3行でいうと

  • 公式のREADMEが示す導入は、①ffmpegを入れる、②pip install -U openai-whisper を実行する、の2段です。Python本体の入れ方はREADMEには書かれていません。
  • READMEは、開発者がPython 3.9.9とPyTorch 1.10.1を使い、Python 3.8〜3.11で動く見込みと書いています。同じリポジトリの pyproject.toml は、Python 3.8以上で、3.8〜3.13を対応として挙げています(2か所で範囲が違います)。
  • モデルのファイルは、初回に openaipublic.azureedge.net から自動で取得され、既定では ~/.cache/whisper に置かれます(公式のコード whisper/__init__.py で確認)。初回は通信が必要です。
  • GPUは必須とは書かれていません。コマンドの既定の実行先は「CUDAのGPUがあればGPU、なければCPU」です(公式のコード)。モデルごとの必要VRAMの目安はREADMEの表にあります。
  • OpenAI APIを使う場合は、APIキーを作り、環境変数 OPENAI_API_KEY に入れ、pip install openai でSDKを入れます(公式のクイックスタート)。

この記事は、公式の資料を2026年10月25日に読んでまとめたものです。この記事は、実際に使って確かめた記録ではありません。手順は「公式の手順を順に並べたもの」です。公式のページは要約の形で取得したため、コマンドは、原文が崩れずに読めたものだけを「公式の写し」として載せ、読み切れなかった所は「原文で確認」と書いています。画面や表記は変わることがあるので、手元の画面と照らして読んでください。

先に結論

前提:用語をそろえる

たとえ話:「道具箱に3つ入れてから、初回だけ材料を取り寄せる」

作業台(Python)に、読み取り機(ffmpeg)と本体(openai-whisper)を置きます。本体は、初めて仕事をするときに、必要な材料(モデルのファイル)を、配布元から自分で取り寄せます。2回目からは、取り寄せ済みの材料を使います。これは、READMEとコードを読んだうえでの、この記事のたとえです。

入れる前に決めること

決めること 公式に書かれていること この記事の補足
自分のPCで動かすか、APIか どちらも公式の資料にあります(01を参照) この記事の前半はPC、最後がAPI
どのモデルを使うか READMEの表に、6種類と必要VRAMの目安 初回の取得量はモデルで変わります。サイズ(ファイルの大きさ)は、READMEには書かれていません
Pythonの版 README:3.8〜3.11で動く見込み。pyproject.toml:3.8以上、3.8〜3.13を対応と記載 新しい版を使うなら、2か所の違いを意識してください
GPUの有無 必須とは書かれていない 下の「GPUとCPU」

モデルの一覧(READMEの表)

大きさ パラメータ数 英語専用 多言語 必要なVRAMの目安 相対速度
tiny 39 M tiny.en tiny 約1 GB 約10倍
base 74 M base.en base 約1 GB 約7倍
small 244 M small.en small 約2 GB 約4倍
medium 769 M medium.en medium 約5 GB 約2倍
large 1550 M なし large 約10 GB 1倍
turbo 809 M なし turbo 約6 GB 約8倍

手順1:ffmpegを入れる(OSごと)

READMEが載せているコマンドです(原文のコードブロックを要約経由で読み、崩れはありませんでした。全文は公式READMEのSetupで確認してください)。

Ubuntu / Debian

sudo apt update && sudo apt install ffmpeg

Arch Linux

sudo pacman -S ffmpeg

macOS(Homebrew)

brew install ffmpeg

Windows(Chocolatey)

choco install ffmpeg

Windows(Scoop)

scoop install ffmpeg
ffmpeg -version

版の情報が表示されれば、ffmpegが見つかっています。「コマンドが見つからない」といった表示が出る場合は、入れ直す、またはターミナルを開き直す、が考えられます(見立て)。

手順2:Pythonを用意する

  1. READMEは、Pythonの入手方法を書いていません。Python公式など、別の資料で入れてください。
  2. 版の目安は、READMEが「開発者はPython 3.9.9とPyTorch 1.10.1で学習・開発し、Python 3.8〜3.11と最近のPyTorchで動く見込み」という趣旨です。
  3. 同じリポジトリの pyproject.toml は requires-python を「3.8以上」とし、分類(classifiers)に3.8、3.9、3.10、3.11、3.12、3.13を挙げています。
  4. 入っている版を確かめるには、ターミナルで次を打ちます(Python一般のコマンドです。Windowsでは py --version が必要な場合があるかどうかは、Whisperの公式には書かれていません)。
python --version
  1. READMEには、仮想環境(Pythonの環境を作業ごとに分ける仕組み)を使う指示は見つかりませんでした。使う・使わないは、読んだ範囲では指定されていません。

手順3:openai-whisper を入れる

  1. ターミナルを開きます。
  2. READMEの基本のコマンドを実行します(公式の写し)。
pip install -U openai-whisper
  1. 最新のコミットを入れたいときは、READMEが次のコマンドも載せています(公式の写し)。リリース版とは別の、開発中の状態が入ります。
pip install git+https://github.com/openai/whisper.git
  1. 入る依存パッケージは、pyproject.toml に、more-itertools、numba、numpy、tiktoken、torch、tqdm と、条件つきの triton(Linuxのx86_64のとき、版は2以上)があります。
  2. コマンドは、pyproject.toml で whisper という名前が whisper.transcribe:cli に割り当てられています。入った後は、ターミナルで whisper と打てば動く形です。
  3. GitHubのリリース一覧では、最新は「v20250625」で、日付は「26 Jun」と表示されています(ページに年の表示は無く、タグ名から2025年6月26日と読めます)。リリースの説明文は「Release 20250625」だけで、中身の詳細は書かれていませんでした。

入れるときのつまずき(READMEの記載)

READMEは、次の2点を載せています。

状況 READMEの案内 補足
tiktoken に、使っている環境向けのビルド済み配布物がない Rust(プログラミング言語の処理系)が要る場合がある、と書かれている Rustの入れ方の細かい手順(コマンド、PATHの設定)は、原文で確認してください。要約では全文を確かめきれていません
No module named 'setuptools_rust' というエラーが出る pip install setuptools-rust を実行する、と書かれている 公式のコマンドは pip install setuptools-rust(ハイフン)。エラー文のほうは下線(setuptools_rust)ですが、pipはこの2つを同じ名前として扱います
pip install setuptools-rust

手順4:モデルのダウンロード(初回の動き)

READMEには、モデルを別に入れる手順は見つかりませんでした。公式のコード(whisper/__init__.py の load_model)では、次の動きです。

  1. 名前(例:turbo)を渡すと、手元にファイルがあるか調べます。
  2. 無ければ、openaipublic.azureedge.net の /main/whisper/models/ の下から、ダウンロードします。
  3. 置き場所(download_root)の既定は ~/.cache/whisper です。環境変数 XDG_CACHE_HOME が設定されていれば、その下の whisper になります。
  4. ダウンロード後に、SHA256というハッシュ値で検証します。手元に同じ名前のファイルがあって、ハッシュ値が合えば再利用されます。合わなければ、警告を出して取り直します。新しく取ったファイルが合わない場合はエラー(RuntimeError)です。
  5. コマンドでは、--model_dir で置き場所を変えられます(whisper/transcribe.py の引数)。
  6. ~(ホームフォルダ)が、Windowsで具体的にどのフォルダになるかは、公式の資料には書かれていません。
やりたいこと 公式のコードから読めること
初回だけ通信したい 名前を渡して実行すれば自動で取得される
通信できない環境で使いたい load_model は、名前の代わりに「チェックポイントのファイルのパス」を渡せる分岐がある。ファイルを別のPCで用意して持ち込む形になる(具体的な入手手順は、READMEには書かれていません)
置き場所を変えたい コマンドは --model_dir、Pythonは download_root
使える名前を調べたい Pythonで whisper.available_models() を呼ぶと、名前の一覧が返る(コードの説明)

この記事の補足:available_models() は、次のように呼びます(コードの説明から、この記事で組んだ例。動作は確かめていません)。

import whisper
print(whisper.available_models())

手順5:GPUとCPU

項目 公式に書かれていること
GPUは必須か READMEに、必須とする記述は見つからなかった
実行先の既定 load_model の device も、コマンドの --device も、既定は「torch.cuda.is_available() が真ならCUDA、そうでなければCPU」
CPUで動かすと コード上、モデルがCPUにあると「FP16 is not supported on CPU; using FP32 instead」と警告し、FP32(精度の高い計算形式)に切り替えて動く
GPUがあるのにCPUで動かすと 「Performing inference on CPU when CUDA is available」という警告が出る作りです
計算形式の指定 コマンドの --fp16(既定は True)
CPUのスレッド数 コマンドの --threads(既定は0。PyTorchのCPUスレッド数を指定し、MKLやOMPの環境変数の設定より優先すると説明されています)
必要なVRAM READMEの表(上)に、モデルごとの目安
GPU用PyTorchの入れ方 READMEには書かれていません。PyTorchの公式で確認してください(この記事では読んでいません)
Apple Siliconなど、CUDA以外のGPU 読んだ範囲では、記述は見つかりませんでした

GPUが使われるかを確かめる

READMEには確かめ方がありません。公式のコード(whisper/__init__.py)が使っている判定と同じ関数を、この記事の補足として書きます(この記事で組んだ例。動作は確かめていません)。

python -c "import torch; print(torch.cuda.is_available())"

True なら、既定でGPU(CUDA)が選ばれる状況、False ならCPUです。CPUで警告を出したくない場合は、公式のオプション --fp16 False が使えます。

whisper audio.mp3 --model turbo --device cpu --fp16 False

(--device と --fp16 の名前は公式のコードの引数一覧にあります。この1行は、それを並べたこの記事の例です。)

手順6:動くかを確かめる

  1. 短い音声ファイルを1つ用意します(audio.mp3 など。READMEの例は audio.flac、audio.mp3、audio.wav です)。
  2. ターミナルで、そのファイルのある場所に移り、READMEの例に合わせて実行します。
whisper audio.mp3 --model turbo
  1. 初回は、モデルのダウンロードが入ります(手順4)。終わると、文字起こしが始まります。
  2. 実行中は、既定(--verbose が True)で、進行状況と文字が表示されます。
  3. 終わると、出力ファイルが --output_dir(既定は今いるフォルダ .)に書かれます。--output_format の既定は all で、txt、vtt、srt、tsv、json などが、全部書かれる設定です(jsonl も選択肢にあります)。
  4. 出力ファイルの名前の決まり方は、公式のコード whisper/utils.py を今回の取得で読めなかったため、書けません。実行後に、出力先のフォルダで確認してください。
  5. オプションの全体は、READMEに「whisper --help」とあります。
whisper --help
  1. Pythonから動かして確かめる場合は、READMEの例です(公式の写し)。
import whisper

model = whisper.load_model("turbo")
result = model.transcribe("audio.mp3")
print(result["text"])

使い方の続きは、06で場面ごとに並べます。

つまずき表

症状 考えられる原因(公式の記述から) 確かめること
whisper というコマンドが見つからない pip install が別のPythonに入った、またはまだ入っていない(見立て) pip install -U openai-whisper を、使いたいPythonで実行したか。README以外の説明は、この記事では確認していません
音声を読み込めない(Failed to load audio: に続くメッセージ) 公式のコード(whisper/audio.py)は、ffmpegの実行が失敗すると、このメッセージで例外を出す作り ffmpegが入っているか、ffmpeg -version で確認。ファイル自体が壊れていないか。ffmpegがPATHに無い場合の例外の種類は、コードからは確認できていません
No module named 'setuptools_rust' READMEに、この対処が載っている pip install setuptools-rust
tiktoken の入れ方で止まる READMEが、Rustが必要な場合があると書いている Rustの入れ方を、READMEの原文で確認
初回にとても時間がかかる/途中で止まる モデルのファイルを、配布元からダウンロードしている(コード) ネットワークがつながっているか。ダウンロード先 ~/.cache/whisper に、ファイルができているか
「FP16 is not supported on CPU; using FP32 instead」と出る CPUで動いているため、自動でFP32に切り替えた(コードの警告) 警告であり、動きは続く作り。気になる場合は --fp16 False
GPUがあるのに遅い、CPUで動いている気がする 既定の実行先は、torch.cuda.is_available() の結果で決まる python -c "import torch; print(torch.cuda.is_available())"。False なら、PyTorchがGPUを使えない状態(GPU用PyTorchの入れ方は、PyTorchの公式で確認)
メモリ(VRAM)が足りない モデルごとに必要量の目安がある(README) より小さいモデルの名前に変える
新しい版のPython(3.12、3.13)で入れられない/警告が出る READMEは3.8〜3.11の見込み、pyproject.toml は3.13まで挙げている 公式の2か所で範囲が違うので、README側の範囲の版を試す、などが考えられます(見立て)

外し方(アンインストール)

OpenAI APIで使う場合の準備(公式のクイックスタート)

自分のPCで動かさず、APIに音声を送る場合の準備です。使い方は06、つなぎ方は07にあります。

  1. ダッシュボードの https://platform.openai.com/api-keys で、APIキーを作る(クイックスタートの案内)。画面の細かい操作(ボタンの名前など)は、今回読んだ範囲では確認できていません。
  2. 環境変数 OPENAI_API_KEY に入れる。SDKはこの環境変数を自動で読む、と書かれています(公式の写し)。

macOS / Linux

export OPENAI_API_KEY="your_api_key_here"

Windows(PowerShell)

setx OPENAI_API_KEY "your_api_key_here"

your_api_key_here は置き換え用の文字です。実際のキーは、人に見せる場所や、公開するファイルに書かないでください。クイックスタートは、キーを「安全な場所に保管する」ことと、.zshrc などのファイルに書く例を挙げています。setx で設定した値が、すでに開いているターミナルにも反映されるかどうかは、公式のページには書かれていません(開き直す必要があるかは、確認できていません)。

  1. SDKを入れる(公式の写し)。
pip install openai

JavaScriptなら npm install openai です。

  1. 呼び出し例は、06に載せています。
  2. APIの料金・保存・停止の予定は、01と04に整理しています。文字起こしの旧モデル(whisper-1 を含む)は、公式の「Deprecations」で、2026年8月26日に告知され、2027年2月26日に停止予定と書かれています。

気をつけること

出典