3行でいうと
- LLM-jp-4は国立情報学研究所(NII)などが出した国産モデルで、ゼロから学習したと説明され、Apache 2.0で公開されている。
- 日本語ベンチマークの数字はすべて開発側の自社測定で、独立した第三者の測定は見つからなかった。
- GGUFは非公式の版が中心で、公式のものは見当たらない。Macでの動作報告も見つからなかった。
- 32GBのMacに載るかは筆者の計算で、実機では未確認。小さく丸めた18GB前後の版なら余裕がある見込み。
LLM-jp-4は、国立情報学研究所(NII)などが進める国産の大規模言語モデル(LLM)です。ゼロから学習したと説明されていて、Apache 2.0で公開されています。種類、数字、手元のMacで動かせるかの見込みを、順に見ていきます。
まず基本:いつ、何が出たのか
2026年4月3日、NIIは「LLM-jp-4」を公開しました。大きさの違う2つが出ています。
- 8B:約86億パラメータ。全体が毎回動く「密」な作りです。
- 32B-A3B:全体で約320億パラメータ。「MoE」という作りで、1回の計算で動くのは約38億です。
MoEは、専門家役の小さな部分がたくさんあり、そのうち一部だけを呼び出す作りです。名前の「A3B」は、動く部分が約3B(30億)という意味です。NIIの発表では、全体が約32B、動く部分が3.8Bとされています。
その後も続きました。
- 8月18日:約332億パラメータの密なモデル「LLM-jp-4 33B」を公開。NIIの発表では、ベース版と、追加の調整をした「thinking」版の2種類です。
- 10月1日:「LLM-jp-4.1」が出たと、報じられています(二次情報です)。モデルカードには、32B-A3Bと33Bなどの4.1版が並んでいます。
ここから先は、4月に出た32B-A3Bを中心に書きます。
なお、解説記事の中には、全体が「321B」、動く部分が「38B」といった、桁の違う表記がありました。NIIの公式な説明は、約32B・3.8Bです。数字を見るときは、公式のページと突き合わせたほうが安全です。
ライセンスと、ゼロから学習したという説明
ライセンスは、Hugging Faceのモデルカードに「Apache License 2.0」とあります。商用利用も、改変も、再配布もできる、ゆるやかな条件です。NIIの英語の発表文は、「オープンソースAIの定義に沿う」としています。
学習データは、約12兆トークンです。トークンは、文章を刻んだ単位のことです。モデルカードには、11.7兆トークンとあります。内訳は、ネット上の公開データ、政府・国会の文書、合成データ、ソースコードです(NIIの発表)。
文部科学省の資料には、学習の段階ごとの数字が「6.29T+4.19T+0.84T+0.42T=11.74T」と並んでいます。ただし、各段階が何を指すかは、僕らは読み取れませんでした。
「ゼロから学習した」という点は、NIIが「ゼロから(from scratch)」と説明しています。注意したいのは、この言葉の範囲です。前の記事で書いたとおり、中身を見分けるには、重みを最初から学習したのかが分かれ目です。解説記事によれば、LLM-jp-4 32B-A3Bの設計は、Qwen3のMoEをもとにしています。重みは乱数から学習し、設計図は公開されたものを借りている、ということです。借りた設計は、隠してはいません。
日本語ベンチマークの結果:誰が測ったのか
数字は、誰が測ったかで意味が変わります。ここに出す数字は、すべて開発側(LLM-jp)の自社の測定です。モデルカードによると、採点役のAIにGPT-5.4を使う方式(LLM-as-a-Judge)です。点数の幅は、MT-Benchが10点満点、ほかは5点満点です。
| モデル | MT-Bench 日本語 | MT-Bench 英語 | 安全性(AnswerCarefully) | 指示追従(llm-jp-instructions) |
|---|---|---|---|---|
| LLM-jp-4 32B-A3B | 7.82 | 7.86 | 3.70 | 3.61 |
| LLM-jp-4.1 32B-A3B | 7.69 | 7.85 | 3.91 | 3.79 |
| LLM-jp-4.1 33B | 7.76 | 7.98 | 4.08 | 3.83 |
| gpt-oss-20b | 7.33 | 7.85 | 3.55 | 3.16 |
| GPT-4o(2024年8月版) | 7.29 | 7.69 | 4.00 | 4.07 |
出どころは、4.1版のモデルカードの表です。ここから読み取れることがあります。
- 会話の評価(MT-Bench)では、GPT-4oやgpt-oss-20bを上回っています。
- 一方、指示追従は、GPT-4oのほうが上です。4月版は3.61、GPT-4oは4.07でした。
- 4.1は、日本語の会話の点が少し下がり、安全性と指示追従の点が上がっています。
モデルカードには、開発の初期段階で、人の意図や安全性に合わせた調整はされていない、という断り書きもあります。
独立した第三者の測定は、見つけられませんでした。日本語モデルの比較で知られるSwallowのリーダーボードも、僕らが読んだ説明ページでは、LLM-jp-4を載せていませんでした(載っていたのはLLM-jp-3系まで)。リーダーボードは更新されるので、今は変わっているかもしれません。
公開されている形式:GGUFや量子化版はあるか
NIIが公開している本体は、BF16(1つの数字を16ビットで表す形式)のSafetensorsです。ほかに、vLLMなどで動かす方法がモデルカードに書かれています。
手元で動かしたいときに使うGGUF(llama.cppなどが読む形式)や、量子化版(数字を粗く丸めて小さくした版)は、別の人が作ったものがあります。
- 4月版のモデルカードには、量子化版が9件あると表示されていました。4.1版は3件です。作った人の名前は、そのページからは分かりませんでした。
- ある検証記事は、GGUFの大きさを示しています。Q3_K_Mが16.7GB、MXFP4_MOEが18.1GB、Q4_K_Mが21.4GB、Q5_K_Mが24.4GBです。作ったのは「mmnga-o」という個人(コミュニティ)だと書かれています。
- 別の解説記事は、公式のGGUFはなく、コミュニティ版は、文字の切り分け(トークナイザ)の違いで問題が出る恐れがある、と注意しています。
- 同じ検証記事には、推論(考える)モードの設定をしないと、考える文だけで出力の枠を使い切った、という記録があります。
つまり、GGUFは「ある。ただし公式ではなさそう」です。
メモリ32GBのMacに載るか:筆者の計算
ここからは、筆者の計算です。この記事は、実際に使って確かめた記録ではありません。
使う数字は、次の3つです。
- Q4_K_MのGGUFは、21.4GB(検証記事の数字。作ったのは非公式の版)
- 長さいっぱい(65,536トークン)の会話に必要な作業用メモリ(KVキャッシュ)は、約2.2GiB(同じ検証記事。Q5_K_Mで測った値)
- Macでモデルに使えるのは、メモリの約75%(以前の記事で紹介したAppleの開発者フォーラムの話)。32GBなら、約24GB
21.4GBに、約2.2GiB(約2.3GB)を足すと、約23.7GBになります。使える約24GBと、ほとんど同じです。Q4_K_Mは、長い会話では、ぎりぎりです。会話を短くするか、設定を変える必要があるでしょう。
| 形式 | ファイル | +KVキャッシュ約2.3GB | 24GBに対して |
|---|---|---|---|
| Q3_K_M | 16.7GB | 約19.0GB | 余裕あり |
| MXFP4_MOE | 18.1GB | 約20.4GB | 余裕あり |
| Q4_K_M | 21.4GB | 約23.7GB | ぎりぎり |
| Q5_K_M | 24.4GB | 約26.7GB | 載らない |
Q5は、24GBの枠を超えます。余裕を見るなら、18GB前後のものが候補です。ただし、量子化で、日本語の質がどれだけ落ちるかは、確かめていません。
速さも、粗く見てみます。MoEは、1つ作るたびに、動く部分(約3.8B)だけを読めばよい作りです。Q4_K_Mの重みを1個あたり約5.3ビットと置くと、動く部分は約2.5GBです。M6 Mac miniのメモリ帯域は、毎秒170GBでした(Appleの公表)。170÷2.5で、約68トークン毎秒が、理屈の上の天井です。実際は、これより遅くなります。参考に、AMDのチップ(Ryzen AI Max+ 395)での検証記事では、Q5_K_Mが毎秒62.9トークンでした。Macでの検証記事は、見つけられませんでした。
ほかの国産モデルとの位置づけ
ここは見立てです。表は前の記事(02、05)と重なるので、軸だけ書きます。
| モデル | 位置づけ(見立て) |
|---|---|
| LLM-jp-4 | 研究の成果を、広く公開することが軸です。重みはApache 2.0で、DPO用のデータセットも公開されています。研究用で、初期段階という断り書きがあります。 |
| Swallow | 海外のモデル(Qwen3)に日本語の追加学習をします。日本語の実用性を早く得やすい作り方です。ライセンスは、検証記事で未定とされていました。 |
| PLaMo | Preferred Networksが自社で学習します。手元に置けるのは、会話用の調整前のベース版が中心です。 |
| Sarashina | ソフトバンクのSB Intuitionsが開発します。オープンなのは前の世代で、最新世代はAPI中心です。 |
LLM-jp-4の特徴は、重みも、使い方の自由度も、手元に置ける側に寄っている点です。ゼロから学習して、Apache 2.0で出す国産モデルは、まだ多くありません。
ただ、これは、今日いちばん賢い日本語モデルだ、という話ではありません。仕事で使うなら、自分の文書で試してから決めるのが安全です。
気をつけること
- ベンチマークの数字は、開発側の測定です。採点役のAIで点が変わります。
- GGUFは非公式な版が中心で、Mac(Apple Silicon)での動作報告は、見つけられませんでした。
- 10月1日の4.1の話は、二次情報が中心です。公式の発表日は、この記事では確認していません。
- 開発は続いています。NIIは、さらに大きなモデルを、2026年度中に順次公開する予定だと説明しています。
出典
- LLM-jp-4を公開(国立情報学研究所、2026年4月3日)
- NII、LLM-jp-4を公開(カレントアウェアネス)
- NII、LLM-jp-4 33Bを公開(カレントアウェアネス)
- LLM-jp-4 33Bの発表(LLM-jp、2026年8月18日)
- LLM-jp 公開モデル一覧(LLM-jp)
- llm-jp-4-32b-a3b-thinking(Hugging Face)
- llm-jp-4.1-32b-a3b-thinking(Hugging Face)
- LLM-jp-4-32B-A3B on ROCm + Strix Halo(lilting.ch)
- 9 Japanese LLMs in April 2026 compared(lilting.ch)
- LLM-jp-4とは(AI Revolution)
- LLM-jp-4.1シリーズ公開(St.Hakky)
- Swallow LLM Leaderboard について(Swallowプロジェクト)
- LLM-jp-4に関する資料(文部科学省、2026年7月30日)
更新履歴
- 2026年10月25日 書き方を直しました。
- 前:運営者が使っていないと読める書き方 → いま:「この記事は、実際に使って確かめた記録ではありません」。公式の資料を読んでまとめた記事で、使い心地は書いていない、という意味に直した
