3行でいうと
- ISO/IEC 42001は、AIを開発・提供・利用する組織が、AIを管理する仕組み(方針、手順、体制)を整えて回し続けるための規格です。特定のAI製品の性能や安全を認めるものではなく、組織の仕組みを見ます。
- 認証をするのはISOではなく、外部の認証機関です。日本では、認証機関を認定するISMS-ACが2026年1月14日に、AIMSの認証機関を初めて2社認定しました。審査の種類、有効期間、費用、期間は、僕らが読んだ公式ページには書かれていません。
- 規格の本文は有料で、僕らは読んでいません。そのため、準備の順序は、公式の概要から読み取れる論点(役割、リスクと影響の評価、ライフサイクル、データ、附属書Aの管理策)に沿った僕らの見立てです。
この記事では、まだ認証の手続きを行って確かめていません。この記事は、公式の概要ページを読んでまとめたものです。規格の本文は読んでいないので、条項の中身は書いていません。認証の費用や期間の数字も、公式ページに書かれていなかったため、書きません。情報は2026年10月16日に確認しました。
先に結論
- 「ISO 42001を取る」は、3つの別々のものが重なった話です。規格(ISOが作る。日本ではJISの形でも発行)、認証機関(審査して認証する機関)、認定機関(認証機関が信頼できると認める。日本ではISMS-AC)。
- 規格が求めるのは、AIそのものの出来ではなく、AIを責任をもって扱う組織の仕組みです。ISMS-ACは、ほかのマネジメントシステム規格との主な違いを4つ挙げています。AIを開発・提供・利用する組織が対象であること、AIシステムの影響評価、AIのライフサイクルの考慮、データの扱いの明確化です。
- 認証を義務とする記述は、読んだ範囲では見つかりませんでした(「ない」とは断定できません)。ISOの認証ページは、業種によっては認証が法的・契約上の要件になる、と一般論として書いています。取る必要があるかは、取引先や契約の要求から決まる話だと僕らは考えます。
前提:42001は何の規格か
ISOの概要ページによると、ISO/IEC 42001:2023は、2023年12月に発行された第1版(51ページ)で、AIマネジメントシステム(AIMS)を確立し、実施し、維持し、継続的に改善するための要求事項を定めます。ページは、これを世界初のAIマネジメントシステム規格と呼んでいます。
マネジメントシステムは、方針と目的を決め、それを達成するプロセスを回す、組織の仕組みの全体です。ISOのFAQは、AIMSを、AIを責任をもって開発・提供・利用するための方針と目的、その達成のためのプロセスを確立する、組織の相互に関連した要素の集まり、と説明しています。計画(Plan)、実行(Do)、点検(Check)、改善(Act)の循環を使い、特定のAIの応用ではなく、方針と手順に焦点を当てる、とされています。
対象は、AIを使った製品やサービスを開発、提供、利用する、あらゆる規模・業種の組織で、公的機関、企業、非営利団体を含みます。FAQは、すべてのAIシステムに適用できるか、という問いに「はい」と答えています。
ここで、僕らが確認できなかったことがあります。ISOの42001のページには、認証についての記述がありません。ページが書いているのは規格の説明で、認証の話は、次に見るISOの認証ページと、日本の認定機関のページにあります。
規格の特徴:ISMS-ACが挙げる4つの違い
日本の認定機関ISMS-ACの「AIMSとは」のページは、42001の構成は、ISO/IEC 27001(情報セキュリティ)などのマネジメントシステム規格と同様で、共通の要求事項にAI特有の対応が加わる、と説明しています。他の規格との主な違いは、次の4つです。僕らの見立てを右の列に添えます。
| ISMS-ACの説明 | 準備での意味(見立て) |
|---|---|
| 対象が、AIシステムを開発、提供、利用する組織 | 自社がどの立場かを決める。複数の立場を兼ねてもよい |
| AIシステムの影響評価(インパクトアセスメント)の実施を求める | セキュリティの評価とは別に、人や社会への影響を調べる作業が要る |
| AIのシステムライフサイクルを考慮する | 導入時だけでなく、運用・変更・廃止までの管理を考える |
| データの取り扱いを明確にする | どのデータを、どの目的で、どう扱うかの記録が要る |
ページはさらに、関係者を6つの役割に分類し、1つの組織が複数の役割を担ってよいこと、どの役割に当たるかの判断にはISO/IEC 22989(JIS X 22989)の用語と概念の理解が必要なことを書いています。また、リスクベースのやり方をとり、リスク対策の目安になる管理策を附属書Aに示す、組織が行ったリスク評価と対策を管理策と照らして、足りているかを確かめられる、と説明しています。個別の管理策の内容は、このページにはなく、僕らも読めていません。
関連する規格として、ISOはISO/IEC 23894(AIのリスク管理の手引き)を挙げています。さらに、2025年5月発行のISO/IEC 42005は、AIシステムの影響評価の手引きで、42001を補う位置づけです。個人、集団、社会への影響を、ライフサイクルを通して特定、評価、文書化する、と書かれています。
認証のしくみ:ISOは認証しない
ISOの認証ページは、ISO自身は認証をせず、証明書も発行しない、と書いています。認証は、外部の認証機関が行います。認証は独立した機関による書面の保証で、認定は、その認証機関が国際規格に従って運営されていることを、認定機関が正式に認めることです。
日本の42001の制度は、ISMS-ACの説明では、3つの機関でできています。
| 機関 | 役割 | 現状(ISMS-ACのページ) |
|---|---|---|
| 認証機関 | 組織のAIMSを基準に照らして審査し、認証する | 2026年1月14日時点で2社を認定 |
| 要員認証機関 | 要員(審査員など)の認証にかかわる機関(役割の細かい説明は、読んだ記録にありません) | ISMS-ACが認定したものは、現時点でない。審査員の教育と力量評価は各認証機関が行う |
| 認定機関(ISMS-AC) | 認証機関を認定する | 組織への認証登録はしない |
認証機関に求める追加の要求事項は、ISO/IEC 42006:2025(2025年7月発行)が定めています。ISOの概要ページによると、42006は、42001に基づく審査と認証を行う機関に向けた規格です。認証機関の一般要求であるISO/IEC 17021-1を補うもので、置き換えるものではありません。
日本の認証の基準は、JIS Q 42001:2025で、対応する国際規格は42001:2023です。ISMS-ACによると、日本産業標準調査会(JISC)が制定した国内規格で、国際規格との整合性は厳密に保たれています。認証を考える日本の組織にとっては、このJISが基準の文書になります。
初認定の2社は、ISMS-ACのお知らせによると、SGSジャパン株式会社とテュフ ラインランド ジャパン株式会社です。これは2026年1月14日時点の情報で、その後の追加は確認していません。
認証機関を選ぶとき(ISOの案内)
ISOの認証ページは、認証機関を選ぶときの注意を書いています。複数の機関を比べること、関連する国際規格(CASCOの規格)を使っているか、認定を受けているかを確かめることです。認定は必須ではなく、認定がないからといって信用できないとは限らない、とも書かれています。取得した証明書は、IAF CertSearchなどで確かめられます。
書かれていないこと
ISMS-ACの制度概要のページには、審査の種類(初回、継続、更新など)、有効期間、手順、費用、期間についての記載がありませんでした。ISMS-ACのFAQにも、AIMSに関する質問は載っていませんでした。これらは、認証機関に直接尋ねる事項だと思われますが、この記事では確認していません。
準備で何を用意するか(見立て)
ここからは僕らの見立てです。規格本文を読んでいないので、条項の順ではなく、公式の概要から読み取れる論点を、準備に向く順に並べます。実際の要求事項は、規格または認証機関に確かめてください。
| 順 | 用意するもの | 根拠 |
|---|---|---|
| 1 | 適用範囲と、自社の立場(開発、提供、利用)の整理 | ISMS-ACの説明(対象と6つの役割) |
| 2 | 使っているAIシステムの一覧(台帳)。名前、目的、使うデータ、誰が責任者か | 見立て。ライフサイクルとデータの扱いを求める点から |
| 3 | AIのリスク評価と、影響評価の方法と記録 | ISMS-ACの説明(影響評価、リスクベース)。手引きは23894と42005 |
| 4 | 附属書Aの管理策との照合表 | ISMS-ACの説明(管理策との比較)。中身は未読 |
| 5 | 方針、役割と責任、手順の文書 | マネジメントシステムの一般的な構成。規格本文は未読 |
| 6 | 運用の記録と、定期の見直し(PDCA) | ISOの説明(計画・実行・点検・改善) |
| 7 | 認証機関への相談(審査の種類、期間、費用、範囲) | 公式ページに記載がないため |
台帳づくりでは、権限の与え方や、モデル・プラグインの出所の確認が論点になります。これらは別の記事で扱っています。NISTの枠組みとの違いも、別の記事で扱っています。
ISMS(ISO/IEC 27001)をすでに持っている組織については、ISMS-ACの説明は、構成が同様であることを書いているだけで、審査の統合や免除については書いていません。そこは認証機関に尋ねる事項です。
日本の動き(ISMS-ACと関連ページの日付)
読んだページに書かれていた日付です。
| 日付 | 出来事 | 出所 |
|---|---|---|
| 2023年12月 | ISO/IEC 42001:2023 発行 | ISO |
| 2025年5月 | ISO/IEC 42005:2025(影響評価の手引き)発行 | ISO |
| 2025年7月7日 | ISO/IEC 42006:2025(認証機関への要求事項)発行 | ISO |
| 2025年7月8日 | ISMS-AC、AIMSの認証を対象とした認定を開始 | ISMS-AC |
| 2025年8月20日 | JIS Q 42001:2025 発行 | ISMS-AC |
| 2026年1月14日 | AIMS認証機関を初めて認定(2社) | ISMS-AC |
| 2026年6月24日 | ISMS-ACが、APAC AIMS MRAの署名機関として承認されたと発表(承認は6月21日付) | ISMS-AC |
6月のお知らせによると、承認は、ISO/IEC 42006に基づく認定へMRAの適用範囲を広げる申請に対するものです。ISMS-ACのAIMS認証の認定活動が、認定機関の要求事項であるISO/IEC 17011に適合していると認められた、と書かれています。同じAIMSのMRAに先に承認されていたのは、インドのNABCBとシンガポールのSACで、ISMS-ACは3番目です。MRAの詳しい定義は、このお知らせの本文にはありませんでした。
ISOの概要ページで読んだ規格の一覧
| 規格 | 内容(ISOのページの説明) | 発行 |
|---|---|---|
| ISO/IEC 42001:2023 | AIマネジメントシステムの要求事項 | 2023年12月、51ページ |
| ISO/IEC 42005:2025 | AIシステムの影響評価の手引き。42001、38507(AIガバナンス)、23894を補う | 2025年5月 |
| ISO/IEC 42006:2025 | 42001に基づく審査・認証を行う機関への要求事項。17021-1を補い、17065のスキームでも使える | 2025年7月、31ページ |
| ISO/IEC 22989 | AIの用語と概念 | (42001のFAQに記載) |
| ISO/IEC 23053 | 機械学習を使ったAIシステムの枠組み | (同上) |
| ISO/IEC 23894 | AIのリスク管理の手引き | (同上) |
42001は、ISO/IEC JTC 1/SC 42の規格として表示されていました。
気をつけること
- この記事では、認証の手続きも審査も行っていません。内容は、ISOとISMS-ACの公式ページの記載です。
- ISO/IEC 42001:2023とJIS Q 42001:2025の本文は有料で、読んでいません。条項の題名や、附属書Aの管理策の内容、要求の強さは、書いていません。ISOの閲覧用の画面は、スクリプトの都合で本文が取れませんでした。
- 準備の表は、僕らの見立てです。規格本文の順序でも、認証機関の公式の手順でもありません。
- 審査の種類、有効期間、費用、期間は、読んだ公式ページに書かれておらず、他の情報源から補っていません。数字は書きません。
- 公式ページは、WebFetchという取得の仕組みを通して読みました。この仕組みはページを要約して返すため、細部の取りこぼしがありえます。MRAの意味など、要約が推測を含んだ部分は、本文の事実だけを使いました。
- 日本の認証機関が2社という情報は、2026年1月14日付のお知らせの内容です。その後に増えている可能性があります。最新は、ISMS-ACの認証機関一覧で確認してください。
- 日付は、ページに表示されていたものを書いています。2025年8月20日のJIS発行のお知らせは、見出しだけを確認し、個別のページは読んでいません。
- 認証を取るべきか、契約で求められるかは、個別の事情で変わります。法律や契約についての助言ではありません。専門家や認証機関に相談してください。
出典
- ISO/IEC 42001:2023(ISO、10月16日確認)
- ISO/IEC 42006:2025(ISO、10月16日確認)
- ISO/IEC 42005:2025(ISO、10月16日確認)
- Certification(ISO、10月16日確認)
- AIMS適合性評価制度の概要(ISMS-AC、10月16日確認)
- AIMSとは(ISMS-AC、10月16日確認)
- AIMS認証機関の初認定(お知らせ、ISMS-AC、10月16日確認)
- APAC AIMS MRAの署名機関に(お知らせ、ISMS-AC、10月16日確認)
更新履歴
- 2026年10月25日 書き方を直しました。
- 前:運営者がやっていないと読める書き方 → いま:主語を記事にして、「この記事は、実際にやって確かめた記録ではありません」と書きました。運営者が使っているものを、使っていないと読ませないための直しで、内容や数字は変えていません。
