3行でいうと

  • LM Studio、Ollama、llama.cpp、MLX、Splashは、同じ高さに並ぶ道具ではない。
  • 推論エンジンはAIの文章を作る部分で、LM Studioは画面で操作するアプリ。
  • モデルのファイルの形式(GGUF、MLX、Splash専用)も、道具ごとに読めるものが違う。
  • 見立てでは、初心者はLM Studio、コマンドに慣れた人はOllamaが楽。

家庭のMacでAIを動かそうとすると、LM Studio、Ollama、llama.cpp、MLX、Splashと、似た名前の道具が次々に出てきます。実はこれらは、同じ高さに並んでいません。層に分けて見ると、迷わなくなります。

まず、層で考える

YouTube動画「M6 Mac mini 32GBで27Bが高速化」(ふじもった)は、3つの層で説明していました。動画によれば、いちばん下が「Apple Silicon(土台)」、その上が「推論エンジン(llama.cpp、MLX、Splash)」、いちばん上が「LM Studio(画面で操作するアプリ)」です。LM Studioは、内部でllama.cppを使いやすくする道具だ、という話でした。これは動画の自動字幕から読み取った内容なので、細かい言い回しは動画で確かめてください。

推論エンジンとは、AIのモデル(巨大な数字のかたまり)を読み込んで、実際に文章を作る部分のことです。車でいえばエンジンです。LM Studioのようなアプリは、運転席と計器にあたります。

ここに、もうひとつ軸があります。モデルのファイルの形式です。エンジンごとに、読める形式が違います。この記事は、層と形式の2つを分けて整理します。

モデルの形式:GGUFとMLX

GGUFは、モデルを1つのファイルにまとめた形式です。Hugging Faceの資料によれば、数字の本体(テンソル)に加えて、標準化された付属情報(メタデータ)も1つのファイルに入っています。作ったのは、llama.cppの開発者のGeorgi Gerganovさんです。数字を小さく丸める「量子化」にも、幅広く対応しています。

MLXは、形式の名前というより、Appleの機械学習研究チームが作った、Apple Silicon向けの計算の枠組み(フレームワーク)です。GitHubの説明では、配列がメモリを共有する「ユニファイドメモリ」の考え方を、中心に置いています。MLXで動かすモデルは、MLX向けに変換したものを使います。

LM Studioの公式の資料では、対応する形式は2つです。GGUF(llama.cpp経由)と、MLX(Apple Silicon限定)です。つまりMacなら、LM Studioの中で両方が選べます。

5つの道具を、1つずつ

llama.cpp

C/C++で書かれた推論エンジンです。公式の説明では、Apple Siliconは「first-class citizen(最優先の対象)」で、Metal(AppleのGPU向けの仕組み)などを使って最適化されています。1.5ビットから8ビットまでの量子化に対応しています。

使い方は、コマンドです。llama-cliで直接やりとりし、llama-serverを使うと、OpenAI互換のAPIサーバーになります。Macへの導入は、公式の手順にbrew install llama.cppと書かれています。

MLX(mlx-lm)

mlx-lmは、MLXの上で文章を作るためのPythonパッケージです。pip install mlx-lmで入れます。mlx_lm.generate(文章の生成)、mlx_lm.chat(対話)、mlx_lm.convert(変換と量子化)といったコマンドがあります。Hugging Face Hubとつながっていて、1つのコマンドで多くのモデルを使える、とされています。

サーバーも立てられます。mlx_lm.serverを使うと、標準では8080番のポートで、OpenAI互換のAPIが動きます。ただし公式の資料には、「本番環境には勧めない。基本的な安全確認しか実装していない」と書かれています。自分のパソコンの中で使うぶんには、問題になりにくいですが、外に公開する用途には向きません。

Ollama

コマンドで動かす、モデルの管理役です。公式のREADMEには、macOSではcurl -fsSL https://ollama.com/install.sh | shで入れられる、と書かれています。モデルはollama run gemma4のように、名前を指定して動かします。REST APIが付いていて、localhost:11434で受け付けます。ライセンスはMITです。READMEは、llama.cppプロジェクトにも触れています。

注目なのは、2026年3月30日の公式ブログです。Ollamaが、Apple Silicon上でMLXを土台に動くようになった(プレビュー)と発表しました。対象はOllama 0.19で、そのとき挙がったモデルはQwen3.5-35B-A3B、条件は32GBを超えるユニファイドメモリのMac、とされています。

LM Studio

画面で操作するデスクトップアプリです。公式の説明では、モデルを探してダウンロードし、チャットを始められます。OpenAI互換のAPIと、独自のREST API(ベータ)も出せます。サーバー用に、画面のない版の「llmster」もあります。

エンジンの切り替えは、Macでは⌘+Shift+Rで開く画面から行います。llama.cppとMLXの2つが、ここで管理されます。

Splash

Inco AIが公開した、Apple Silicon向けの推論エンジンです。LM Studioの記事によれば、対象はQwen3.8-27BとQwen3.6-35B-A3Bの2つだけで、どちらも専用の補助モデル(DFlash 2)を持っています。補助モデルは、先読みで文章を予測して、本体の計算を減らす仕組み(投機的デコーディング)に使われます。

Hugging Faceのモデルページには、重要な注意があります。このパッケージは「TransformersやMLXのチェックポイントではなく、Splash以外では読み込めない」と書かれています。形式がほかと共通ではない、ということです。

条件は、M3以降のMac、macOS 26.4以降、メモリ36GB以上(48GB以上を推奨)です。LM Studioでは、設定の「Runtime」にある実験的なバックエンドから、「Splash (Metal)」をダウンロードして追加します。単体で使うなら、brew install incoai/tap/splashで入れ、splash serve --model incoai/Qwen3.8-27B-Splashで動かします。ライセンスはApache-2.0です。

比較表

道具 何の層か 操作 向く人 注意点
LM Studio アプリ(画面)。中でllama.cppやMLXなどを切り替える 画面(マウス)。APIも出せる まず動かしてみたい人 速さは、選んだエンジンで決まる
Ollama 管理役とサーバー。MLXはプレビュー コマンドと、REST API コマンドに慣れた人、他のアプリとつなぐ人 MLXの対象は32GB超のMacと、限られたモデル(2026年3月時点)
llama.cpp 推論エンジン(GGUF) コマンド(llama-cli、llama-server) 細かく設定したい人 設定は自分で決める
MLX(mlx-lm) 枠組みとエンジン(MLX形式、Apple Silicon限定) コマンドとPython Pythonを書く人、変換や学習もしたい人 サーバーは本番向きではない
Splash 専用エンジン(Qwen3.8-27Bなど2モデル限定) LM Studio、またはコマンド 対象モデルを速く動かしたい人 36GB以上が公式条件。Splash専用の形式

見立て:どれを選ぶと楽か

ここからは事実ではなく、見立てです。

初心者がいちばん迷わないのは、LM Studioだと考えます。検索してダウンロードして、チャットまで、画面で完結するからです。Macなら、同じ画面でGGUFとMLXの両方が選べるので、形式の違いを後から試せます。

コマンドが苦にならず、他のアプリとつなぎたいなら、Ollamaが近道です。コマンド1つでモデルが動き、APIも付いてきます。ただしMLXの対応はプレビューの段階で、条件も限られていました。最新の状況は、公式で確かめてください。

llama.cppとmlx-lmは、「エンジンそのもの」を触りたい人向けです。最初の1台目としては、設定が多く、遠回りになりやすいと考えます。ただし、LM StudioもOllamaも、その土台にこれらがいる、という理解は持っておくと役に立ちます。

Splashは、Qwen3.8-27Bを使うと決めた人の、追加の選択肢です。対象が2モデルに限られ、公式のメモリ条件も36GB以上です。ほかのモデルも動かしたい人には、汎用のエンジンの代わりにはなりません。

もうひとつ、見立てです。形式の違いは、最初のうちは気にしすぎなくて大丈夫だと思います。大事なのは、「いまの道具が読める形式のファイルを選ぶ」ことです。LM Studioは、検索結果から形式を切り替えられます。Splashのように専用の形式もあるので、ダウンロードの前に、対応を確かめる習慣をつけてください。

この記事で確かめられていないこと

速さの比較は、書いていません。ここで読んだ公式の資料に、GGUFとMLXを同じ条件で比べた数字は、なかったからです。「MLXのほうが速い」「llama.cppのほうが軽い」といった言い方は、条件しだいで変わります。数字は、モデル、機械、入力の長さをそろえた測定で見てください。

また、この記事は公式の資料を読んでまとめたもので、筆者が各道具を動かして確かめた記録ではありません。動画の内容は自動字幕からの読み取りです。

出典