3行でいうと
- 厚生労働省の資料は、顧客からの意見や苦情を、サービス改善につながる大事な情報とし、一律に問題視しないよう求めています。苦情とカスハラは別物で、判断には3つの要素があります。
- 同じ資料は、初期対応で、謝る範囲を事実に限り、事実を確認できるまで自社の非を認める発言は控える、としています。AIには「言い回し」を頼み、「何を認めるか」「何を約束するか」は人が決めるのが、読んだ資料に合う使い方です。
- 苦情の文を貼る前に、お客様の名前、住所、注文番号などは伏せます。入力した個人情報は、機械学習に使われることがあります。
この記事は、公式の文書を読んでまとめたもので、実際に使って確かめた記録ではありません。例文は僕らが作ったものです。法律の話は資料の紹介で、助言ではありません。個別の判断は、専門家や公的な窓口に相談してください。
先に結論
読んだ範囲で言えることは、4つです。
- 苦情は、すぐに「困った客」と決めつけない。 厚生労働省の「カスタマーハラスメント対策企業マニュアル」は、正当な申入れを、事実確認の前にカスハラと決めつけることを避けるよう書いています。
- AIに頼むのは、言い回しです。 事実を渡して「丁寧に、短く」と頼みます。謝る範囲や、返金・交換などの約束は、自分(や会社)で決めて、文に書き込みます。
- 貼る前に、伏せる。 お客様の名前や連絡先は、AIに送る必要がありません。
- ひどい言動は、ひとりで抱えない。 暴言や脅しのような場合は、AIで文面を磨くより、上司や周りに引き継ぐほうが先です。
たとえ話:清書係に、下書きを渡す
僕らのたとえです。公式の文書にあるものではありません。
AIは、言葉遣いを整える清書係です。「こういう事情で、こう伝えたい」というメモを渡すと、やわらかい文面に直してくれます。ただし清書係は、お店の事情を知りません。返金してよいのか、いつまでに届けられるのかは、窓口の人しか決められません。清書係に「いい感じに謝っておいて」とだけ頼むと、お店が約束していないことまで、気持ちよく書いてしまうかもしれません。
メモに「何を認め、何を約束するか」を書くのは、窓口の人の役目です。
「苦情」と「カスハラ」は、どう違うのか
厚生労働省の「あかるい職場応援団」のページによると、職場のカスハラは、次の3つをすべて満たすものです。
| 要素 | 内容(言い換え) |
|---|---|
| ①だれの言動か | 顧客、取引の相手方、施設の利用者など、事業に関係する者の言動 |
| ②程度 | 社会通念上、許される範囲を超えている。言い分の中身か、伝え方(手段・態様)の、どちらか一方だけでも当たり得る |
| ③働く人への影響 | 働く人が身体的・精神的な苦痛を受けて、働くうえで看過できない支障が出ている |
許される範囲の苦情は「正当な申入れ」で、カスハラではありません。判断では、目的、経緯、業種、回数や続き方などを総合的に見るとあり、お店側や働く人の対応が悪かったことが原因の場合もある、とも書かれています。
カスハラに当たり得る例として、暴行、脅迫、侮辱、暴言、長時間の居座りや電話での拘束、同じ質問の執拗な繰り返し、SNSへの悪評の投稿をほのめかすこと、などが挙がっています。電話やSNSなど、インターネット上の言動も対象です。
返信づくりの基本の流れ
企業マニュアルが示す対応の基本を、返信の作業に重ねた、僕らの整理です。
- 聞く・読む。 マニュアルは、話を遮らず最後まで聞くこと、不明な点は確認することを書いています。メールなら、最後まで読んで、何に怒っているのかを一文にします。
- 事実を並べる。 マニュアルは、起きたことを時系列で整理し、お客様が何を求めているかをつかむよう書いています。
- 謝る範囲を決める。 マニュアルは、謝罪は対象となる事実を限定して行い、事実関係が確認できるまで、自社の非を認める発言は控えるとしています。たとえば「お届けが遅れて、ご不便をおかけしたこと」は謝るが、原因が当社にあるとはまだ書かない、という形です。
- 求めを確かめる。 マニュアルは、お客様の主張に根拠や因果関係があるかを確かめるよう書いています。すぐに答えが出ないときは、いったん預かって、後日回答する方法もある、とあります。
- 記録する。 マニュアルは、日時、対応した人、要望の内容、結果などを時系列で残すよう書いています。
AIが役に立つのは、おもに3から先の「書く」ところです。
AIへの頼み方:事実・謝る範囲・約束しないこと
AIへの頼み方は、各社の指南に共通する点があります。Anthropicは、背景や理由を添え、出力の形式を具体的に書くよう勧め、事情を知らない同僚に見せて分かる文章かを確かめるよう書いています。OpenAIのヘルプは、口調を「丁寧」「親しみやすい」といった形容詞で示せること、最初の返事を見て言い回しを直していくことを書いています。Googleの案内は、役割・作業・背景・形式の4つを挙げ、できた文を、わかりやすさ・関連・正確さの面から見直してから使うよう書いています。
僕らの例です(公式のものではありません)。
【頼みごと】お客様への返信メールの下書きを作ってください。
【状況】注文の商品が、予定日より3日遅れて届いた。お客様は「約束が違う」と怒っている。
【謝ること】お届けが遅れて、ご不便をおかけしたこと
【書かないこと】遅れの原因の断定、返金や割引の約束(これは上司に確認してから、私が書き足します)
【書くこと】今後の連絡先、確認して改めて連絡する旨
【形式】丁寧で、落ち着いた口調。8行以内。
出てきた文は、次の点を自分の目で見ます。
- 「当社の不手際で」など、まだ認めていないことが書かれていないか。
- 返金、交換、期日などの約束が、勝手に足されていないか。
- 日付、金額、商品名が、事実と合っているか。AIの答えには、不正確な内容が混ざることがあります。
貼る前に、伏せる
苦情の文面には、お客様の名前、住所、電話番号、注文番号などが入っていることが多いです。個人情報保護委員会の注意喚起(2023年6月2日)は、入力した個人情報が機械学習に使われることがあること、サービスの利用規約とプライバシーポリシーを確認して、入れる内容に応じて判断することを書いています。
僕らの整理です。苦情の文を貼るなら、名前は「お客様」、注文番号は「(番号)」に置き換えます。クレーム対応は、そもそも事実と対応方針だけをAIに渡せば足ります。設定や保存期間は、同じ連載の個人情報の記事に書きました。
SNSの返信は、公開の場の言葉
SNSの返信は、他の人にも読まれます。僕らの見立てです。短く、事実と、連絡できる窓口だけを書くほうが、長い弁明より安全だと思います。AIに書かせるときも、「感情的な言葉を使わない」「相手を責めない」と頼み、お店の考えや約束にならないか、送る前に読み返します。
マニュアルは、悪評の投稿をほのめかして脅すことや、働く人のプライバシー情報の投稿を、カスハラの典型的な手段として挙げています。名誉毀損などの投稿への対応としては、処罰を求めるなら警察、損害賠償を求めるなら発信者情報の開示を受けて請求する、削除は法務局などに相談する、という流れが示されています。ただし、これは資料の紹介で、助言ではありません。個別のケースは、専門家に相談してください。
今日からできること、やってはいけないこと
今日からできること
- 苦情を読んだら、まず、事実を3行のメモにする(いつ、何が、お客様は何を求めているか)。
- 謝る範囲と、まだ決められないことを、メモに書いてから頼む。
- 出てきた文から、認めていないこと、約束していないことが書かれていないかを探す。
- 返金や賠償の話が出たら、自分だけで決めず、上司や責任者に確認する。
- 対応した日時と内容は、メモに残す。
やってはいけないこと
- お客様の名前、住所、電話番号を、そのままAIに貼る。
- 事実を確かめる前に、「当社の責任です」と認める文を送る。
- AIが足した返金や期日の約束を、確かめずに送る。
- 暴言や脅しに、ひとりで返信し続ける。
誤解されやすい点
「怒っている客は、カスハラ」 そうではありません。資料は、許される範囲の苦情は正当な申入れだとし、一律に問題視しないよう求めています。厳しい口調でも、中身が正当な場合があります。
「AIに謝らせれば、丸く収まる」 謝る範囲は、事実が確認できてからです。AIは、お店の事情を知りません。どこまで認めるかを決めるのは、人です。
「個人事業だから、関係ない」 カスハラ対策は、働く人を守るため、事業主に義務づけられた措置が中心です。ひとりで営む場合や、小さな事業にどう当てはまるかは、読んだ資料では確かめられませんでした。
カスハラ対策の義務化(2026年10月1日)
- 厚生労働省のページによると、改正法(令和7年法律第63号、令和7年6月11日公布)により、カスハラの防止措置が事業主の義務になり、施行日は令和8年10月1日です。指針は令和8年2月26日に公布されました。
- 指針が示す事業主の措置は、方針の明確化と周知、相談体制の整備、起きたあとの迅速で適切な対応(事実確認、被害者への配慮、再発防止)、悪質な言動への抑止措置(警告文の発出、出入りの禁止などの対処方針)、相談者のプライバシー保護と不利益取扱いの禁止、の5つです。
- 企業マニュアルは、対処の方針を決めておくことを求め、時間の目安を例に挙げています(例:話が進まない状態になってから30分程度を超えたら、お引き取りを願う、または電話を切る。30分は一例で、各社が決めるとされています)。マニュアルは令和8年度内に再改訂される予定で、一部の章は未記載です。
- どれも、働く人を守るための仕組みの話です。お客様への返信の書き方そのものを決めた資料ではありません。
気をつけること
- 数字、日付、制度は、2026年10月16日に読み、10月22日に読み直した公式ページのものです。マニュアルは令和8年度内に再改訂される予定と書かれており、内容が変わる可能性があります。
- WebFetchは、ページの要約を返します。原文のそのままの引用はせず、言い換えて書きました。指針とマニュアルの細部は、原文で確かめていません。
- 厚生労働省のQ&A、リーフレット、業種別のマニュアル、自治体の条例は、読めていません。
- クレームの返信に特化したAI各社の公式の案内は、読んだ範囲では見つかりませんでした。頼み方は、一般的な頼み方の指南を、僕らがこの場面に当てはめたものです。
- この記事は、AIで返信文を作って確かめた記録ではありません。例文、「清書係」のたとえ、SNS返信への見立ては、僕らの考えです。
- 法律や契約の個別の判断は、弁護士や公的な相談窓口に相談してください。
出典
- カスタマーハラスメント(厚生労働省 あかるい職場応援団、2026年10月22日確認)
- カスタマーハラスメント・求職者等セクハラ対策(厚生労働省、2026年10月22日確認)
- カスタマーハラスメント対策企業マニュアル(厚生労働省、令和8年度改訂版、2026年10月22日確認)
- カスハラ防止指針(令和8年厚生労働省告示第51号)(厚生労働省、2026年10月22日確認)
- 生成AIサービスの利用に関する注意喚起(個人情報保護委員会、令和5年6月2日、2026年10月22日確認)
- Prompting best practices(Claude Platform Docs、Anthropic、2026年10月22日確認)
- Prompt engineering best practices for ChatGPT(OpenAI Help Center、2026年10月22日確認)
- Writing effective AI prompts(Google Workspace、2026年10月22日確認)
更新履歴
-
2026年10月25日 書き方を直しました。
- 前:運営者が使っていないと読める書き方 → いま:「この記事は、実際に使って確かめた記録ではありません」。公式の資料を読んでまとめた記事で、使い心地は書いていない、という意味に直した
-
2026年10月22日 公式の資料を読み直しました。書いてあることに変わりはありませんでした。
