3行でいうと
- Alibabaのモデルは、手元に置けるものと、API(ネット経由)だけのものに分かれる。
- Qwen3.8-27B、Qwen3.6-27B、Qwen3.6-35B-A3Bは、ダウンロードできてApache 2.0。
- Qwen3.8-Maxは、置けるが家庭では動かせない版と、APIだけの公式版がある。
- APIでは入力がAlibabaのサーバーに送られる。手元で動かせば送られないが、モデル内の偏りは残る。
これまでの記事で、Qwen3.8-27BやQwen3.6-35B-A3Bを何度か取り上げました。ここでは、その二つが家族のどこにいるのかを描きます。Splashでの速さや、32GBのMacに載る理由は、前の記事で扱ったので繰り返しません。
最終確認日は2026年10月6日です。
まず用語
- 重み(ウェイト):学習済みのAIの中身にあたるファイルです。これを公開しているモデルを「オープンウェイト」と呼びます。ダウンロードすれば、自分のパソコンで動かせます。
- API:ネット経由で、相手のサーバーのAIを使う方法です。入力した文章は、相手のサーバーに送られます。
- MoE:専門家(エキスパート)を大量に並べ、1回の計算ではそのうち一部だけを使う作りです。35B-A3Bなら、全体が350億、1回に動く部分が30億です。
手元に置けるもの
Hugging Faceの公式ページで確認できた範囲を、表にしました。
| モデル | 大きさ | 画像・動画の入力 | 文脈の長さ | ライセンス | 公開時期 |
|---|---|---|---|---|---|
| Qwen3.8-27B | 270億(密) | 画像・動画に対応 | 標準で262,144トークン。YaRNなどの拡張で最大100万 | Apache 2.0 | 2026年8月 |
| Qwen3.6-27B | 270億(密) | 画像・動画に対応 | 標準で262,144。拡張で最大約101万 | Apache 2.0 | 2026年4月 |
| Qwen3.6-35B-A3B | 全体350億、動く部分30億(MoE) | 画像・動画に対応(分類は「画像+文章から文章」) | 標準で262,144。拡張で最大約101万 | Apache 2.0 | 2026年4月 |
どれも、考える過程を先に書き出す「思考モード」が標準でオンです。設定でオフにできます。Qwen3.8-27Bのページには、思考の深さを段階(xhigh、medium、low)で調整できるとも書かれています。
用途の違いは、公式の説明から読み取れる範囲では、次のとおりです。
- Qwen3.6-35B-A3Bは、4月の公開時に、コードを書く作業(エージェント的なコーディング)の改善を打ち出していました。
- Qwen3.6-27Bも、同じ方向の作業が得意とされています。
- Qwen3.8-27Bは、8月公開の新しい世代の中型です。Qwen3.8のコレクション(公式の一覧)には、これと、次に書く巨大モデルしか載っていません。
小さな版や、コード専用・画像専用の版もあるようですが、二次情報(解説記事)での言及にとどまり、今回は公式ページで確かめていません。この表には入れていません。
なお、Hugging Faceの一覧では、Qwen3.8-27Bは「28B」と表示されています。画像を読む部品を含めた数え方かもしれませんが、理由までは確認していません。
置けるけれど、家では動かせないもの
Qwen3.8-Maxは、一つのモデルではなく、二つの顔を持っています。
公開された重み(Qwen3.8-2.4T-A95B)。 8月12日ごろ、Hugging Faceに載りました。全体で2.4兆パラメータ、動く部分は950億です。公式ページによると、文字だけの入力で、思考モードが必須です。文脈は標準で262,144トークンです。ライセンスは、Apache 2.0ではなく、専用の「qwen3.8-max」ライセンスです。
公式のQwen3.8-Max。 同じページに、公式版は、これをもとに、画像入力や思考なしの動作、標準で100万トークンの文脈などを足したもの、と書かれています。こちらは、AlibabaのAPI(Model Studio、QwenWork)で使います。
つまり「Maxは手元に置けない」とは言い切れません。置けるのは、機能を絞った文字だけの版です。画像や動画を読ませる公式版は、APIの側にあります。
大きさの感覚を、計算で出します。筆者の計算です。
- 27Bに対して、2.4Tは約89倍です。
- 1個の数字を1バイトで持つFP8版なら、重みだけで約2.4TBです。4ビットでも、およそ1.2TBを超えます。
- 32GBのMac miniに、そのままでは載りません。
公式のFP8版も公開されています。ただ、家庭用のパソコンで動かす前提のものではありません。
Maxのライセンス
ライセンス本文を読んだ要点です。細部は、使う前に原文で確認してください。
- 使う、改造する、配る、売る、といった行為は許されています。
- 月間利用者が1億人超、または月の売上が2000万ドル超の製品では、画面にモデル名を目立つように出す必要があります。
- 「モデルをサービスとして貸す」「AI作業アシスタントを売る」事業で、年間売上が5000万ドルを超える場合は、別の商用ライセンスが必要です。
個人や小さな会社が、自分のために使う分には、ほぼ関係のない条件です。ただし、Apache 2.0と同じではありません。
手元に置けないもの
確認できた範囲では、次のものは重みが公開されていません。
| モデル | 提供方法 | 入力 | 文脈 |
|---|---|---|---|
| Qwen3.8-Max(公式版) | AlibabaのAPI、QwenWork | 文章、画像、動画、文書 | 最大100万トークン |
| Qwen3.7-Plus | Alibaba CloudのAPIのみ | 文章、画像、動画 | 100万トークン(三つの入力で共有) |
| Qwen3.7-Max | APIのみ | 解説記事による | - |
Qwen3.7-Plusは、2026年6月の公開で、画面を操作する用途(GUIの位置を座標で返す)に向けた設計だと、解説記事は書いています。これらは二次情報で、価格や性能の数字は、各社の公表を確かめていません。
また、Maxの性能については、Alibabaの比較結果は自社の測定です。独立した評価では、Artificial Analysisの指標で、Maxは5位(オープンモデルでは2位)、Qwen3.8-27Bは52点でオープンモデルの3位、と報じられています。これはDeepLearning.AIの記事に載っていた数字です。
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「中国のAIを避けたい」とき、何が変わるか
ここからは、事実を分けて書きます。
事実1:データが外に出るかどうかが変わる
APIで使うと、入力した文章や画像は、Alibabaのサーバーに送られます。Alibaba Cloudは、Model Studioのページで、顧客のデータをモデルの学習には使わないと明記しています。利用できる地域は、北京、香港、シンガポール、東京、フランクフルト、バージニア(米国)の6つです。一方、同じページには、データの保管場所や保存期間の詳細は書かれていません。
重みをダウンロードして自分のパソコンで動かす場合、モデルは、手元のファイルです。入力した文章が、モデルを通じてAlibabaに送られる仕組みはありません。これは、オープンウェイトの性質からの説明です。LM Studioなど、動かすソフトの通信設定までは、この記事ではまだ確かめていません。
事実2:モデルの中の癖は、手元でも残る
重みの中に入っている振る舞いは、手元に置いても同じです。
ハーバード大学などの論文(Anthropicの研究者も共著)は、ローカルで動かしたQwen3の32Bと8Bを使っています。天安門事件や法輪功などの話題で、このモデルが、知っているのに隠すように訓練されている、という結果でした。実験はすべて、オープンウェイトを手元で動かして行われています。つまり、API側のフィルターだけの話ではありません。
また、2025年3月のTechCrunchの記事は、ある開発者の分析として、Qwen 2.5 72Bが、政治的にきわどい質問に、英語より中国語で答える割合が約半分だったと伝えています。古い世代のモデルの話で、今のQwen3.8に同じ傾向があるかは、確認できていません。
事実3:ライセンスと出自は、別の問題
27Bと35B-A3Bは、Apache 2.0です。用途の縛りは、ほぼありません。学習データは公開されていません。「オープンウェイトはオープンソースと同じではない」という指摘もあります。
セキュリティの面では、F5 Labsが2026年7月に、中国のオープンウェイトモデルのリスクを整理しています。モデルのファイルにコードを仕込む攻撃を避けるため、Pickle形式ではなくSafetensors形式を選ぶこと、出どころを確かめることを勧めています。これは中国製に限った話ではなく、記事自身も、米国のモデルにも理屈の上では当てはまる、と書いています。ただ、記事の根拠は限られている、という印象です。
事実4:派生モデルに紛れ込む
前の記事で書いたとおり、日本の「国産」モデルにも、QwenやDeepSeekを土台にしたものがあります。「中国製を避けたい」なら、手元に入れるモデルの土台まで見る必要があります。
見立てです
ここは意見です。
「中国のAIを避けたい」には、少なくとも三つの懸念が混ざっていると思います。
- 自分の文章や仕事のデータが、外に出るのが嫌だ。
- モデルの答えに、政治的な偏りや、隠された部分がないか心配だ。
- 使えなくなる、条件が変わる、というリスクが心配だ。
ローカルで動かすと、一つ目は大きく変わります。外に送る経路がなくなるからです。三つ目も、重みを持っている限り、止められないという意味で、和らぎます。27BはApache 2.0なので、条件が後から変わる心配も、ほぼありません。
二つ目は、変わりません。偏りは重みの中にあるからです。政治や歴史の話題を扱うなら、答えを鵜呑みにせず、別のモデルと比べて使うのが現実的だと思います。仕事の文書の要約やコードの用途なら、この偏りが問題になる場面は、多くないと見ています。ただし、これはこの記事は、検証したものではありません。
保険として別系統も置く案は、前の記事で書きました。gpt-ossやGemma 4を並べておき、用途で切り替える考え方です。
「Maxは手元に置けない」という言い方は、少し乱暴です。置けるが、動かせない。置けるのは機能を絞った版で、公式版はAPIだけ。この三つを分けておくのが、いちばん正確だと思います。
出典
- Qwen/Qwen3.8-27B(Hugging Face)
- Qwen3.8 Collection(Hugging Face)
- Qwen/Qwen3.8-2.4T-A95B(Hugging Face)
- Qwen3.8-2.4T-A95B のLICENSE(Hugging Face)
- Qwen/Qwen3.8-2.4T-A95B-FP8(Hugging Face)
- Qwen/Qwen3.6-35B-A3B(Hugging Face)
- Qwen/Qwen3.6-27B(Hugging Face)
- Qwen3.8-Max Lands With A Bang(DeepLearning.AI)
- Alibaba Opens Access to Qwen3.8-Max(Let's Data Science)
- What is Qwen(GeoToolbox)
- Qwen 3.7 Plus: Alibaba's multimodal agent model(Apidog)
- Alibaba Cloud Model Studio ヘルプ(Alibaba Cloud)
- Censored LLMs as a Natural Testbed for Secret Knowledge Elicitation(arXiv)
- AI's answers on China differ depending on the language(TechCrunch、2025年3月20日)
- Chinese open-weight AI models: cybersecurity risks and rewards(F5 Labs、2026年7月30日)
更新履歴
- 2026年10月25日 書き方を直しました。
- 前:運営者がやっていないと読める書き方 → いま:主語を記事にして、「この記事は、実際にやって確かめた記録ではありません」と書きました。運営者が使っているものを、使っていないと読ませないための直しで、内容や数字は変えていません。
