3行でいうと

  • MT-Bench論文では、GPT-4の判定と人間の判定が80%以上一致し、人間どうしの一致と同じ水準でした。
  • 偏りは4つ報告されています。順序(位置)、長さ(冗長性)、自分びいき、数学・推論での採点ミスです。
  • 対策は、順序を入れ替えて2回判定する、正解例を渡す、先に理由を書かせる、長さを補正する、などです。
  • 最後は、人間が付けた少数の正解と、判定の一致率を測って確かめます。

この記事は、実際に使って確かめた記録ではありません。この記事は公式の文書や論文を読んでまとめたものです。

先に結論

前提:判定の3つの形

OpenAIの評価の文書は、AIによる判定を3つに分けています。

文書は、信頼性を上げるにはペアで比べる、または合否で判定するのがよい、と書いています。

用語を整理します。

人間とどれくらい合うか

MT-Bench論文の数字です。人間の専門家が付けた判定と、GPT-4の判定を比べています。

比べた組み合わせ 一致率(引き分けを除いた場合) 偶然の一致の目安
GPT-4と人間 85%(1ターン目) 50%
人間どうし 81%(同じ条件) 50%

引き分けや、順序を入れ替えて結果が変わった票も含める条件では、GPT-4と人間の一致は66%、人間どうしは63%でした。このときの偶然の目安は33%です。論文の抄録は「80%以上で、人間どうしと同じ水準」とまとめています。論文は、モデルの性能差が大きいペアほど、一致率が70%から100%近くに上がる、とも書いています。つまり、差が微妙な比較ほど、AIも人間も判断が割れます。

報告されている4つの偏り

偏りの数字と対策の一覧

MT-Bench論文と関連論文の内容を表にしました。判定役のモデルは、当時のものです。

偏り 起きること 論文の数字 対策
位置(順序) 最初に見せた答えを選びやすい 2つの答えの順序を入れ替えて、判定が同じ結果になった割合(一貫性)は、GPT-4で65.0%、Claude-v1で23.8% 順序を入れ替えて2回判定し、両方で勝ったときだけ勝ちとする
冗長性(長さ) 長い答えを選びやすい 内容を増やさずに言い換えで長くした答え(「繰り返しリスト」)に騙された割合は、Claude-v1とGPT-3.5が91.3%、GPT-4が8.7%(23件) 長さを補正する、または長さの差を記録して分析する
自分びいき 自分が書いた答えを高く採点しやすい GPT-4は自分の勝率が10ポイント高く、Claude-v1は25ポイント高い。ただし論文は「限られたデータで断定できない」と述べている 判定役を、答えを作ったモデルと別にする
数学・推論の採点ミス 答えに引きずられ、正誤を間違える 10問の数学で、判定の失敗が既定の指示では14/20、考えさせて採点では6/20、正解例を渡すと3/20 先に自分で解かせる、さらに正解例を渡す

関連する論文の数字です。

  • 「Large Language Models are not Fair Evaluators」(arXiv 2305.17926)は、答えの順序を変えるだけで評価が操作でき、ChatGPTを判定役にするとVicuna-13BがChatGPTに80問中66問で勝てた、と報告しています。対策として、判定の根拠を複数書かせる、順序を変えた結果を集計する、判断が割れる例だけ人間に回す、の3つを提案しています。
  • 「Length-Controlled AlpacaEval」(arXiv 2404.04475)は、長さの影響を回帰分析で取り除く方法を提案し、人間の投票による順位表(Chatbot Arena)との相関(Spearman)が0.94から0.98に上がった、と報告しています。
  • 「LLM Evaluators Recognize and Favor Their Own Generations」(arXiv 2404.13076)は、判定役のAIが自分の出力を見分ける力が強いほど、自分びいきも強くなる、という相関を報告しています。GPT-4やLlama 2が、何もしなくても自分の出力をある程度見分けられる、とも述べています。

MT-Bench論文は、順序入れ替えの対策について、判定を2回呼ぶので費用が増えることにも触れています。また、見本の判定を数件付けて判定させる方法(few-shot)で、GPT-4の一貫性は65.0%から77.5%に上がりましたが、プロンプトが長くなりAPIの費用が約4倍になった、と書いています。一貫性が高いことが、正確さを意味するわけではない、とも注意しています。

対策を手順にする(見立てです)

見立てです。公式の文書と論文の勧めを、実際の手順に直すと、次のようになると思います。

  1. 答えの形を決める。 OpenAIとAnthropicの文書は、判定の出力を「correct / incorrect」や1〜5の数字のように決まった形にするよう勧めています。自由な感想では集計できません。
  2. 基準を具体的に書く。 Anthropicの文書の例は「最初の文に会社名を入れていなければ不正解」のような、確かめられる基準です。1つの用途に複数の基準表が要ることもある、とも書かれています。
  3. 判定の前に理由を書かせる。 AnthropicとOpenAIの文書は、理由づけ(chain-of-thought)を判定の前に置くと成績が上がると書いています。G-Eval論文(arXiv 2303.16634)も、理由づけと「書式に沿って埋める」方式を組み合わせた枠組みです。この論文では、要約の評価で人間との相関(Spearman)が0.514でした。
  4. ペア比較は、順序を入れ替えて2回。 両方で同じ結論のときだけ採用し、割れたら引き分けにします(MT-Bench論文の保守的な方法)。
  5. 答えの長さを記録する。 点数が長さと連動していないかを、後で確かめられます。
  6. 判定役は、答えを作ったモデルと別にする。 OpenAIの文書は、まず強いモデルで試し、人間の評価との一致を確かめてから、費用や速度の最適化に進むよう勧めています。
  7. 正解例があれば渡す。 特に数学や論理は、論文でもっとも効果が大きかった対策です。
  8. 人間の正解を30〜50件付けて、一致率を測る。 判定の設定を変えるたびに測り直します。

一致率の読み方(僕らの計算です)

僕らの計算です。人間が付けた正解40件に対して、判定役のAIが34件で同じ結論を出したとします。一致率は34÷40 = 85%です。ただし、40件の結果には揺れがあります。標準誤差は√(0.85×0.15÷40) ≒ 0.056、つまり約5.6ポイントです。標準誤差の2倍の幅で見ると、「85%」は約74%〜96%のどこかにある、と読むのが妥当です。

また、一致率には「偶然の目安」があります。MT-Bench論文でも、引き分けを除いた2択なら50%、引き分けを含む3択なら33%が偶然の一致です。「70%一致」は、2択なら偶然より20ポイント上というだけです。単に「高い」と言わず、目安と並べて読んでください。

よくあるつまずき

気をつけること

出典

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