3行でいうと

  • 見る数字は2つ。載るモデルの大きさはメモリの量、書く速さはメモリ帯域で決まる。
  • たとえると、メモリの量はタンクの大きさ、帯域は蛇口の太さ。
  • 27Bの4ビット(約15GB)の速さの上限は、帯域÷15が目安。M6 Mac miniは毎秒約11トークン(筆者の計算)。
  • 見立てでは、最初の1台は32GBのMac miniで27B級を試すのが分かりやすい。

家庭でAIを動かすマシンは、ここ1年で選択肢が増えました。ただ、スペック表の数字が多くて、何を見ればいいのか迷います。この記事では、製品の紹介は最小限にして、見るべき数字を2つに絞って説明します。最後に、「いくら出せば何が動くか」の表もあります。

見る数字は、たった2つ

ローカルAIを動かすとき、見るべきなのは次の2つです。

  1. メモリの量:どれくらい大きなモデルが「載るか」を決めます。
  2. メモリ帯域:載ったモデルが「どれくらい速く文章を書くか」を決めます。

メモリ帯域とは、1秒間にメモリから読み出せるデータの量です。単位はGB/s(毎秒ギガバイト)で、太いほど速くなります。水道にたとえるなら、メモリの量はタンクの大きさ、帯域は蛇口の太さです。

CPUやGPUの計算の速さも大事ですが、AIが文章を1語ずつ書いていく場面では、主役ではありません。ある解説は、1語を書くたびにモデルの重み(AIの中身の数字)を、ほぼ全部メモリから読み出す必要がある、と説明しています。計算そのものは速く、待っているのはデータの到着です。

載るかどうかは、メモリの量で決まる

モデルのファイルの大きさは、おおよそ「パラメータ数 × 1個あたりのバイト数」です。4ビットに圧縮(量子化)した27B(270億パラメータ)のモデルは、前の記事で見たとおり約15GBです。ある解説の表では、4ビット量子化の目安は、9Bで5.7GB、27Bで16.5GB、32Bで19.8GB、70Bで42.5GBです。

ただし、モデル本体だけでは足りません。会話の長さに応じて増える作業用メモリ(KVキャッシュ)と、OSの分も要ります。同じ解説によると、文脈が4Kトークンなら作業用メモリは誤差ですが、128Kトークンではモデル本体を超えることがあります。32GBのMac miniで、OSの分を引いて使えるのは約29GBという見積もりが一つあります。前の記事で紹介した別の解説は約24GBでした。解説によって幅があります。

載らない場合は、遅いメモリや保存装置にあふれるか、そもそも読み込めません。迷ったら、載せたいモデルの本体サイズに、数GBから十数GBの余裕を足して選んでください。

速さは、メモリ帯域で決まる

文章を書く速さの上限は、おおよそ次の式で表せます。

速さの上限(トークン/秒)= メモリ帯域 ÷ 1語ごとに読むデータの量

これは、ある速度計算ツールの解説にある考え方です。実際の速さは、上限の60〜90%程度になるそうです。この式は、プロンプトを読み込む処理(長い文章を最初に食べる段階)には当てはまりません。そちらは計算の速さが効きます。

式を、実測と照らしてみます。M6 Mac miniの32GB版では、独立した測定で、実際の帯域は毎秒143〜144GB程度でした。9Bの4ビットモデルを動かして、毎秒26.9トークンが出ています(MindStudioの測定)。式で見ると、143÷5.7=約25です。筆者の計算ですが、実測に近い値です。

専門家向けの補足を一つ。MoE(混合専門家)というタイプのモデルは、全体は大きくても、1語ごとに使う部分が一部なので、読むデータの量は小さくなります。その分、同じ帯域でも速く動きます。

統合メモリとVRAMの違い

メモリの置き方には、2つの流儀があります。

VRAM(GPU専用のメモリ):NVIDIAのGPUカードに載っています。帯域はとても太い一方、量は少なめです。モデルがここに収まらないと、遅くなります。

統合メモリ:CPUとGPUが、1つの大きなメモリを分け合います。Appleシリコン、DGX Spark、Ryzen AI Max+がこの形です。帯域はGPUカードより細いのですが、量を大きくできます。

統合メモリでも、全部をGPUが使えるわけではありません。AMDのRyzen AI Max+ 395は、メモリを、GPUに割り当てる量を設定できます。ある報道では、32GB機で24GB、64GB機で48GB、128GB機で96GBまでです。

帯域と、27Bの速さの上限(筆者の計算)

27Bの4ビット(約15GB)を動かすとして、帯域を15で割った値を並べます。これは上限で、実際の速さはもっと下になります。MoEのモデルには当てはまりません。

マシン メモリ帯域 速さの上限の目安
M6 Mac mini(24GB・32GB) 170GB/s 毎秒約11トークン
Ryzen AI Max+ 395 256GB/s 毎秒約17トークン
DGX Spark 273GB/s 毎秒約18トークン
M5 Pro Mac mini 307GB/s 毎秒約20トークン
Mac Studio(M5 Max、上位) 最大614GB/s 毎秒約41トークン
Mac Studio(M5 Ultra) 1.2TB/s 毎秒約80トークン
RTX 5090(32GB) 1792GB/s 毎秒約120トークン

帯域はいずれも、報道や公式の数字です。RTX 5060 Ti(16GB)は、帯域が448GB/sありますが、27Bの4ビットは前述の目安で16.5GBなので、16GBには載りません。この表で見えるのは、同じ価格帯でも、帯域に10倍近い開きがあることです。

いくら出せば何が動くか

価格は、出典に書いてあるものだけを、ドルのまま載せています。為替の換算はしていません。メモリの価格が上がっている時期なので、価格は日によって動きます。

構成 メモリ 帯域 価格(出典の表記) 電力 目安
M6 Mac mini 16GB 16GB 153GB/s $899(256GB保存容量の標準構成) 待機で4W、最大70W(Appleの公表値) 9B級までを、気軽に
M6 Mac mini 24GB 24GB 170GB/s メモリの追加が$200。24GB・512GB保存容量の構成は$1,299 同上 20B級まで
M6 Mac mini 32GB 32GB 170GB/s メモリの追加が$400。総額は保存容量の選択で変わる(要確認) 同上 27B級の4ビットが載る
M5 Pro Mac mini 24GB/48GB/64GB 307GB/s $1,699から。48GBは+$600、64GBは+$1,000 要確認 載せる量も速さも一段上
Mac Studio M5 Max 36GB〜128GB 460〜614GB/s $2,499から。128GBは+$2,000 要確認 大きなモデルを、実用の速さで
Mac Studio M5 Ultra 96GB〜512GB 1.2TB/s $5,499から。256GBは+$4,000。512GBは10月下旬の予定 要確認 家庭用の限界に近い
DGX Spark 64GB 64GB 273GB/s $4,999から(パートナー各社、10月23日) 電源は240W、チップの設計電力は140W(NVIDIA) 100B級まで載るとNVIDIAは説明
DGX Spark 128GB 128GB 273GB/s 約$6,950〜$6,995と報じられた。以前のNVIDIA希望価格は$4,699 同上 200B級まで載るとNVIDIAは説明
Ryzen AI Max+搭載ミニPC(128GB) 128GB(GPUに最大96GB) 約256GB/s EVO-X2は発売時$1,799〜$2,199.99、2026年5月に$3,299との報告。Corsair AI Workstation 300は$2,699.99(2026年4月)。EVO-X3は$3,600 負荷時に約140W(解説記事)、チップは45〜125W(AMD) 70B級の4ビットが載る
GPUカード RTX 5060 Ti 16GB 16GB 448GB/s $429(希望小売価格、カードのみ) 180W 14B前後までを、速く
GPUカード RTX 5090 32GB 1792GB/s $1999(希望小売価格、カードのみ) 575W 27B級を、速く

「目安」の欄は、モデルの大きさの目安から筆者が当てはめた見立てで、出典の数字ではありません。注意点を3つ書きます。

  • Mac mini 16GB版だけ、帯域が低い。 24GB・32GB版は170GB/sですが、16GB版は153GB/sです。
  • DGX Sparkの128GB版の価格は、報道で食い違っています。 約$6,950(The Register報道、二次引用)と$6,995(別の解説)です。どちらも、NVIDIAの発表ではありません。
  • GPUカードの価格は、カード1枚だけです。 PC本体の価格は、出典を確認できていません。電源、冷却、置き場所の分も要ります。

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選び方の軸(見立てです。)

ここからは、見立てです。この記事は、実際に使って確かめた記録ではありません。

1. まず、載せたいモデルのサイズから決める。 迷うなら、27B級(4ビットで約15GB)を基準にします。M6 Mac miniなら32GB版が、これを載せられる最小の構成です(上の目安では、載るのは約29GBまでの見積もり)。

2. 次に、待てる速さで、帯域を選ぶ。 人が読む速さで、毎秒10トークン前後が一つの目安です。M6 Mac miniの170GB/sは、27B級だと上限でもこのくらいです。実際はもっと下がるので、大きなモデルを日常で使うなら、帯域の太い機種を選ぶ理由になります。

3. 「量は多いが、帯域は細い」機種は、用途を選ぶ。 DGX SparkやRyzen AI Max+は、128GBまで載りますが、帯域は250〜270GB/s台です。70B級を「載せて動かす」ことはできますが、速さを求める使い方には向きません。長い文書を放り込んで待つ、といった使い方なら成り立ちます。

4. GPUカードは、速さ重視で、モデルは小さめ。 RTX 5090の帯域は群を抜いていますが、載るのは32GBまでです。電力も575Wと大きいので、置き場所と電気代も考える必要があります。

5. 価格は、動いている。 メモリの価格上昇を背景に、DGX Sparkの128GB版も、Ryzen AI Max+のミニPCも、発売時より高くなったと報じられています。買う直前に、必ず最新の価格を確認してください。

最初の1台なら、32GBのMac miniで27B級を試すのが、わかりやすい出発点だと考えます。もっと大きなモデルが必要になったら、そのとき初めて、量か帯域のどちらが足りないのかを見て、次の機種を選べば間に合います。

気をつけること

  • 帯域と価格は、出典によって測り方や時期が違います。表は、同じ条件で比べたものではありません。
  • 速さの上限は、筆者の計算です。実際の速さは、ソフトや設定で変わります。
  • 電力は、条件の違う数字が混ざっています。「要確認」の欄は、出典で確かめられなかった項目です。
  • NVIDIAのRTX Spark搭載機は、10月出荷の予定で、価格は未発表と報じられています。この表には入れていません。

出典

更新履歴

  • 2026年10月25日 書き方を直しました。
    • 前:運営者が使っていないと読める書き方 → いま:「この記事は、実際に使って確かめた記録ではありません」。公式の資料を読んでまとめた記事で、使い心地は書いていない、という意味に直した