3行でいうと
- 「データの置き場所」には、保存する場所と、AIが処理する場所の2つがあり、別々に決まることがあります。OpenAIの表では、保存を選べる10地域のうち、処理にも対応するのは米国、欧州、UAEの3つだけで、日本を含む残り7地域は保存のみです(2026年10月16日確認)。
- Anthropicの自社APIで選べるのは、推論を米国内に限るかどうか(
usかglobal)だけで、usは標準の1.1倍の料金です。ワークスペースの保存地域も、現在は米国のみです。日本の地域は選べません。 - どの会社も「対象外」を明記しています。OpenAIはアカウントや請求などのシステムデータ、Google Cloudはグローバルのエンドポイント、AzureはDeveloperという種類が、それぞれ地域の保証の外です。使う前に、自分の経路がどこに当たるかを確かめる必要があります。
この記事は、実際に使って確かめた記録ではありません。この記事は、公式の文書を読んでまとめたもので、実際に使って確かめた記録ではありません。情報は2026年10月16日に確認しました。地域や料金は変わることがあります。法律の判断(個人情報保護法の外国への提供など)は読んでおらず、助言ではありません。
先に結論
- 「国内で処理したい」と「国内に保存したい」は、別の要求です。公式の表を見ると、保存は選べても処理は選べない地域があります。要求がどちらなのかを先に決めないと、「指定した」のに期待と違った、ということになりえます。
- 4つの経路(OpenAI直、Anthropic直、Google Cloud、Azure)は、選べる粒度が大きく違います。OpenAIは地域ごとのドメインを用意し、Google Cloudは「多地域」「地点」「グローバル」の3種類のエンドポイントを使い分け、Azureは配備の種類(Global、Data Zone、Regional)で選び、Anthropicの自社APIは
usかglobalの二択です。 - 公式がうたう「地域の指定」に含まれないものが、どの文書にも書かれています。ここを読み飛ばすのがいちばん危ない、と僕らは考えます。これは見立てです。
前提:何を「置き場所」と呼ぶのか
公式の文書を読むと、場所の話は少なくとも3つに分かれます。
- 保存(at rest):保存されたデータの場所です。
- 処理(in use):AIが答えを作る計算(推論)が行われる場所です。入力した文章は、処理のときには計算機の中に読み込まれます。
- その他の通り道:通信の暗号を解く場所、アカウントや請求のデータ、ログなど。
この言葉の整理は、各社の文書の使い方を僕らがまとめたものです。以下では、データレジデンシー(データの置き場所を地域で指定する機能)という言葉を、この広い意味で使います。
もう1つの前提は、「どの地域が選べるか」と「その地域でどのモデルが使えるか」は別の話、ということです。この記事は前者を中心に書きます。
4つの経路の比較
| OpenAI(自社API) | Anthropic(自社API) | Google Cloud | Microsoft Azure | |
|---|---|---|---|---|
| 選ぶ単位 | プロジェクトの地域、またはリクエストのドメイン接頭辞 | リクエストのinference_geo、または既定値 |
エンドポイントの種類(多地域、地点、グローバル) | 配備の種類(Global、Data Zone、Standardなど) |
| 保存の地域 | 10の地域から選べる(日本を含む) | ワークスペースの地域。現在はusのみ |
顧客が選んだ場所に留まる | 指定のAzureジオグラフィに留まる |
| 処理の地域 | 米国、欧州、UAE(地域とモデルによる) | usかglobal |
多地域は管轄内、地点はその地域が属する範囲、グローバルは保証なし | Globalは任意、Data Zoneはゾーン内、Standardはジオグラフィ内 |
| 追加の条件・料金 | 米国以外はMAMまたはZDRが必要。対象モデルに10%の上乗せ | usは標準料金の1.1倍。対象はClaude 4.6以降 |
(料金の記載は読んだ範囲になし) | (料金の記載は読んだ範囲になし) |
OpenAI:地域ごとのドメインと、「保存だけ」の地域
OpenAIのData controlsの文書によると、データレジデンシーはプロジェクトの設定です。利用資格には営業窓口への連絡が必要、と書かれています。プロジェクトを作るときに地域を選び、地域のあるプロジェクトでは、eu.api.openai.comのように、地域の接頭辞つきのドメインで呼び出します。
表に並んでいるのは、米国、欧州(EEA+スイス)、UAE、オーストラリア、カナダ、日本、インド、シンガポール、韓国、英国の10地域です。このうち、保存と処理の両方に対応しているのは米国、欧州、UAEの3つです。日本を含む残りの7地域は、保存のみで、処理は対象外と読めます。文書は「地域での保存に対応していることは、地域での処理に対応していることを意味しない」と、はっきり書いています。処理の地域がない地域では、顧客のコンテンツが地域の外で処理され、一時的に保存されることがある、とも書かれています。
また、米国以外の地域は、MAM(Modified Abuse Monitoring)かZDR(Zero Data Retention)が必要、と表にあります。ZDRは、乱用監視のログから顧客コンテンツを除くものです。どちらも事前の承認が必要です。
OpenAIの地域一覧(2026年10月16日に確認)
公式の表の記載を、そのまま書き写しています。
| 地域 | ドメイン | 保存 | 処理 | 条件 |
|---|---|---|---|---|
| 米国 | us.api.openai.com |
あり | あり | (条件の記載は確認できていません) |
| 欧州(EEA+スイス) | eu.api.openai.com |
あり | あり | MAMかZDRが必要 |
| UAE | ae.api.openai.com |
あり | あり | MAMかZDRが必要。追加の承認が必要 |
| オーストラリア | au.api.openai.com |
あり | なし | MAMかZDRが必要 |
| カナダ | ca.api.openai.com |
あり | なし | 同上 |
| 日本 | jp.api.openai.com |
あり | なし | 同上 |
| インド | in.api.openai.com |
あり | なし | 同上 |
| シンガポール | sg.api.openai.com |
あり | なし | 同上 |
| 韓国 | kr.api.openai.com |
あり | なし | 同上 |
| 英国 | gb.api.openai.com |
あり | なし | 同上 |
そのほか、同じ文書に次の記載がありました。
- 料金:データレジデンシーのエンドポイントには、10%の上乗せがあります。2026年3月5日以降に出た、対象のモデルに適用される、と書かれています。
- 通信:米国と欧州では、暗号の終端も地域内で行う(Cloudflare Regional Servicesを使う)と書かれています。
- 対象のサービス:
/v1/responses、/v1/chat/completions、/v1/batches、/v1/embeddings、/v1/filesなど、26のサービスが並びます。 - リクエストごとの指定:グローバル設定のプロジェクトのキーでも、接頭辞つきのドメインを使えば、リクエスト単位で処理の地域を選べる、とあります。
- 保持:乱用監視のログは、既定で最大30日です。ZDRにしても、
/v1/conversations、/v1/files、/v1/batchesは、状態を保存するため、ZDRの対象外と書かれています。
Anthropic:推論の場所は二択、保存は米国のみ
Anthropicの文書は、2つの設定を分けて説明しています。
- 推論の地域(
inference_geo):モデルの計算をどこで行うかです。値はglobal(既定)とus(米国内の設備だけ)の2つしかありません。リクエストごとか、ワークスペースの既定で指定します。応答のusage.inference_geoに、実際に動いた場所が入ります。 - ワークスペースの地域:保存データの場所と、画像の変換やコードの実行のような、エンドポイント側の処理の場所です。現在選べるのは
usだけで、ワークスペースを作るときに決まり、あとから変えられません。
usを指定すると、料金が標準の1.1倍になります。入力、出力、キャッシュの書き込み・読み取りのすべてに適用される、と書かれています。対象はClaude 4.6以降のモデルで、それより前のモデルでinference_geoを付けると、400エラーになります。レート制限は、全地域で共通です。
Amazon BedrockとGoogle Cloud上のClaudeには、このinference_geoは適用されません。地域は、エンドポイントのURLや推論プロファイルで決める、と書かれています。Microsoft Foundryでは、US Data Zone Standardという配備の種類を使います。つまり、同じClaudeでも、どの経路で呼ぶかで、地域の決め方が変わります。
読んだ範囲では、Anthropicの自社APIに、日本や欧州を指定する選択肢はありませんでした。
Google Cloud:3種類のエンドポイントで、保証の強さが変わる
Google Cloudのデータレジデンシーの文書(Vertex AIの旧URLからの転送先。製品名の表記が変わっています)は、エンドポイントを3種類に分けています。
- 多地域(US、EU)のエンドポイント:処理がその管轄の中に留まります。EUは「EU加盟国内」が対象で、英国とスイスは含まれない、とはっきり書かれています。
- 地点を指定するエンドポイント(
us-central1、europe-west1など):その地域が属する多地域や国の中で処理されます。ヨーロッパでは、国内で処理されるかどうかはモデルによって違い、フランスやドイツで処理されるものと、EU多地域の中で処理されるものがある、とあります。 - グローバルのエンドポイント:どこで処理されてもよく、「地域の隔離やデータレジデンシーの保証は提供しない」と書かれています。遅延を減らすため、利用者の近くで通信を受ける設計です。
保存されたデータは、顧客が選んだ場所に留まる、と書かれています。対応表は、僕らが読んだ取得結果ではチェックマークが取れず、どのモデルがどの地点に対応するかは確認できていません。日本での処理に対応するモデルがあるかも、確認できていません。
Googleには、AI StudioとGemini API(ai.google.devのページ群)もあります。読んだ「利用できる国・地域」のページは、誰が使えるかの一覧で、データの保存や処理の場所には触れていませんでした。Gemini API側で処理地域を指定できるかは、確認できていません。
Azure:配備の種類で決まる
MicrosoftのFoundry Modelsの「配備の種類」の文書によると、保存データは、どの種類でも、指定したAzureのジオグラフィに留まります。違いは処理の場所です。
- Global(Global Standardなど):どのAzureリージョンでも処理されうる。
- Data Zone:米国、EU、アジア太平洋(APAC)のうち、決まったデータゾーンの中で処理される。
- Standard、Regional Provisioned:顧客が指定したジオグラフィの中で処理される。運用上、そのジオグラフィ内のリージョンの間で移ることがある。
注意点が書かれています。Developerという種類には、データレジデンシーの保証がありません。データゾーンの境界は、Microsoftが事前の通知なしに、リージョンを加えることがある、とあります。EUのゾーンはEU Data Boundaryに従い、ノルウェーやスイスのようなEFTAの国を含むことがあります。さらに、すべてのモデルがすべての種類に対応するわけではありません。地域ベースの種類は、新しいモデルでは最後に提供され、提供日の保証もない、と書かれています。
対象外を読む:「指定した」の範囲
各社の「対象外」の記載を、そろえて並べます。
| 公式が書いている、地域の保証の外 | |
|---|---|
| OpenAI | システムデータ(アカウント、メタデータ、請求、サポート、分析)は、選んだ地域の外で処理・保存されうる。第三者の製品(MCPサーバーなど)は対象外。処理地域のない地域では、顧客コンテンツが地域外で処理・一時保存されうる |
| Anthropic | 推論の地域はusとglobalのみ。保存の地域はusのみ。BedrockやGoogle Cloud上のClaudeには適用されず、それぞれの地域の決め方に従う |
| Google Cloud | グローバルのエンドポイントは、保証なし。IL5やITARのような厳しい基準では、多地域のエンドポイントは技術的な土台で、完全な準拠には顧客側の設計やアクセス管理も要る、と書かれている |
| Azure | Developerは保証なし。Globalは任意のリージョンで処理されうる。データゾーンの範囲は、通知なしに広がりうる |
見立てです。ここから、次の確認が考えられます。
- 自分のアプリが、どのエンドポイント(またはドメイン、配備の種類)を呼んでいるかを、設定ファイルで確かめる。既定の呼び出し先がどこかは、各社の文書で確認してください(僕らは読んでいません)。
- 要求が「保存」か「処理」かを分け、各社の表のどちらの列に当たるかを見る。
- 呼び出しの経路(社内のゲートウェイ、外部のツール、ブラウザーなど)が、別の場所を通っていないかを確かめる。AIのAPIの地域を指定しても、周辺のツールのログや、第三者のツールが別の場所にデータを置くことはありえます。
- 追加の料金と条件(OpenAIの10%とMAM/ZDR、Anthropicの1.1倍)を、計画に入れる。
気をつけること
- この記事では、どの設定も行って確かめていません。内容は公式の文書の記載です。
- OpenAIのページは長く、WebFetchという取得の仕組み(要約を返す)を通して、2回に分けて読みました。モデルごとの細かい対応表は、読み切れていません。実際に使うモデルが、選んだ地域で使えるかは、公式の表で直接確認してください。
- Google Cloudのページは、対応表のチェックマークが取れず、どのモデルがどの場所で使えるかは確認できていません。Gemini API(ai.google.dev)のデータレジデンシーのページは、取得エラーで読めませんでした。ページがあるのかも分かりません。
- Azureの料金や、Amazon BedrockとGoogle Cloud上のClaudeの地域の細かい仕様は、読んでいません。
- 地域や料金、対象のモデルは、変わります。OpenAIの10%の上乗せは「2026年3月5日以降のモデル」とあり、モデルごとの適用は確認していません。
- 個人情報保護法などの国内法令や、契約上の義務を、どの設定で満たせるかは、この記事では扱っていません。法務や専門家に相談してください。この記事は、助言ではありません。
- 「保存と処理を分けて要求を決める」「対象外を一覧にする」などの進め方は、僕らの見立てで、公式の推奨ではありません。
出典
- Data controls in the OpenAI platform(OpenAI API、OpenAI、10月16日確認)
- Data residency(Claude Platform Docs、Anthropic、10月16日確認)
- Data residency(Gemini Enterprise Agent Platform、Google Cloud、10月16日確認)
- Available regions for Gemini API(Google AI for Developers、Google、10月16日確認)
- Deployment types for Microsoft Foundry Models(Microsoft Learn、Microsoft、10月16日確認)
更新履歴
- 2026年10月25日 書き方を直しました。
- 前:運営者が使っていないと読める書き方 → いま:「この記事は、実際に使って確かめた記録ではありません」。公式の資料を読んでまとめた記事で、使い心地は書いていない、という意味に直した
