3行でいうと
- 公式の発表は、Whisperの機能を、多言語の文字起こし、英語への翻訳、言語の識別、フレーズ単位の時刻つけ、と説明しています。
- 自分のPCで動かす場合は、
whisperコマンドに録音ファイルを渡すか、Pythonの数行で使います。言語を指定する、翻訳にする、といった指定ができます。 - APIには、ファイルの文字起こしと、ライブの文字起こしの2つがあります。専門用語のヒント(prompt、keywords)や、字幕の形式での出力などの機能がありますが、モデルごとに使える機能が違います。
- 公式のモデルカードは、そのままでは実時間向きではないこと、書かれていない文章が出ることがあること、言語や話し手によって性能が違うことを、限界として挙げています。
- 公式のAPIのガイドは、使う前に、自分の音声に近い録音(なまり、雑音、電話の音質、名前や数字)で試すよう勧めています。
この記事は、公式の資料を2026年10月23日に読んでまとめたものです。この記事は、実際に使って確かめた記録ではありません。コマンドやモデル名は、公式の表記を写しています。公式のページは要約の形で取得したため、「書かれていない」と言い切らず「読んだ範囲では見つからなかった」と書いています。精度や速さの数字は、載せていません。
先に結論
- 中心は「録音ファイル→文字」。 録音を1つ用意して、文字にする。これが公式の資料の中心で、一番確実な入口です。
- 日本語の音声は、言語を指定して日本語のまま文字にできる(READMEの例)。 他の言語から英語への翻訳もできますが、使えるモデルに条件があります。
- 字幕のような時刻つきの出力は、API側ではモデルによって違う。 公式のガイドでは、単語や区切りごとの時刻と、SRT/VTT形式の出力は、停止が告知されている
whisper-1の機能として書かれています。新しいモデルでの扱いは、読んだ範囲では確認できていません。 - 万能ではない。 書かれていない文章が混ざる、同じ語が繰り返される、といった限界を、公式が書いています。大事な用途では、人が確かめる前提で使うのが安全です(見立て)。
前提:用語をそろえる
- 文字起こし(transcription):話した言語のまま、文字にすること。
- 翻訳(translation):Whisperの機能としては、ほかの言語の音声を、英語の文字にすること。公式のREADMEは、
--task translateで英語へ翻訳する、と書いています。 - 言語の識別(language identification):音声が何語かを当てること。READMEには
whisper.detect_language()の例があります。 - タイムスタンプ:文字に付く時刻。公式の発表は「phrase-level timestamps」(フレーズ単位の時刻)を機能に挙げています。
- 30秒の窓:READMEは、
transcribe()が全体を読み込み、30秒ずつずらしながら処理する、と書いています。長い録音は、その窓の連続で処理されます。 - prompt(プロンプト):APIで、文字起こしの前に添える手がかりの文。名前や専門用語、文体を寄せるために使います。
- keywords:APIの新しいモデル(gpt-transcribe)で使える、言葉のヒント。「ヒントで、必ず出力されるわけではない」と公式にあります。
- 話者分離(diarization):誰が話したかを区別してラベルを付けること。
たとえ話:「耳のよい書記官」に、何を頼めるか
Whisperを、聞き取りの得意な書記官に見立てます。頼めるのは、録音を渡して書き起こしてもらうこと、「これは日本語です」と先に教えること(言語の指定)、外国語の録音を英語にしてもらうこと、いま何語かを当ててもらうことです。ただし、この書記官は、聞き取れなかった所を、もっともらしく補って書いてしまうことがある、と公式が認めています(ハルシネーション)。人名や数字のような大事な所は、見直す必要があります。
公式が挙げる主な機能
| 機能 | 公式に書かれていること | 公式のどこに | 確かさ |
|---|---|---|---|
| 多言語の文字起こし | 多言語の音声を、その言語の文字にする | READMEの冒頭、公式の発表 | 書かれている |
| 英語への翻訳 | 音声を英語の文字にする。turbo は翻訳向けに訓練されておらず、翻訳には medium や large を使う、とある |
README | 書かれている |
| 言語の識別 | 話されている言語を判定する | README、公式の発表 | 書かれている |
| 時刻つけ | フレーズ単位の時刻(発表)。APIでは、単語または区間ごとの時刻を verbose_json で得られる(停止が告知されている whisper-1 のみ) |
公式の発表、APIガイド | 書かれている |
| 字幕形式の出力 | SRT・VTTは、動画の字幕に使う、時刻つきの文字ファイルの形式。APIの response_format に "srt" と "vtt" がある。オープンソース側の --output_format にも srt、vtt がある(コードで確認)。ガイドは、SRT/VTTが要るなら whisper-1(廃止予定)と案内している |
APIリファレンス、Transcriptionガイド | 書かれている |
| 手がかりを渡す | prompt、keywords、languages(gpt-transcribe)。whisper-1 のpromptは224トークンまで |
APIガイド | 書かれている |
| 話者ラベル | gpt-4o-transcribe-diarize が担うが、これも停止が告知されている |
APIガイド | 書かれている |
| ファイルのストリーム出力 | stream=true で、処理中に少しずつ文字が返る(gpt-transcribe)。whisper-1 では使えない |
APIガイド | 書かれている |
| ライブの文字起こし | Realtimeのセッションで、話している間に文字が返る(gpt-live-transcribe)。単語の時刻、話者ラベル、信頼度は返さない、とある | Realtime transcriptionガイド | 書かれている |
- モデルの大きさ(tiny〜large、turbo)の選び方は、READMEの表にあります。小さいほど必要なメモリが少なく、大きいほど多い、という並びです。英語専用の
.en版は、小さいモデルほど英語では良い傾向がある、と書かれています。 - READMEは、「各言語の性能は、モデルによって違う」ことと、
large-v3とlarge-v2の言語別の表が別にあることを書いています。数字は、この記事には載せません。
公式が挙げる使い方・場面(公式のどこに書かれているか)
場面1:録音ファイルを文字にする(インタビュー、講義、打ち合わせの録音)
- 自分のPCで:
whisper audio.flac audio.mp3 audio.wav --model turboのように、複数のファイルをまとめて渡せる、とREADMEにあります。Pythonでは、whisper.load_model("turbo")で読み込み、model.transcribe("audio.mp3")を呼びます。 - APIで:
/v1/audio/transcriptionsにファイルを送ります。公式のTranscriptionガイドは、「すでにある録音には、ファイル文字起こしを使う」と案内しています。 - 場面の例(インタビューや講義など)は、公式が名指しで挙げているものではなく、僕らがあてはめた例です。公式が挙げているのは、機能の説明のほうです。
場面2:日本語の音声を、日本語のまま文字にする
- README:
whisper japanese.wav --language Japaneseが例として載っています。 - API:
languageに、ISO-639-1の言語コードを渡すと、精度と遅延が改善する、とAPIリファレンスにあります。複数の言語が混ざりそうなら、gpt-transcribeではlanguages(複数形)で候補を渡せます。 - 日本語の聞き取りの得意不得意は、読んだ範囲の公式資料には書かれていませんでした。
場面3:外国語の録音を、英語の文字にする
- README:
whisper japanese.wav --model medium --language Japanese --task translateの例があります。英語以外の言語への翻訳は、書かれていませんでした。 - APIでは、
/v1/audio/translationsはwhisper-1を使い、英語の文字だけを返します。このエンドポイントは、2027年2月26日に停止すると告知されており、移行先は「Realtime translation」(別のエンドポイントと別の仕組み)で、モデルIDを変えるだけでは移れない、と公式にあります。
場面4:専門用語や名前が多い録音を、少しでも正しく
- APIの
prompt(文体や用語の手がかり)と、gpt-transcribeのkeywords(ヒント)があります。keywordsは、形式が不正だとリクエスト全体が失敗する、と公式にあります。 - 公式のTranscriptionガイドは、なまり、背景の雑音、電話の音質、名前や数字、途切れた話し方など、実際の条件に近い音声で試し、単語の誤り率だけでなく、自分の用途で問題になる誤りを記録するよう勧めています。
場面5:字幕を付ける
- APIの
response_formatで "srt" や "vtt" を選べます。ただし、公式のガイドは、これをwhisper-1(廃止予定)の機能と位置づけています。 - オープンソース側:READMEには出力形式の一覧がなく、
whisper --helpで全オプションを見られる、とだけ書かれています。公式のコード(whisper/transcribe.py)では、--output_format(-f)の選択肢にtxt、vtt、srt、tsv、json、jsonl、allがあり、既定はallです。保存先は--output_dir(既定は今いるフォルダ)で指定します。単語ごとの時刻--word_timestampsは、ヘルプで実験的(experimental)と書かれています。
場面6:長い録音を処理する
- オープンソース側:全体を読み込んで、30秒の窓で処理します。
- API側:1ファイルは25MBまで。それを超える場合は、圧縮するか、文の途中を避けて分割する、と公式のガイドにあります。なお、公式のガイドにはPyDubという分割の例がありますが、第三者のソフトについてOpenAIは保証しない、と明記されています。
場面7:話しながら、リアルタイムに文字にする
- オープンソース側:公式のモデルカードは、そのままでは実時間向きではなく、近い実時間のアプリを作るには、開発者が作り込む必要がある、という趣旨を書いています。
- API側:Realtime transcriptionがあります。WebSocket(サーバー側)やWebRTC(ブラウザ)でつなぎ、アプリ側で音声を送り続けます。例では24kHzのPCM音声が使われています。
場面8:誰が話したかを分ける
- 公式のAPIでは、
gpt-4o-transcribe-diarizeが担当します。30秒を超える音声ではchunking_strategyが必要です。最大4人の既知の話し手に、2〜10秒の参照音声を渡せます。このモデルも停止が告知されています。オープンソースのWhisper自体に話者分離があるかは、読んだ範囲では確認できていません。
どう使うと有意義か(見立て)
ここからは公式の記述ではなく、僕らの見立てです。断定はしません。
- まず短い録音で試す。 公式も、代表的な音声で試すことを勧めています。1〜2分の録音で、固有名詞や数字の間違い方を見てから、本番に進むと安全です。
- 「下書きを作るツール」として使う。 公式が、書かれていない文章が出ることや、繰り返しの出力を限界として書いているので、出てきた文字は、そのまま確定せず、録音と見比べて直す前提が合います。
- サイズの選び方は、準備したPCに合わせる。 必要なVRAMの目安がREADMEの表にあるので、自分のPCの余裕から選ぶ形です。
気をつけること
- この記事は、実際に使って確かめた記録ではありません。公式のページを要約の形で読んだ範囲です。
- 公式のモデルカードは、限界として、書かれていない文章が出ること、言語によって性能が違うこと、アクセントや方言、性別・人種・年齢などによって性能が違うこと、同じ文が繰り返されることがあること、を挙げています。数字は載せません。
- 公式のモデルカードは、本人の同意なく撮った録音の文字起こしや、主観的な分類、判断を伴う高リスクの分野での利用について、注意や、避けるよう勧める記述をしています。会議などの録音は、同意を先に確かめてください(01も参照)。
- APIの
whisper-1、gpt-4o-transcribe、gpt-4o-mini-transcribe、gpt-4o-transcribe-diarize、/v1/audio/translationsは、2027年2月26日に停止すると告知されています。この記事の機能のうち、時刻つけや字幕出力は、その旧モデルに結びついた書き方になっています。新しいモデルでの扱いは、公式の最新の資料で確かめてください。 - オープンソースのWhisperの話者分離と、日本語の個別の性質は、読んだ範囲では確認できていません(出力形式は、上の場面5で書いたとおり、コードで確かめました)。
出典
- openai/whisper(OpenAI、GitHub、確認日 2026-10-23)
- Whisper Model Card(OpenAI、GitHub、確認日 2026-10-23)
- Introducing Whisper(OpenAI、2022年9月21日、確認日 2026-10-23)
- File transcription(OpenAI、確認日 2026-10-23)
- Transcription(OpenAI、確認日 2026-10-23)
- Realtime transcription(OpenAI、確認日 2026-10-23)
- Create transcription(API reference、OpenAI、確認日 2026-10-23)
- Deprecations(OpenAI、確認日 2026-10-23)
- gpt-transcribe モデルのページ(OpenAI、確認日 2026-10-23)