左右されない
定型の文章整理、言い換え、翻訳の下書き ローカル 小さいモデルでも足りることが多い
難しい推論、長い資料の深い分析、新しい情報が必要な調べもの クラウド 最上位のモデルと、検索などの機能が使える
画像・動画の生成、大規模なコード作業 クラウド 家庭のパソコンの力では足りないことが多い

「止まっても困らない仕事」はクラウドに残して構いません。逆に「止まると本当に困る仕事」だけを、ローカルでもできる形にしておく。これが、いちばん手間の小さい線引きです。

見立てです。備えの優先順位

ここからは、僕らの意見です。出典で確かめた事実ではなく、読んだ内容から考えた順番です。

1. データの手元保存を、最優先にする。 費用がかからず、短時間で済み、①から⑥のすべてに効きます。特に、アカウント停止(⑥)は、起きたときの被害が、いちばん取り返しにくい種類です。ただし、エクスポートのリンクは24時間で切れ、届くまでに数日かかることもあるので、「困ってから」では間に合いません。

2. 次に、ローカルモデルを1つ入れる。 手間はかかりますが、一度入れれば、6種類のどれにも影響されません。ただし、クラウドの最上位と同じ品質は期待しないでください。「最低限の仕事が続けられる」ための保険です。

3. 複数のサービスは、無料のアカウントを作る程度から。 本格的に使い分ける必要はありません。いざというときに、切り替えられる状態であれば足ります。

4. 線引きは、最後でよい。 使いながら、止まると困る仕事を見つけて、少しずつ移せば足ります。

個人で使う人に、いちばん起きやすいのは、おそらく④(モデルの入れ替わり)と⑤(一時的な障害)です。①②⑥は、起きる人は少なくても、起きたときの影響が大きい種類です。これは僕らの印象で、頻度を数えた数字ではありません。

気をつけること

  • 実例は、各社の公式ページと、開発者フォーラムの書き込みの範囲です。各社の判断の良し悪しを、評価するものではありません。
  • 廃止の日付や規約は、変わります。実際に使う前に、最新の公式ページで確かめてください。
  • ローカルモデルは、この記事のために、新しく試したものではありません。前の記事の整理にもとづきます。

出典

更新履歴

  • 2026年10月25日 書き方を直しました。
    • 前:運営者が使っていないと読める書き方 → いま:「この記事は、実際に使って確かめた記録ではありません」。公式の資料を読んでまとめた記事で、使い心地は書いていない、という意味に直した