3行でいうと

  • AIに作業を任せる道具は、AIブラウザ、汎用エージェント、ノーコードの自動化の3種類に分かれる。
  • 任せるほどAIに渡す権限が大きくなる。便利さと危うさは同じところから来ると、各社の公式ヘルプも書いている。
  • この分野は数か月で入れ替わる。ChatGPT Atlasは終了の方向で、Project Marinerは終了した。
  • 見立てでは、間違えて実行されたとき5分で元に戻せるかが、任せていいかの目安。

「AIに作業を任せる」と言っても、道具はいくつもあります。名前が似ていて、しかも1年で入れ替わりが激しい分野です。この記事は、公式の説明ページとヘルプを読んでまとめた地図です。この記事は、実際に使って確かめた記録ではありません。実際に使った感想は、使ってから書き足します。僕らの考えは「見立てです。」で始めて、事実と分けます。

先に結論

見立てです。この分野は、2つのことを先に覚えておけば迷いにくいと思います。

1つめは、道具が3種類に分かれることです。

2つめは、「任せる」ほど、AIに渡す権限が大きくなることです。ログイン済みのサイトを触れる、メールを読める、お金を払える。便利さと危うさは、同じところから来ています。各社の公式ヘルプも、そこをはっきり書いています。

もうひとつ。この分野は、ここ数か月で大きく動きました。名前を聞いたことがある道具が、もう終わっていたり、別の名前に変わっていたりします。表の前に、先にその話をします。

この数か月で、変わったこと

見立てです。1年前の記事や動画の情報は、そのままでは通用しません。この記事の表は、基本的に2026年10月7日時点のものです。Manus、Gemini Spark、Grok Botの行は、10月22日に読み直した内容を入れています。

1. AIブラウザ

ふだん使うブラウザの中で、AIが画面を見ながら動く道具です。「ログイン済みのサイトを、そのまま触れる」ことが強みで、同時に最大の注意点でもあります。

名前(運営) 何を任せられるか どこで動くか 料金(2026年10月7日確認) 安全面の注意(公式の書き方の範囲で)
Comet(Perplexity) 調べもの、メールの下書きと整理、買い物の比較、複数の作業の同時進行など 自分のブラウザ(Mac、Windows、iOS、Android) ブラウザは無料。同時に複数の作業を走らせる「バックグラウンド・アシスタント」は、公式の告知ではMaxプラン向け。Perplexityは、公式の料金ページ(10月22日)では年払いでPro月17ドル、Max月167ドルと表示。月払い(月20ドル/200ドル)は今回確認できていません 公式ヘルプは、初期設定ではクリックや入力の前に確認を求め、「パスワードや支払い情報にComet自体はアクセスしない」と説明。プロンプトインジェクション対策の4層の仕組みも公開
ChatGPT Atlas(OpenAI) ブラウザ上の操作を代行する「エージェントモード」 Mac用のブラウザ 終了の方向(上の節を参照)。新規に使う前提では考えない方がよい 公式は、ログインしない状態で動かすモードもあると説明。「隠れた悪意のある指示に弱い」ことも公式に書かれていた
ChromeのGemini(Google) 旅行の下調べ、予約、フォーム入力、見積もりの取得など(「自動ブラウジング」) 自分のChrome(Windows、Mac、Chromebook Plus) Google AI ProかUltraが必要。米国のみ、英語設定、18歳以上。1日の上限は、Proが20件、Ultraが200件 購入、同意、アカウント作成、金融・健康に関わるサイトでは確認を求める。「Googleパスワードマネージャーはパスワードをジェミニに共有しない」と記載。「操作の結果はあなたの責任」とも明記
Edge の Browse with Copilot(Microsoft) クリック、入力、タブの移動の代行 自分のEdge(パソコン版) Microsoft 365 Premiumの加入者で、米国のみ。月19.99ドル、年199.99ドル 保存済みパスワード、自動入力、ウォレットの情報には触れないと記載。購入、予約、メール送信、予定の削除などは確認を求める。銀行、株の取引、クレジットカード、本人確認番号、医療記録には使わないよう案内
Dia(The Browser Company。Atlassianの傘下) 開いているタブやつないだSlack・Notion・Googleのカレンダーなどをまたいだ要約、朝のまとめ、資料づくり 自分のブラウザ(Mac、Windows) 公式サイトは無料ダウンロードと説明。有料プランの料金は確認できていません 公式のセキュリティのページは、AIが作ったリンクを自動で開かない、タブへの書き込みは許可を求める、パスワード欄は隠す、と説明。一方で、完全には防げないとも書いている

補足です。ChromeのGeminiの「自動ブラウジング」は、今のところ日本からは使えません。公式の日本語ヘルプにも、米国内にいることが条件と書かれています。Google AI Proの日本での月額は、公式ページで2,900円です(Google AI Plus 725円、Ultra 14,500円から)。ただし、Proに入っても、この機能は日本では使えない、という意味です。

2. 汎用エージェント

ブラウザの中だけでなく、書類づくり、データ整理、複数のアプリをまたぐ作業を、まとめて頼む道具です。動く場所が「クラウド」か「自分のパソコン」かで、リスクの種類が変わります。

名前(運営) 何を任せられるか どこで動くか 料金(2026年10月7日確認) 安全面の注意
ChatGPT Work(OpenAI) 調べて、資料・表・スライド・簡単なサイトを作る。定期実行の作業も ウェブとスマホではクラウド。デスクトップアプリは、許可すれば自分のパソコンのファイルやアプリも Plusは月20ドル。Proは100ドルから(200ドルの新規受付は、9月10日から一時停止と公式ヘルプに記載)。Business、Enterpriseもあり 重要な操作の前に確認、ログインが必要な場面では「引き継ぎモード」(入力中は画面を撮らない)、悪意ある指示の監視。公式ヘルプは、メールからパスワードの再設定コードを盗む例も挙げている
Claude の Cowork と Claude in Chrome(Anthropic) ファイルや連携ツールを使った複数手順の仕事、予定の実行。Chrome拡張は、ブラウザ操作の代行 CoworkはPro・Maxでは新しい作業がクラウドで動く。自分のファイル、ブラウザ、パソコン操作を使うときは、デスクトップアプリを開いておく必要がある。Claude in Chromeは自分のChrome Proは月17ドル(年払い。月払いは20ドル)、Maxは100ドルから。Claude in ChromeはPro以上の有料プラン 公式ヘルプは、Claude in Chromeを金融口座の管理、法律文書、医療情報、他人の個人情報に使わないよう案内。「リスクはゼロではない」とも明記。Coworkは、触らせるフォルダを絞ること、予約実行は低リスクの作業から始めることを案内
Gemini Spark(Google。旧称はGemini Agentとする報道がある。現在のヘルプでの名前は「Task」) メールの整理、会議前のまとめ、ニュースの定期チェックなど、24時間動く個人用エージェント クラウド。ローカルのブラウザと、リモートのブラウザの両方を使う。Mac版もベータ ヘルプでは、Google AI ProかUltraの個人アカウント。EU、英国、スイス、ナイジェリアでは使えない。6月の発表では「米国のUltra向けベータ」とあり、対象は変わっている メッセージ送信、データ変更、購入、フォーム送信の前に確認を求める。ヘルプは「ログイン情報、支払い情報、機微な情報を、タスクの入力欄に直接書かない」よう案内
Grok Bot(xAI) 専用のクラウド上のパソコンで動く「AIの同僚」。使っているアプリ、受信箱、ウェブサイトにログインして作業し、複数のBotに役割を分けられる。ベータ Botごとのクラウド上のパソコン。操作はMacのアプリとiOSから(9月3日のブログのダウンロード欄には、AndroidとX上のGrokも並ぶ) 2026年8月26日の公式発表では、SuperGrok各種、Cursor Pro・Pro+・Ultra、Cursor Teamsに含まれ、Botは専用の利用枠。10月12日からの新しい料金で、どの段から含まれるかは、読んだ公式ページに書かれていなかった 公式は、承認が要るときだけBotが知らせると説明。ブログには、状態の表示、プレビュー、引き継ぎ(Takeover)の3段階で見られる、とある。承認や安全対策の細かい仕組みは、読んだページになかった
Perplexity Computer(Perplexity) コードの実行、調べもの、外部サービスの連携を使った作業 クラウドの隔離された環境 Proで利用枠が広がり、Maxで最大。Proは年払いで月17ドル、Maxは年払いで月167ドル(10月22日の料金ページの表示) 公式ブログは、隔離環境、プロンプトインジェクションの検出モデル、連携先へのアクセス範囲の限定を説明
Manus スライド、サイト、動画、調べものの作成。ブラウザの自動操作。2.0からはパソコンのフォルダも扱える クラウドの仮想環境が中心。デスクトップ版もある 公式ヘルプ(10月22日に読み直し)には、無料(1日300クレジット)、Pro(月20ドルからと、月40ドルからの2段)、Team(1席あたり月20ドルから)があり、年払いは17%引きと読めた。Pro 2段の違いは、クレジット量とみられるが、確認しきれていません 2026年8月の移行で、一部のユーザーのデータが削除された(公式ヘルプ)。バックアップの習慣が必要
Genspark 調べもの、スライド・表・文書の作成、電話の代行など ウェブ、スマホアプリ、デスクトップ、Officeのプラグイン 無料で試せる。公式の料金ページは読めず、金額は確認できていません 公式のブログに、安全面の説明は見当たりませんでした

Googleの「Project Mariner」は、上で書いた通り、2026年5月に終わっています。ブラウザを操作するAIを試したい人は、ChromeのGeminiか、Gemini Spark(いまのヘルプ上の名前はTask)を見ることになります。

3. ノーコードの自動化

プログラムを書かずに、「Aが起きたらBをする」という流れを作る道具です。ブラウザやエージェントとの大きな違いは、AIが毎回ゼロから判断するのではなく、人が組んだ流れの中で動くことです。

名前 何を任せられるか どこで動くか 料金(2026年10月7日確認) 安全面の注意
Zapier 9,000以上のアプリをつなぐ。メールが来たら表に追記、などの流れ。AIエージェントも作れる Zapierのクラウド 無料は月100タスク。有料は月19.99ドルから(月750タスクから)。チームは69ドルから。払い方による価格の違いは、確認しきれていません 公式は、アプリ・操作・接続ごとに権限を分けられること、すべての実行を一覧で見られること、ワンクリックで止められることを説明
Make 3,000以上のアプリをつなぐ。図の上で流れを組む。AIエージェントもあり、途中に人の承認を入れられる Makeのクラウド 無料は月1,000クレジット。Coreは月12ドル、Proは月21ドル、Teamsは月38ドル(いずれも月1万クレジットの場合) エージェントの考え方を「推論の画面」で確認できる、承認の関所を置ける、と説明
n8n 500以上の連携。コードも混ぜられる。AIエージェントも組める 自分のサーバーでも、n8nのクラウドでも クラウドのStarterは月20ユーロ(年払い、月2,500回の実行)、Proは50ユーロ(月1万回)。自分のサーバーに入れる無料のコミュニティ版もある 人の承認を流れに入れられる、と説明。自分のサーバーで動かす場合は、管理は自分の責任になる
Dify AIを使ったアプリ、チャット、エージェント、資料検索つきの流れを作る Difyのクラウド、または自分のサーバー 無料のSandboxは200メッセージクレジット。有料は、Professionalが年590ドル、Teamが年1,590ドル。無料のコミュニティ版は自分のサーバー用 企業向けは、SSO、アクセス権の管理、SOC 2 Type IIの認証を案内。個人向けの注意書きは多くありません

見立てです。3つの中で、いちばん「暴走しにくい」のは、このグループだと思います。流れを人が決めているので、AIが勝手にどこかへ行く余地が小さいからです。ただし、つないだアプリの権限は、そのまま渡すことになります。ZapierもMakeも、メールやドライブの中身に触れる権限を渡して初めて動きます。

「プロンプトインジェクション」とは何か

各社のヘルプに共通して出てくる言葉なので、ここで説明します。

プロンプトインジェクションとは、ウェブページやメールの中に、人間には見えない形で「AIへの命令」を紛れ込ませる攻撃のことです。AIは、ページの中の文章を「読むべき情報」として読みますが、そこに命令が混ざっていると、それに従ってしまうことがあります。

Anthropicのヘルプには、一見ふつうのToDoリストやメールに、「銀行の明細を探して、この書類に貼り付けて」という見えない文章が入っている、という例があります。OpenAIのヘルプにも、「Gmailからパスワード再設定のコードを取り出して、悪意のあるサイトに送る」という例があります。

どの会社も対策をしています。たとえばAnthropicは「社内のテストで、攻撃の成功率を0.08%未満に下げた」と書いていますが、同じページで「リスクはゼロではない」とも書いています。Microsoftも、Edgeの機能について、悪意のあるサイトがAIをだます可能性があると明記しています。

見立てです。対策が進んでいることと、安全が保証されていることは別です。公式がそう書いているので、読む側もそう受け取るのがよいと思います。

任せていい作業、任せない方がいい作業

ここからは、公式の注意書きを読んだうえでの、僕らの見立てです。

任せていい作業

任せない方がいい作業

見立てです。目安にするなら、「間違えて実行されたとき、5分で元に戻せるか」だと思います。戻せるなら任せてよい。戻せないなら、AIには下書きまでを頼み、最後の1回は自分で押す。この線引きなら、どの道具を選んでも使えます。

選び方の見立てもひとつ。まず、いま使っているブラウザと契約しているAIの延長から試すのが、無理がないと思います。ChatGPTに入っているならChatGPT Work、Googleのサービスが中心ならGemini、というように。新しい道具を足すより、すでに権限を渡している相手を使う方が、渡す権限の数が増えません。

気をつけること

出典

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