3行でいうと

  • 汚染は、言い回しを変えた問題でも起きる。単純な文字列の照合では防ぎきれない
  • 影響の大きさは、論文によって「ほとんどない」から「大きい」まで分かれる。モデルとテストによる
  • 対策は、新しい問題で測る、答えを非公開にする、別の問題で測り直す、の3系統

この記事は、実際に使って確かめた記録ではありません。この記事は公式の文書や論文を読んでまとめたものです。

先に結論

前提:汚染とは何か

汚染の例:研究で確かめられたこと

研究 何をしたか 分かったこと(論文の記述)
GPT-3の論文(2020年) 事前学習データとの13-gram(13語の連続)の重なりで、汚染の疑いのある例を見つけた 汚染は多く起きうるが、影響は「恐れたほど大きくないかもしれない」。一方、ろ過に不具合があり、検出された重なりの一部しか除けなかった。再学習は費用の面でできなかった、と書かれている
GPT-4の技術報告 評価問題から50文字の断片を3つ選び、学習データと照合 重なった例を除いて再評価したところ、報告した結果への影響は「非常に小さい」とある。照合は、答えの選択肢を使わず、偽陰性(見逃し)も偽陽性(誤検出)も起こりうる、と書かれている
言い換えの研究(2023年) 問題を言い換えたり翻訳したりした版を学習に混ぜた 13Bのモデルが、MMLU、GSM-8k、HumanEvalでGPT-4に並ぶ成績になりえる。単純な文字列の照合では防げない。HumanEvalの約8〜18%が、公開の学習データ(RedPajama-Data-1T、StarCoder-Data)と重なる。GPT-3.5/4が作った合成データにも汚染が見つかった
GSM1k(2024年) 小学生向けの算数テストGSM8kと同じ難しさの新問題1,205問を、人手で作った 最も悪いモデルで、GSM8kより最大8%低い点数。一部のモデル群で系統的な過学習が見られるが、最先端のモデルの多くでは過学習の兆候は小さい
MMLUの汚染の調査(2026年のプレプリント) 6つのモデルと、MMLUの513問で、3種類の実験をした 汚染率は全体で13.8%、STEMで18.1%。言い換えた問題では、点数が平均7.0ポイント下がった

「プレプリント」は、査読(専門家の確認)を受ける前の論文です。最後の研究は小さな標本(科目ごとに9問など)で、著者自身が、検出は下限の見積りで、行動の兆候は記憶の証明ではない、と述べています。結果は参考として読んでください。

OpenAIによるSWE-bench Verifiedの打ち切り(2026年2月23日)

OpenAIは、コード修正のテストSWE-bench Verifiedの点数を報告するのをやめた、と発表しました。

同じ発表の中で、監査した138問のうち59.4%でテストの作りや問題文に問題があった、とも述べられています。これは汚染とは別の問題(テストの質)です。

見つける方法と、その限界

見立てです。公式資料に出てきた方法を、僕らが3つにまとめました。

  1. 文字列の重なりを調べる(GPT-3の13-gram、GPT-4の50文字の断片):単純で手軽ですが、言い換えを見逃します。言い換えの研究が、この弱点を示しています。
  2. 別の新しい問題と比べる(GSM1k):同じ難しさの新問題で点数が下がれば、過学習の疑いです。ただし、新問題は作るのに手間がかかります。
  3. モデルの振る舞いを調べる:出力の分布(答えの出し方の偏り)から汚染を見つける方法(CDD)が提案されています。論文によると、他の検出方法より、正解率・F1・AUCの平均で21.8〜30.2%の相対的な改善があり、汚染の影響を最大66.9%減らす補正(TED)も示されています。これは論文自身の評価用データでの結果です。
各手法の細かい条件

GPT-4の技術報告の照合方法:評価問題とその学習データから、空白と記号を除き、文字と数字だけにします。各問題から、ランダムに50文字の断片を3つ選び(50文字未満なら全体)、学習データの文章のどれかに現れたら「汚染」とみなします。照合には、問題文や文脈だけを使い、答えの選択肢は使いません。これにより、見逃しも誤検出も起こりえます。汚染と判定した問題を外して再評価した結果が、報告された点数への影響は非常に小さかった、と記されています。RLHF(人の評価で追加の調整をする段階)のデータは、事前学習のデータよりずっと小さく、特定の問題が入っている可能性は低いが、確認はしていない、とも書かれています。

GPT-3の論文:疑いのある例を除いた「きれいな」部分の点数が、全体の点数と近ければ、汚染の影響は大きくない、という解釈が示されています。きれいな部分が低ければ、汚染が点数を押し上げた可能性があります。論文は、LAMBADAではデータの一部が学習データに現れたが影響は小さいと見られ、WinogradとPIQAでも汚染が見つかり、PIQAには注記が付けられた、と書いています。

言い換えの研究のツール:LLM Decontaminatorは、言い換えられた重なりを、AIを使って見つける方法です。公開されています。著者は、公開の試験を使うなら、より強い除去を行い、新しい使い捨ての試験を作ることを勧めています。

MMLUの汚染の調査(2026年のプレプリント):ウェブ検索による文字列の検出(513問)、言い換えと間接的な言い換えの問題(約100問)、行動を調べる探り(TS-Guessing、513問)の3つ。著者は、検出の基準は保守的で、検索の索引は学習データそのものではないため、汚染の見積りは下限と考えるべきだ、と述べています。論文の表の間に平均値の食い違いがある箇所があり、数字の扱いに注意が必要です。

対策:問題を新しくする、隠す、測り直す

方針 例 公式資料の記述
新しい問題で測る LiveCodeBench 問題に公開日を付け、モデルの学習データの期限より後の問題だけで測れる。LeetCode、AtCoder、CodeForcesの新しい競技から集める
新しい問題で測る LiveBench 最近の数学の競技、arXivの論文、ニュースなどから、毎月問題を追加・更新。答えは、人でもAIでもなく、客観的な正解で自動採点。論文の要約では、上位のモデルも正答率は70%未満
一部を非公開にする HLE(Humanity's Last Exam) 問題は公開しつつ、非公開の保留セットで、過剰適応を確かめる
一部を非公開にする SWE-bench Pro 1,865問のうち、保留セット(12リポジトリ)と商用セット(18リポジトリ)は公開せず、「汚染に強い試験台」とされる
答えを工夫して公開する CapBencher(論文の提案) 各問題に、論理的に正しい答えを複数用意し、そのうち1つだけをランダムに載せる。完全な能力でも超えられない上限が生まれ、それを超えるモデルは、漏れや不正の強い兆候になる
学習データに入れない目印 BIG-benchのカナリア文字列 各課題のファイルに目印の文字列を入れ、ウェブから集めた学習データに漏れるのを防ぐ。編集しないこと、とされている

論文(How Can I Publish My LLM Benchmark)の要約は、非公開にして提出させる方法は一般的だが、フィードバックを通じたテストへの過剰適応は残る、とも指摘しています。

点数を読むときの確認項目

見立てです。僕らの整理です。

よくあるつまずき

見立てです。公式資料を読んで、読み違えやすいと思った点を挙げます。

気をつけること

出典

更新履歴