3行でいうと
- Inco AIの「Splash」で、Apple siliconのMacでもQwen3.8-27Bがおよそ2倍の速さで動くとされる。
- 公式の測定はM5 Pro・メモリ48GBで毎秒74トークン。「毎秒144」は別のモデルの数字だった。
- メモリ32GBのM6 Mac miniでも、毎秒25から15トークンで動いた実例がある。
- 会話の長さを大きくしすぎると、読み込みでエラーになる。
家庭のパソコンで動かせるAIが、また一段速くなりました。きっかけは、Inco AIが公開した「Splash(スプラッシュ)」という推論エンジンです。Apple siliconのMacで、Qwen3.8-27Bをおよそ2倍の速さで動かせるとされています。
ただ、ネットでは数字が一人歩きしています。ここでは、公式の資料と、それを確かめた記事をもとに、数字を整理しました。
Splashとは
Splashは、Inco AIが公開したオープンソースの推論エンジンです。クラウドを使わず、自分のMacの中でAIを動かすためのものです。ライセンスはApache-2.0です。
動かせるのは、いまのところQwen3.8-27BとQwen3.6-35B-A3Bの2つです。モデルごとに専用の高速化を入れているのが特徴で、Qwen3.8-27B用のパッケージは約17.4GBです。内訳は、4ビットに圧縮した本体が14.1GiB(約15GB)、高速化用の小さな補助モデルが1.2GB、画像を読むための部品が0.9GBなどです。
数字を正しく読む
公式の測定は、M5 Pro(GPU 16コア、メモリ48GB)で行われたものです。
| 条件 | 速さ | 比較 |
|---|---|---|
| 短い入力で文章を作る | 毎秒74トークン | 次に速いエンジンの約2倍 |
| 32Kトークンの長い入力 | 毎秒54トークン | - |
| 4件を同時に処理 | 合計で毎秒170トークン | 次点の約3.9倍 |
「Mac上でQwen3.8-27Bが毎秒144トークン」という数字も出回りましたが、これは別のモデルの数字でした。毎秒143トークンは、Qwen3.6-35B-A3Bの測定値です。27Bの速さと取り違えて広まった、と指摘されています。
また、32Kの入力での比較では、27BはOllamaの約2.8倍、oMLXの約1.9倍とされています。倍率は、何と比べるかで変わります。数字を見るときは、モデル、パソコン、入力の長さ、比べた相手の4つをそろえて読むのが大事です。
動かすための条件
公式の資料では、条件は次のとおりです。
- Apple siliconのMacで、M3以降のチップ
- メモリは36GB以上(48GB以上を推奨)
- macOS 26.4以降
ただし、これは公式が測定した環境の条件です。メモリ32GBのMacで動かした実例が、すでに出ています(次の節)。
メモリ32GBのM6 Mac miniで動かした例
YouTubeの「ふじもった」さんが、9月26日に、M6 Mac mini(メモリ32GB)で試した動画を公開しています。動画の中の数字を、整理します。
| 条件 | 速さ(毎秒) |
|---|---|
| これまでのMLX(短い入力) | 10〜12トークン |
| これまでのMLX(文脈が長くなったとき) | 6〜7トークン |
| Splash(出だし) | 約25トークン |
| Splash(7万トークンほど溜まった状態) | 約15トークン |
「次に速かったエンジンの約2倍」と話していました。公式がM5 Pro・48GBで出した毎秒74とは機械が違うので、並べて比べるものではありません。32GBのM6 Mac miniでは、毎秒25から15あたり、というのが現実的な目安です。
動画から分かった注意点が、2つあります。
- 会話の長さ(コンテキスト)を大きくしすぎると、読み込みの時にエラーになります。メモリに、記憶の置き場所(KVキャッシュ)が取れなくなるためです。18万トークンなら読み込めたそうです。さらに長い文脈を使うなら、M5 Pro以上の、メモリの大きな機種が必要になる、との説明でした。
- 処理中の消費電力は30〜40W、温度は約88℃でした。
なお、これは動画の自動字幕から読み取った内容です。細かい言い回しや数字は、動画で確かめてください。
動かし方
動かし方は2通りあります。
ひとつ目は、LM Studioを使う方法です。いちばん簡単で、動画でもこの方法でした。
- LM Studioの設定画面を開き、Shift+⌘+Rを押します。
- 「Runtime」の中の「Engines & Frameworks」にある「Splash (Metal)」を、ダウンロードします。
- モデル検索で「Inco AI」と入れ、フォーマットを「Splash」に切り替えます。
- 出てきた「Qwen3.8 27B」のSplash版をダウンロードして、読み込みます。このとき、文脈の長さを大きくしすぎないでください。
ふたつ目は、Splash本体を使う方法です。Homebrewで入れて、サーバーを起動します。
brew install incoai/tap/splash
splash serve --model incoai/Qwen3.8-27B-Splash
サーバーはパソコンの中(127.0.0.1の8000番)で立ち上がります。OpenAIとAnthropicの両方のAPI形式に対応しているので、普段使っているツールをつなげやすい作りです。
Mac以外では
Macではなく、NVIDIAのGPUで動かした例もあります。PC Watchの西川和久さんは、DGX Spark互換機でvLLMを使い、FP8版で毎秒12トークンを出しました。公開は8月18日で、その後、SGLangの最適化で毎秒30トークン近くが報告されたと追記されています。Macの数字とは、機械も条件も違います。
ここから先は、僕らの見立て
事実ではなく、見立てです。
家庭のパソコンで動くAIは、「動くか、動かないか」の時代から、「どれだけ快適に動くか」の時代に入りました。公式は36GBを条件にしていますが、32GBのM6 Mac miniでも、文脈の長さを控えめにすれば、毎秒15〜25トークンで動いた例があります。32GBは、ぎりぎり使える線、と見ています。
数字は、公式の測定も動画の実例も、他人の環境のものです。Akira自身の機械での記録は、確かめられ次第、このページに追記します。
