3行でいうと

  • AIは、声や文面や映像を本物らしく見せて、信用させやすくします。詐欺の形そのものは、昔からある手口が中心です。
  • お金や個人情報の話が出たら、いったん切って、自分で調べた番号にかけ直します。家族で合言葉も決めておきます。
  • お金、暗号資産、ギフトカード、確認コードは、会ったことのない相手や急かす相手に渡しません。
  • 声のコピーを使った詐欺の件数は、読んだ国内の公式資料では確認できていません。

この記事は、公式・一次資料を読んでまとめたものです。法律や被害回復の個別の判断は、警察、消費生活センター、弁護士など専門家にご相談ください。僕らの考えは「見立てです。」と分けて書きます。

先に結論

何が起きているか:詐欺全体の数字

警察庁が2026年6月5日に公表した、令和7年(2025年)の確定値です。数字は、同庁のページと資料のPDFで、2回確かめました。

種類 認知件数 被害額
特殊詐欺(全体) 27,832件(前年より6,789件増) 約1,423.1億円(前年より704.3億円増)。件数・被害額とも過去最悪
うち、警察官などをかたる「ニセ警察詐欺」 11,014件(特殊詐欺全体の39.6%) 1,005.0億円(同70.6%)
SNS型投資詐欺 9,523件 1,288.0億円
SNS型ロマンス詐欺 5,645件 546.4億円

警察庁は、ニセ警察詐欺の被害が令和6年後半から目立って増えたことを、全体の増加の主な要因としています。AIとの関係は、この統計の説明には書かれていません。

AIが関わる点として、公式資料に書かれていること

日本

  • 警察庁(SNS型ロマンス詐欺のページ):SNS上に公開された写真や、翻訳アプリ、AIなどを利用すれば、誰でも簡単に他人になりすませ、本人の音声や動画を作ることができてしまう。どんなにチャットや電話、ビデオ電話で仲良くなっても、本人ではない者がなりすましている可能性がある。実際に会ったことがなければ、だまされているかもしれない、と書かれています。
  • IPA(AI利用者のためのセキュリティ豆知識、2025年12月版):本物と見分けのつかないフェイクの画像・動画・音声を、誰でも簡単に作れる状況にある。多額の送金や機密情報の送信を促すメールやオンライン会議の依頼は、二重・三重に確認する。自分や家族の顔写真や声を、SNSで安易に公開しない、と呼びかけています。
  • 総務省の啓発資料:AIが作った偽の社長がオンライン会議に出て、その指示で送ったお金が、危うくだまし取られる寸前だった事件が起きた、と紹介しています。
  • 内閣官房(2026年):生成AIの進歩で、著名人の顔や声を無断で使ったなりすまし広告詐欺が、SNSや動画サイトで拡大している、としています。

米国

  • FBI(2024年12月):犯罪者は、家族の声に似せた短い音声を作って緊急を装い、お金や身代金を求める。会社の幹部や警察官を装ったリアルタイムのビデオチャットや、「本物の人だ」と信じさせる動画も使われる、とあります。
  • FBI(2025年5月、12月):高官になりすまし、テキストとAI生成の音声メッセージで信用させたあと、別のメッセージアプリに誘導し、確認コードや書類、送金を求める手口を警告しています。AIの声は「ほとんど同じに聞こえることがある」とされています。
  • FTC(2023年3月):家族の緊急事態を装う詐欺に、声のコピーが使われる。声を信用せず、本人の知っている番号にかけ直すよう助言しています。送金、暗号資産、ギフトカードを求められたら、詐欺の兆候だとも書かれています。

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手口の型と、見分けるサイン

どの型も、被害者の側から見える特徴を、公式資料から拾いました。

型 見える特徴(公式資料) 出どころ
家族・親族を名乗る緊急の電話(オレオレ詐欺) 「風邪で声が変わった」「携帯が壊れて番号が変わった」と言って信用させ、「今すぐお金が必要」と振込を求める。「+」から始まる国際電話が多い。銀行で理由を聞かれたときの答え方まで指示してくることがある 警察庁
警察官などを名乗る(ニセ警察詐欺) 「あなたの口座が犯罪に使われている」「あなたは逮捕される」などと不安をあおる。実在の警察署の番号が表示されることも。警察手帳や逮捕状の画像を見せ、LINEなどのビデオ通話に移る。事例では「捜査の内容は誰にも話してはいけない」と強く口止めして不安をあおっていた 警察庁(ニセ警察詐欺に注意!、ニセ警察官とのビデオ通話)
会ったことのない人との恋愛・投資(SNS型ロマンス詐欺、SNS型投資詐欺) 「2人の将来のために投資を」「会いたいから旅費を送って」と言われる。専用アプリで利益が出ているように見せられ、出金しようとすると、さまざまな名目で送金を求められる。早い段階でLINEに誘導される 警察庁
社長・上司を名乗るメール 社長や社員の名前が表示名で、無料のメールアドレスから届く。LINEグループを作ってQRコードを返信するよう指示され、あとで振込指示が来る IPA(この注意喚起の本文にAIの記述はありません)
著名人の広告からの誘導 著名人の画像や動画を無断で使った広告。「必ずもうかる」「元本保証」といった言葉。個人名義の口座への振込を指定される 警察庁、消費者庁

見立てです。型を並べると、共通点は「急がせる」「口止めする(公式資料ではニセ警察の事例)」「別の連絡手段に移す」「お金、暗号資産、ギフトカード、確認コードを求める」の4つです。AIで声や顔が本物らしくなっても、この4つは変わらないので、見分けのサインとして使えると思います。

今日からできる備え

家族で

  • [ ] 合言葉を決めておく。FBIは、家族だけの秘密の言葉や言い回しを決め、なりすましを確かめるのに使うよう助言しています。
  • [ ] 「お金の話が出たら、一度切ってかけ直す」を、家族の決まりにする。警察庁も「電話でお金の話が出たら、一旦電話を切り、すぐに家族などに相談を」と書いています。
  • [ ] かけ直す先は、相手から教えられた番号ではなく、自分の電話帳や、公式サイトで調べた番号にする(警察庁、FBI)。

電話・メッセージで

  • [ ] 警察庁のページでは、国際電話が使えない設定(利用休止)、番号表示、非通知の拒否、知らない番号の着信拒否が紹介されています。
  • [ ] 本物の警察官は、電話で捜査対象と伝えたり、メッセージアプリで連絡したり、警察手帳や逮捕状の画像を送ったり、個人のスマホにいきなりビデオ通話をしたりしない、と警察庁は書いています。
  • [ ] 確認コード(SMSなどで届く数字)は、誰にも教えない。FBIは、メールやテキスト、メッセージアプリで、誰にも二要素認証のコードを渡さないよう書いています。
  • [ ] 知らない相手から届いたリンクは、送信者を別の方法で確かめるまで開かない(FBI)。

お金について

  • [ ] 会ったことのない人から、投資や結婚費用、旅費、手数料の話が出たら、振り込む前に警察に相談する(警察庁)。
  • [ ] 個人名義の口座を指定されたら、詐欺と考える(消費者庁)。
  • [ ] 会社では、振込の二重チェックと承認の手順を決める(IPA)。

自分の素材について

  • [ ] 顔写真や声が分かる動画を、SNSに安易に公開しない(IPA)。可能なら、アカウントを非公開にする(FBI)。

見立てです。すでに公開したものを全部引き上げるのは現実的ではないと思います。素材を減らす努力より、本人確認の手順(かけ直し、合言葉)を持つことを優先するほうが、効きやすいと思います。

その場で動くなら

  1. 切る。あるいは返信せずに止める。
  2. 自分で調べた番号で、本人や機関にかけ直す。難しければ、家族や身近な人に話す。
  3. 不安なら、警察相談専用電話 #9110 か、消費者ホットライン 188 に相談する。

警察庁のページには、被疑者の情報を寄せる匿名通報ダイヤル(0120-924-839)も載っています。

振り込んでしまった後の手続き(金融機関への連絡など)は、今回、公式ページで内容を確認していません。まず #9110、最寄りの警察署、188に相談してください。米国の被害は、FBIのIC3(ic3.gov)に報告するよう案内されています。

気をつけること

  • 国内の公式資料で、声のコピーを使った詐欺が何件あるかは、確認できていません。警察庁の数字は、AIの有無を分けていません。
  • FBI、FTCの助言は米国の資料で、窓口の番号などは日本では使えません。日本の相談先は、#9110と188を使ってください。
  • 警察庁のSNS型ロマンス詐欺のページには、令和8年1月〜6月の被害のグラフがありますが、グラフの数字は読み取れておらず、この記事では使っていません。
  • 「AIの声や顔には、ここがおかしい」という見分け方を、この記事では書いていません。公式資料も、見た目で見分けることの難しさを繰り返しているためです。
  • IPAの「社長等をかたる詐欺メール」の注意喚起には、AIの記述がありません。AIを使っていない詐欺も、同じように多い、ということは、覚えておいてください。
  • この記事は、法律の解釈や、被害回復の見込みについて、何も断定していません。
  • 警察庁の番号や仕組みは、変わることがあります。

出典

更新履歴

  • 2026年10月23日 公式の資料を読み直して、次の点を直しました。
    • 前:ニセ警察詐欺の言い回し「口座が悪用されている」「逮捕状が出ている」 → いま:公式の言い回し「あなたの口座が犯罪に使われている」「あなたは逮捕される」などに直しました
  • 一部の出典は読めなかったため、その部分は前のままです。

  • 2026年10月22日 公式の資料を読み直して、次の点を直しました。

    • 前:ニセ警察詐欺は「『誰にも話すな』と口止めする」と断定 → いま:事例では「捜査の内容は誰にも話してはいけない」と強く口止めしていた、と出どころを限定
    • 前:4つの共通点の「口止めする」は全般的な特徴 → いま:「口止めする」は公式資料ではニセ警察の事例、と範囲を明記