3行でいうと

  • 声を文字にする仕事は「音声認識」、文字を声にする仕事は「音声合成」と呼ばれます。向きが逆の、別の仕事です。ChatGPTの音声会話は、この2つを組み合わせて使う場面があると、公式のヘルプから読み取れます。
  • 聞き取りの正確さは、録音の質や言語の設定で変わります。公式の文書も、質の悪い録音で認識できないことが多い、と書いています。文字にしたものは、人が確かめる前提です。
  • 読み上げの機能を使うときは、聞く人に「これはAIの声です」と伝えるよう、OpenAIの規約が求めています。

この記事は、公式の文書を読んでまとめたものです。この記事は、実際に使って確かめた記録ではありません。たとえ話と、「見立てです。」で始まる段落は僕らの考えで、公式の文書に書かれていることとは分けて書きました。

先に結論

  1. 音声認識(ASR)は、声を文字にする仕事です。 録音した声から文字起こしを作ります。OpenAI、Google、AWSのどれにも、この機能の説明があります。
  2. 音声合成(TTS)は、文字を声にする仕事です。 OpenAIの説明は、ブログ記事の朗読や、いろいろな言語での音声づくりを例に挙げています。AWSのAmazon Pollyも、文字を自然な声に変えるサービスです。
  3. どちらも、人が確かめる作業は残ります。 聞き取りの誤りは、公式のヘルプにも書かれています。読み上げの読み間違いについては、今回読んだ資料に記述はありません。ただ、確かめる習慣は役に立つと、僕らは考えます。
  4. AIの声を使うときは、「AIの声」と分かるようにします。 OpenAIの規約は、これを求めています。

たとえ話:議事録係と、朗読者

僕らのたとえです。公式の文書にあるものではありません。

音声認識は、会議で話を聞いて書き留める議事録係です。耳が仕事道具で、出てくるのは紙のメモです。音声合成は、原稿を声に出して読む朗読者です。口が仕事道具で、出てくるのは声です。

2人は同じ「音声」の仕事をしていますが、得意なことは違うはずです。議事録係は、聞き取りにくい声や、人が重なって話す場面で間違えやすい(この点はChatGPT Voiceのヘルプにも書かれています)。朗読者は、読み方に迷う名前や数字で読み間違えやすいだろう、というのは僕らの想像です。どちらの仕事も、できあがりを人が見直すと安心です。

ChatGPTの音声会話は、この2人が組んで動いているように見えます。OpenAIのヘルプによると、「Standard」というモードは、先に話した声を文字にしてから返事を作ります。声を文字にする仕事が、最初にあるわけです。ただ、「Live」というモードの内部の作りは、ヘルプには書かれていません。

声を文字にする(音声認識)

何をしているのか

OpenAIが公開している聞き取りのモデル「Whisper」の説明ページによると、Whisperは、インターネットから集めた68万時間分の音声と文字のデータで学んだ、とのことです。学習データの約3分の1は英語以外の言語だそうです。アクセントや雑音、専門用語にも強くなる、と書いています。一方で、特定の聞き取りの試験(LibriSpeech)では、その試験に特化したモデルには勝てない、とも書いています。

AWSのAmazon Transcribeのページは、音声認識のサービスを、「リアルタイム」と「ファイルをまとめて処理」の2つの使い方で説明しています。複数の話者の声を分けて扱えることと、個人情報の編集(PII redaction)が追加料金の機能であることにも、短く触れています。

正確さを左右するもの

Googleの音声認識(Speech-to-Text)の文書は、認識できないことの多くは、録音の質が非常に悪いのが原因、と書いています。録音の設定が実際の音声と合っていないと、認識できないことがあります。使う言語の指定が実際の話と合っていないと、同じ問題が起こります。

OpenAIの案内も、言語によって正確さが違う、と書いています。専門用語などを「ヒント」として渡せますが、ヒントのせいで、話していない言葉が文字に出ることがある、という注意も書かれています。

見立てです。この種の文書が口をそろえて書いているのは、「入力の音が悪いと、結果も悪い」ということです。マイクに近づく、静かな場所で話す、といった基本が、そのまま効くのだと思います。ただし、距離や場所についての具体的な数字は、今回読んだ資料には見つかりませんでした。

文字を声にする(音声合成)

OpenAIの読み上げの案内によると、文字と、声の種類を指定すると、話し声の音声ができます。用意された声が複数あります。話し方の調子を、言葉で頼める新しいモデルもある、と書かれています。出力の形式は、一般的なMP3やWAVなどから選べます。

AWSのAmazon Pollyの案内は、読み上げの用途として、ニュースを読むアプリ、ゲーム、学習サービス、目の不自由な人向けのアクセシビリティ、IoT機器を挙げています。使った分だけ払う料金で、作った音声を保存して再生しても追加の料金はかからない、とも書かれています。

AIの声を使うときの決まり

OpenAIの読み上げの案内は、聞く人にその声がAIで作られたもので、人間の声ではないことを、はっきり伝えるよう求めています(規約による要求と書かれています)。

また、OpenAIは、自分の声の録音を使って「自分の声」を作る機能について、承認された声だけが使える仕組みで、本人の同意の録音と、それに対応する音声の見本が必要だと書いています。これ以上の条件は、読んだ範囲では確認できていません。

さらに、OpenAIのヘルプには、対応するOpenAI生成の音声には、人の耳には聞こえない透かしが音声そのものに埋め込まれている、と書かれています(対象は製品・モデル・作成時期で変わるとも書かれています)。音声の透かしがSynthIDという名前で書かれているかは、再取得では確認できませんでした。どの機能が対象かの細かい一覧は、読んだ範囲では確認できていません。また、とても短い音声や、大きく加工された音声では、印が見つからないことがある、とも注意しています。

誤解されやすい点

「声の返事は、文字より正確」ではありません。 ChatGPT Voiceのヘルプは、通話後に残る文字の記録が、実際に話した内容と違うことがある、と書いています。日付、時刻、場所に関わる質問は、確かめるようにも書いています。

「声で聞き取れる=どんな言語でも同じ精度」ではありません。 OpenAIの案内は、言語によって正確さが違うと書いています。

「読み上げ=人間のナレーションと同じ」とも限りません。 読み上げの声は英語に最適化されている、と案内に書かれています。日本語など、ほかの言語の仕上がりは、使う前に確かめる必要があります。

今日からできること、やってはいけないこと

今日からできること(僕らの提案です)

  1. 短い録音(1分ほど)を、静かな部屋でマイクに近づいて作る。ふだん使っているアプリの文字起こしにかけて、元の話と見比べる。名前や数字が間違っていないか、とくに見る。
  2. 短い文章を読み上げさせて、耳で聞く。読み間違い(名前、数字、略語)の場所をメモする。使う前の確認になる。
  3. 音声のやり取りが残る設定があるか、使うサービスの設定画面で確かめる。ChatGPT Voiceのヘルプによると、LiveとAdvancedの音声は、文字の記録とあわせて30日間保存され、Standardは文字にしたあとで音声が消えます。

やってはいけないこと

公式ページに書かれている数字(2026年10月16日に確認)
項目 公式ページの内容 出どころ
ファイルの大きさ OpenAIの聞き取りAPIは、1回25MBまで。形式はmp3、mp4、mpeg、mpga、m4a、wav、webm OpenAIの案内
録音の設定 Googleは、音声を16,000Hzで録るのを勧めている。低いと正確さが落ち、高くても大きな効果はないと書く Googleの文書
1回の長さ Googleの音声認識は、すぐ結果が返る方式で1分まで、後から受け取る方式で最大480分 Googleの文書
読み上げの声 OpenAIの案内には、用意された声が13種類並んでいる。ただし同じページの冒頭には11種類とあり、食い違い OpenAIの案内
対応言語の数 OpenAIの聞き取りの案内では、Whisperは98言語。読み上げの案内では、対応は57言語(Whisperに合わせる)とある。ページごとに数字が違う OpenAIの案内

数字は、モデルやサービスの更新で変わります。使う前に、最新の公式ページを見てください。モデルの名前も、この記事では書きませんでした。名前は変わりやすく、記事の寿命より短いことがあるためです。

気をつけること

出典

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