3行でいうと
- 損益分岐は、GPUの1日の費用を、APIの1トークンあたり単価で割れば出ます。僕らの計算です。
- GPU1枚(3.99ドル/時間)を24時間借りる費用は、1日95.76ドル、月約2,913ドルです。
- 100万トークンあたり約2.9ドルのAPI(8千入力・千出力の混合)なら、1日約3,300万トークンが分岐点です。
- 100万トークンあたり約0.14ドルの小型APIは、分岐点が1日約6.6億トークンまで上がります。
この記事は、実際に使って確かめた記録ではありません。この記事は公式の文書や料金ページ、公開されているベンチマークを読んでまとめたものです。価格は2026年10月22日に確認しました。ただし、AWSのp5.4xlarge(6.88ドル)だけは10月22日に読み直せず、10月8日の値です。価格は変わることがあります。
先に結論
見立てです。次の三つの順に考えると整理しやすいと思います。
- APIの単価が安い小型モデルで足りるなら、自前ホストは割に合いにくい。 GPUをほぼ常時、満杯に近い状態で動かさないと、APIの単価に届かないためです。
- 大型・高価格帯のAPI(100万トークンあたり数ドル以上)の代わりに、同じ品質を出せるオープンなモデルがあるなら、自前ホストの余地が出る。 ただし、品質が同じかどうかは、必ず自分のデータで確かめる必要があります。
- 量が少ない、波がある、品質が最優先、担当者がいない場合は、APIが無難。 自前ホストには、GPUが遊んでいる時間の費用と、運用の手間が乗ります。
前提:何を比べるのか
- APIは、アプリからAIを呼び出す窓口で、使った量(トークン)に応じて払います。トークンは、AIが読み書きする文字の量を数える単位です。
- 自前ホストは、GPUを借りるか買うかして、モデルを自分で動かすことです。この記事では、クラウドでGPUを時間単位で借りる場合を考えます。払うのは、動かした時間分で、使った量ではありません。
- スループットは、GPUが1秒に処理できるトークンの数です。
- 稼働率は、借りている時間のうち、実際にその量を処理している割合です。夜間や休日は、ほぼ0になることがあります。
計算式
文字を使うので少し硬いですが、電卓で足りる式です。
- GPUの1日の費用 = 1時間の料金 × 24
- 自前ホストの100万トークンあたりの費用 = 1時間の料金 ÷(1秒のトークン数 × 3,600 × 稼働率)× 100万
- 損益分岐の1日のトークン量 = GPUの1日の費用 ÷ APIの100万トークンあたりの単価 × 100万
「100万トークンあたりの単価」は、入力と出力の単価が違うので、入出力の比で平均します。ここでは、読んだベンチマークの条件に合わせて、入力8,000トークン・出力1,000トークンの1回の呼び出しを例にしました。混合の単価は(8×入力単価+1×出力単価)÷9です(僕らの計算です)。
数字をそろえる
API側(100万トークンあたり、米ドル。2026年10月22日確認)
| API | 入力 | 出力 | 混合(8:1) | 読んだ場所 |
|---|---|---|---|---|
| Claude Haiku 5.5(10万トークン以下) / GPT-6 Luna | 0.10 | 0.50 | 約0.144 | Anthropic、OpenAIの料金ページ |
| Mistral Small 4 | 0.15 | 0.60 | 0.20 | Mistralの料金ページ |
| DeepSeek(deepseek-flash、空いている時間、キャッシュなし) | 0.15 | 0.60 | 0.20 | DeepSeekの料金ページ |
| DeepSeek(deepseek-flash、ピーク) | 0.30 | 1.20 | 0.40 | 同上 |
| Claude Sonnet 5.5 / GPT-6.1 Sol | 2 | 10 | 約2.89 | Anthropic、OpenAIの料金ページ |
| Claude Opus 5.5 | 4 | 20 | 約5.78 | Anthropicの料金ページ |
| Claude Fable 5.1 / GPT-6 Astra | 10 | 50 | 約14.44 | 同上 |
補足です。
- Anthropicの料金ページには、バッチ(急がない処理をまとめて頼む方式)で入力と出力が50%引き、とあります。キャッシュ(同じ前置きを繰り返し読ませる割引)の読み取りは、基本の入力単価の0.1倍(モデルによって0.025倍や0.05倍)です。
- OpenAIのページには「Flex/Batch」のタブらしき表示と、標準のちょうど半額に見える価格表があります。ただし表にラベルがなく、バッチの割引とは断定できませんでした。Mistralのページには、バッチ価格はありませんでした。
- DeepSeekの空いている時間は、ピークの半額です。ピークは、平日(中国の祝日を除く)の協定世界時1時から4時と、6時から10時です。
- OpenAIのページには、入力の長さ(短い・長い)の見出しがあります。10月8日には長い入力で単価が上がると読みましたが、10月22日は単価の差を読み切れず、確認できませんでした。
GPU側(1GPU時間、米ドル。RunPodとAzureは2026年10月22日、AWSは10月8日に公式ページで確認)
詳しくは「クラウドGPUの料金地図」の記事に書きました。この記事では、次の3つを例にします。
- RunPodのPod(H100 SXM):3.99ドル(10月8日には3.49ドルと読んだ値が、今回は変わっています)
- AWSのp5.4xlarge(H100が1枚、US東部):6.88ドル
- AzureのND96isr H100 v5(8GPUの値段を8で割った値、US東部):12.29ドル(僕らの計算)
1枚のGPUが出せる量の例
公開されているベンチマークに、InferenceX(SemiAnalysisが運営し、実行の記録を公開している)があります。そのgpt-oss-120b(OpenAIが公開したオープンなモデルで、117bのパラメータ、1トークンあたり5.1bが動く)のH100の結果では、vLLMで動かし、8千入力・千出力の単発のチャットの条件で、ユーザー1人あたり毎秒50トークンの設定のとき、1GPUあたり毎秒8,973トークンでした。ユーザー1人あたり毎秒200トークンを求める設定では、毎秒2,558トークンに落ちています。実行日は2026年3月27日から5月17日です。
ベンチマークのページは、費用の換算を「1GPU時間1.17ドル(大手が所有する場合)で100万トークンあたり0.036ドル、2.00ドル(小売)で0.062ドル」と書いています。前提の細かい内訳は、読んだ範囲では説明がありませんでした。
見立てです。この毎秒8,973トークンは、設定を詰めた測定の最大値に近い値だと思います。自分の仕事で、同じ量を継続して出せるとは限りません。
損益分岐:1枚のGPUを24時間借りた場合
僕らの計算です。表の「1日のトークン量」は、APIで払う金額とGPU代が等しくなる量です。「毎秒」は、それを24時間均して割った値です。
| 比べるAPI | GPU 3.99ドル/時の分岐 | 毎秒 | GPU 6.88ドル/時の分岐 | 毎秒 |
|---|---|---|---|---|
| 約0.144ドル(Haiku 5.5、Luna) | 約6.6億トークン/日 | 約7,700 | 約11.4億/日 | 約13,200 |
| 0.20ドル(Mistral Small 4、DeepSeek 空き時間) | 約4.8億/日 | 約5,500 | 約8.3億/日 | 約9,600 |
| 0.40ドル(DeepSeek ピーク) | 約2.4億/日 | 約2,800 | 約4.1億/日 | 約4,800 |
| 約2.89ドル(Sonnet 5.5、Sol) | 約3,300万/日 | 約380 | 約5,700万/日 | 約660 |
| 約5.78ドル(Opus 5.5) | 約1,660万/日 | 約190 | 約2,900万/日 | 約330 |
| 約14.44ドル(Fable 5.1、Astra) | 約660万/日 | 約77 | 約1,140万/日 | 約130 |
稼働率が下がったときの自前ホストの単価と、計算の例
稼働率ごとの単価
先のベンチマークの毎秒8,973トークンを、GPU 3.99ドル/時で24時間、フルに使い切った場合の単価は、100万トークンあたり約0.124ドルです(僕らの計算です)。稼働率が下がると、同じGPU代を少ない量で割ることになり、単価が上がります。
| 稼働率 | 3.99ドル/時 | 6.88ドル/時 |
|---|---|---|
| 100% | 約0.12ドル | 約0.21ドル |
| 50% | 約0.25ドル | 約0.43ドル |
| 25% | 約0.49ドル | 約0.85ドル |
| 10% | 約1.24ドル | 約2.13ドル |
読み方の例(見立てです)
- 稼働率25%では、3.99ドル/時で約0.49ドル。約0.144ドルの小型APIより高く、約2.89ドルの中位APIよりは安くなります。
- ただし、中位のAPIの代わりにgpt-oss-120bを使って、同じ品質になるかどうかは、この計算では分かりません。
1回の呼び出しの金額(8千入力・千出力)
僕らの計算です。Luna / Haiku 5.5は約0.0013ドル、Mistral Small 4は約0.0018ドル、Sonnet 5.5 / Solは約0.026ドル、Opus 5.5は約0.052ドル、Fable 5.1 / Astraは約0.13ドルです。
月の費用(730時間)
3.99ドル/時なら約2,913ドル、6.88ドル/時なら約5,022ドル、12.29ドル/時なら約8,972ドルです(僕らの計算です)。
見落としやすい費用
見立てです。表に出てこない費用が、分岐点を押し上げます。
- 遊んでいる時間:夜間や休日に使わなくても、借りている間は払います。
- GPUの台数:大きいモデルは1枚に載りません。gpt-oss-120bは、OpenAIの説明では80GBのGPU1枚で動きますが、もっと大きなモデルは8枚単位になり、費用が一気に8倍近くになります。
- 冗長化:止まったときの予備の機械が必要なら、費用は倍になります。
- GPU以外の費用:保存領域、ネットワーク、データの送出。Googleのページには、ディスクやイメージ、ネットワークなどの価格は別、と明記されています。Lambdaは税が別です。
- 人の手間:設定、監視、更新、障害対応、セキュリティ。金額の根拠は、読んだ資料にはありません。
- モデルの更新:新しいモデルへの入れ替えと、品質の再確認。
- 実際の設定の難しさ:vLLMのgpt-oss向けの手順書は、H100の1枚で標準の設定のままだとメモリ不足になる、と警告しています。回避策として
--gpu-memory-utilization 0.95 --max-num-batched-tokens 1024が示されています。
API側にも、見落としやすい点があります。
- 上限:DeepSeekのページには、同時リクエスト数の上限(deepseek-flashは2,500、deepseek-v4-proは500)があります。
- 価格の変動:DeepSeekは、ピークと空いている時間で2倍違い、ページに「価格を調整することがある」と書いています。
- 長い入力の割増:AnthropicのHaiku 5.5は、料金ページで、10万トークンを超える入力だと単価が上がります(入力0.50ドル、出力2.50ドル)。OpenAIのGPT-6系は、10月8日の読みでは長い入力で単価が上がるとしましたが、10月22日は確認できませんでした。
判断の基準
見立てです。
- 1日の処理量を、トークンで見積もる(呼び出し回数×1回の平均トークン数)。
- 比べたいAPIの混合単価を出し、上の式で分岐点を出す。
- 自分の量が、分岐点の半分より下なら、APIが有利になりやすい。
- 分岐点を大きく超えるなら、同じ品質を出せる別のモデルを、自分のデータで試す価値がある。
- 試すときは、品質とスループットを、本番に近い入力で測る。ベンチマークの最大値は使わない。
よくあるつまずき
- 安いAPIと、高いAPIを同じ品質と見なす:この記事の分岐点は、品質が同じという前提です。
- GPUの料金だけで比べる:運用の手間が入っていません。
- 平均のトークン量で、ピークを見落とす:昼に集中するなら、必要なGPUの台数はピークで決まります。
- キャッシュやバッチを無視してAPIを高く見積もる:Anthropicのバッチは50%引きです。同じ前置きを繰り返すなら、キャッシュの読み取りは入力単価の約0.1倍などです。
- 1枚のGPUの最大スループットを、そのまま平均と考える:最大値は、ユーザーの数や応答速度の設定で大きく変わります(InferenceXの表のとおり、毎秒50トークン/人で8,973、200トークン/人で2,558)。
気をつけること
- この記事は、実際に使って確かめた記録ではありません。分岐点は、公式の価格と公開ベンチマークから出した、僕らの計算です。
- InferenceXの数字は第三者(SemiAnalysis)のベンチマークで、公式の数字ではありません。ページは「合計トークンあたり」の費用に換算していると書いていますが、毎秒のトークン数に入力を含むかどうかは、読んだ範囲で確認できていません。
- ベンチマークの費用の換算(1.17ドル/時など)の前提の詳細は、ページで確認できませんでした。
- GPUの料金は事業者や契約で大きく違います。同じH100でも約3.1倍の差があります(別記事)。
- APIとGPUの価格は変わることがあります。使う前に、最新のページを見てください。
- gpt-oss-120bのAPI価格は、OpenAIの料金ページには載っていませんでした。この記事では、同じ品質の代わりになるかどうかを評価していません。
- 通貨は、読んだページで米ドルでした(Lambdaは通貨名の明記がなく、ドル記号のみ)。為替、日本円の価格、消費税は扱っていません。
- 品質が自社の用途に足りるかは、この記事では調べていません。
出典
- Pricing(Claude Platform Docs、Anthropic、2026年10月22日確認)
- Pricing(OpenAI API、OpenAI、2026年10月22日確認)
- Pricing(Mistral Docs、Mistral、2026年10月22日確認)
- Models & Pricing(DeepSeek API Docs、DeepSeek、2026年10月22日確認)
- Introducing gpt-oss(OpenAI、2026年10月22日確認)
- GPT-OSS recipe(vLLM Recipes、vLLMプロジェクト、2026年10月22日確認)
- Running gpt-oss-120b on H100(InferenceX、SemiAnalysis、2026年10月22日確認)
- InferenceX(SemiAnalysis、2026年10月22日確認)
- Instances pricing(Lambda、2026年10月22日確認)
- GPU Cloud Pricing(Runpod、2026年10月22日確認)
- AWS料金データ(EC2 オンデマンド、US東部 Linux、AWS、2026年10月8日確認。10月22日はp5.4xlargeを読み直せず)
- Azure Retail Prices API(Microsoft、2026年10月22日確認)
- GPU pricing(Compute Engine、Google Cloud、2026年10月22日確認)
更新履歴
- 2026年10月25日 書き方を直しました。
- 前:運営者が使っていないと読める書き方 → いま:「この記事は、実際に使って確かめた記録ではありません」。公式の資料を読んでまとめた記事で、使い心地は書いていない、という意味に直した
