3行でいうと
- PPCは、2023年6月2日の注意喚起で、事業者に2点を求めています。入力する個人情報が、特定した利用目的の範囲内かを確認すること。同意なく入力した個人データが、AIの提供事業者に「応答の出力以外」の目的(機械学習など)で使われないかを確認することです。
- 確認項目は、条文に沿って「目的」「要配慮」「学習・提供先」「委託の監督」「外国」「漏えい」の6つに分けると作りやすくなります。AIの利用ごとに、1行ずつ当てはめます。
- 個人情報保護法は2026年7月17日に改正法が公布されましたが、施行は公布から2年以内で、政令や規則はまだ整っていません。確認項目には、見直しの日を入れておく必要があります。
この記事は、実際に使って確かめた記録ではありません。この記事は、PPCの文書と、e-Govの法令データを、2026年10月16日に読んでまとめたものです。法律の話ですが、助言ではありません。自社への当てはめは、専門家や所管の窓口に確認してください。「個人情報保護法と生成AI」の全体像は、別の記事で扱っています。
先に結論
- PPCの注意喚起は、短く、2つの問いに絞られています。 目的の範囲と、AIの提供事業者が学習に使わないかの確認です。確認項目の中心は、この2つになります。
- 条文は、「目的」「取得」「管理」「報告」「提供」「外国」の順で並んでいます。 AIに入れる場面を、この並びのどこに当たるかで分けると、確認項目が漏れにくくなります。
- 読めなかった部分があります。 ガイドライン(通則編)の本文と、Q&Aの回答本文は、僕らの環境では読めませんでした。「クラウドの利用は提供か委託か」という肝心の整理は、設問を見ただけです。
PPCの文書は、何を言っているか
2023年6月2日の注意喚起(PPC)。 個人の権利利益の保護と、イノベーションや生産性の向上のバランスを考える、という前置きのあと、次のように整理されています。
- 事業者は、生成AIにプロンプトとして個人情報を入れるとき、特定した利用目的の範囲内かを確認する。
- 本人の同意なく個人データを入れ、それが応答の出力以外の目的で扱われると、個人情報保護法に違反するおそれがある。入れる前に、提供事業者が機械学習に使わないことなどを確認する。
- 行政機関等にも、同じ趣旨の注意点が別に書かれている(この記事では扱いません)。
- 一般の利用者向けには、入れた個人情報が機械学習に使われ、ほかの情報と結びついて出力されうること、応答には不正確な個人情報が含まれうること、利用規約とプライバシーポリシーを読んで判断することが挙がっています。
同じ文書の別添に、PPCが2023年6月1日付で、OpenAIの2つの法人(OpenAI, L.L.C.とOpenAI OpCo, LLC)に、法147条に基づく注意喚起を出したとあります。要配慮個人情報を、本人の同意なく取得しないこと。機械学習目的の収集では、要配慮個人情報を含まないようにする取組を行い、判明したら削除や識別できない形にすること。利用目的を日本語で通知・公表すること、などです。これは、特定の事業者への注意喚起で、自社の義務を直接決める文書ではありません。ただ、「AIのサービス側に何が求められうるか」が分かります。
ガイドライン(通則編)とQ&A。 通則編は、2026年6月14日付の一部改正が表示されています。新旧対照表を読むと、改正は条文番号の基準日の更新などで、AIに関する記述は見当たりませんでした。構成は、利用目的、取得、安全管理、漏えい報告、第三者提供などの章に分かれています。ただ、僕らが読めたのは目的・定義と、第3章の目次までです。
Q&A(2025年7月1日付)は、設問の一覧から、Q1-8が「機械学習の学習済みパラメータは個人情報に当たるか」を、Q7-53が「クラウドサービスを使うとき、個人データの第三者提供か委託か」を問うものだと分かりました。回答は読めていません。
条文で確かめる:確認項目の「背骨」
PPCの注意喚起は、条文に沿った整理と読めます。e-Govの法令データで、関係する条文を読みました(前提:この記事で読んだデータが、2026年の改正を反映しているかは確認できていません)。
| 場面 | 条 | 読んだ内容(言い換え) |
|---|---|---|
| 目的 | 17条・18条 | 利用目的をできる限り特定する。原則、同意なしに、その達成に必要な範囲を超えて取り扱わない |
| 取得したとき | 21条 | 取得したら速やかに、利用目的を本人に通知か公表する |
| 要配慮情報 | 20条2項 | 要配慮個人情報は、原則、事前の同意なしに取得できない |
| 管理 | 23条 | 漏えいなどを防ぐ、必要かつ適切な安全管理措置 |
| 委託 | 25条 | 取扱いを委託するなら、委託先を必要かつ適切に監督する |
| 報告 | 26条 | 個人の権利利益を害するおそれが大きい漏えい等は、委員会へ報告し、本人にも通知する |
| 提供 | 27条 | 原則、同意なしに第三者へ提供しない。利用目的の範囲での委託は「第三者」に当たらない |
| 外国 | 28条 | 外国の第三者への提供は、原則、事前の同意。ただし、同等水準の国や、相当の措置の体制がある相手は例外 |
確認項目の作り方:4つの手順
ここからは、読んだ文書をもとにした僕らの見立てで、PPCの推奨ではありません。
1. AIの利用を、一覧にする。 「どの部署が、どのAIサービスに、どんな情報を入れているか」を行にします。契約の種類(個人向けか、法人向けか)も書きます。一覧にない利用(いわゆる私物のアカウント)は、点検の外に残ります。
2. 各行に、6つの問いを当てる。
- 目的。 入れる情報は、あらかじめ決めた利用目的の範囲に入るか。
- 要配慮。 要配慮個人情報が混じっていないか(何が当たるかは、条文とガイドラインで確かめる)。
- 学習・提供先。 AIの提供事業者は、入れた内容を応答以外(学習など)に使うか。使わない設定や契約か。
- 委託の監督。 委託と整理するなら、提供事業者を必要かつ適切に監督できる材料(契約、管理の説明)があるか。
- 外国。 提供事業者や保存先は外国か。外国の第三者への提供に当たる場合の整理は済んでいるか。
- 漏えい。 誤って送ったとき、報告と本人への通知の判断を、誰がするか。
3. 「根拠」と「確認先」の欄を作る。 各問いに、条文や注意喚起と、自社で確かめる資料(利用規約、契約書、設定画面、プライバシーポリシー)を書きます。確認先を書かないと、「たぶん大丈夫」で止まります。
4. 「判断が分かれる」行に、印を付ける。 提供か委託かの整理など、読めなかったQ&Aに関わる部分は、僕らも判断できません。印を付けて、専門家に確認する行にします。
記入の例を、3つ並べます(架空の例で、結論ではありません)。
| 利用 | 入れる情報 | 先に確かめること |
|---|---|---|
| 会議の議事録の要約 | 社内の発言、顧客名が混じることがある | 問い3(学習に使われないか)、問い1(目的の範囲)、顧客名を伏せる運用 |
| 問い合わせメールの返信の下書き | 顧客の氏名、連絡先 | 問い1、問い3、問い6(誤送信の手順) |
| 人事面談のメモの整理 | 個人の事情の詳細が含まれうる | 問い2(要配慮)が最優先。使わない、と決める選択もある |
注意喚起の2つの問いと、条文の対応
- 「入力が、特定済みの利用目的の範囲内か」は、18条(利用目的による制限)に対応します。目的の範囲を超えるなら、同意など、別の整理が要ります。
- 「提供事業者が、入れた内容を機械学習に使わないか」は、27条(第三者提供の制限)と、27条5項1号(委託は「第三者」に当たらない)の整理に関わります。PPCの注意喚起は、同意なく入れた個人データが応答以外の目的で扱われると違反のおそれがある、と述べています。この「出力以外の目的」を、入れる前に確かめる、というのが、僕らの見立てた実務上の読み方です。
- Q7-53は、クラウド全般について、提供と委託のどちらかを問う設問です。AIサービスに同じ整理が当たるかは、回答を読めていないので、僕らは判断できません。
令和8年の改正と、見直しの日
PPCのページによると、「個人情報の保護に関する法律等の一部を改正する法律」は、2026年4月7日に国会へ提出され、7月10日に成立、7月17日に公布されました。施行は、一部を除き、公布から2年以内で政令が定める日です。政令、規則、ガイドラインは未整備で、PPCの委員会には、9月16日、10月1日、10月14日に「基本的な考え方」が議題として挙がっていますが、これは議論の資料で、確定した政令ではありません。改正の中身の詳細は、僕らは読めていません。
確認項目には、「改正法の政令・規則が出たら、見直す」と書いた見直しの日を入れておくのが、現実的だと考えます。これは見立てです。
気をつけること
- ガイドライン(通則編)の本文(3-1以降)と、Q&Aの回答本文、令和8年改正法の条文は、読めていません。読めたのは、PPCの注意喚起、条文データ(17〜28条の一部)、ガイドラインのページ構成、Q&Aの設問、改正の経過のページです。
- 条文の内容は、e-Govのデータを要約ツール経由で読み、僕らが言い換えました。このデータが令和8年の改正の前か後かは確認できていません。条文で判断する前に、現行の条文を確かめてください。
- PPCの注意喚起は2023年6月のものです。その後に、生成AIに関する新しい注意喚起が出たかは確認できていません(PPCの新着情報に、AIの項目は見当たりませんでした)。
- 経済産業省と総務省の「AI事業者ガイドライン」は、取得できず読んでいません。個人情報以外(著作権、安全など)の点検も、この記事の範囲外です。
- 行政機関や自治体が使う場合は、別の規律があります。この記事では扱っていません。
- 例の表は架空で、個別の判断の結論ではありません。どのAIが「学習に使わない」かは、サービスごとの最新の規約と設定で確かめる必要があります。
- 法律の話であり、助言ではありません。
出典
- 生成AIサービスの利用に関する注意喚起等について(個人情報保護委員会、2023年6月2日、10月16日確認)
- 個人情報の保護に関する法律の条文データ(e-Gov法令API、10月16日確認)
- 個人情報保護法ガイドライン(通則編)(個人情報保護委員会、令和8年6月一部改正、10月16日確認)
- ガイドライン(通則編)新旧対照表(個人情報保護委員会、令和8年6月14日、10月16日確認)
- 個人情報保護法Q&A(個人情報保護委員会、令和7年7月1日、10月16日確認)
- 令和8年 改正個人情報保護法について(個人情報保護委員会、10月16日確認)
- 「個人情報の保護に関する法律等の一部を改正する法律」の公布について(個人情報保護委員会、2026年7月17日、10月16日確認)
更新履歴
- 2026年10月25日 書き方を直しました。
- 前:運営者が使っていないと読める書き方 → いま:「この記事は、実際に使って確かめた記録ではありません」。公式の資料を読んでまとめた記事で、使い心地は書いていない、という意味に直した
