3行でいうと
- iPhoneはFoundation Models(Apple内蔵モデル)、AndroidはGemini Nano(AICore経由)が公式の入口です。
- Appleの内蔵モデルは、1回の会話で扱える長さが4,096トークンです。長い文章には向きません。
- Googleの公開アプリ「AI Edge Gallery」は、AndroidとiOSで、オープンなモデルを端末内で動かせます。ベータ版です。
- Gemma 4のスマホ向け版は、公式表で約1.1GB(E2B)と約2.5GB(E4B)のメモリが目安です。
この記事は、実際に使って確かめた記録ではありません。この記事は公式の文書や論文を読んでまとめたものです。機種ごとの速さや電池の減り方は、読んだ資料に数字がなかったので、書きません。
先に結論
見立てです。「スマホでローカルのAIを試したい」だけなら、次の順で足りると考えています。
- まず、端末に入っているAIの機能(Apple Intelligence、Gemini Nanoを使うアプリ)を使う。
- 好きなモデルを動かしたいなら、公式の公開アプリ(AI Edge Gallery)から始める。
- 自分でアプリを作る人は、Appleなら Foundation Models か Core AI、GoogleならML Kit GenAI か LiteRT-LM を見る。
パソコンのように、何でも入れて自由に動かす世界とは違います。端末の中のAIは、限られた大きさと、機種の条件の中で動きます。
前提:用語
- オンデバイスAI:クラウドに送らず、端末の中だけで答えを作るAI。
- コンテキストウィンドウ:AIが一度に覚えておける、会話と資料の長さ。単位はトークン(文字の断片)です。
- Private Cloud Compute:Appleのクラウド側の処理の仕組み。端末で足りない処理を、Appleのサーバーに任せます。
道1:Appleの公式(iPhone、iPad、Mac)
Foundation Modelsフレームワーク
Appleの開発者文書によると、Foundation Modelsフレームワークは、Apple Intelligenceを支える、端末内のモデルを、アプリから使うためのものです。使えるのは、Apple Intelligenceに対応した機種です。Appleの公式ページ(10月22日に読み直し)では、対応機種は、iPhone 15 Pro以降のiPhone(iPhone 16シリーズ、iPhone 17シリーズ、iPhone Airなど)、M1以降のiPadとMac、iPad mini(A17 Pro)、MacBook Neo(A18 Pro)などです。日本語も、対応言語に入っています。
文書は、端末内のモデルの得意なことと、苦手なことを分けています。
| 得意(文書の例) | 避けたほうがよい(文書の例) |
|---|---|
| 要約、固有名詞の抜き出し、文章の手直し、分類、タグ付け、ゲームの会話 | 簡単な計算、コードの生成、論理的な推論 |
また、端末内のモデルの会話の長さは、4,096トークンと書かれています。日本語などでは、1トークンがおよそ1文字だとも書かれています。僕らの計算です。4,096トークンは、日本語で数千字までで、指示や答えの分も含みます。長い資料を丸ごと渡すのは、この仕組みでは難しいと考えます。上限を超えると、エラーになります。
より深い推論や長い文脈が必要なとき、文書はPrivate Cloud Computeや外部のサーバーのモデルに切り替える道を案内しています。この場合、端末の外で処理されます。
自分のモデルを動かす道
Appleには、他にも公式の道があります。
- Core AI:自分のモデルを、Appleのチップ(CPU、GPU、Neural Engine)で動かすフレームワーク。モデルを
.aimodel形式に変換する道具が付いています。文書の対応OSは27以降です。 - Core ML:従来からの機械学習のフレームワーク。端末の中だけで動かせば、通信が要らず、データを守りやすい、と文書にあります。最新の構造のモデルを使うときはCore AIを見るよう、文書に案内もあります。
- MLX Swift LM:MLXの公式リポジトリにある、LLMを動かすSwiftのパッケージ。
これらは、アプリを作る人向けです。
道2:Googleの公式(Android)
Gemini NanoとML Kit GenAI
Androidの開発者文書によると、Gemini Nanoは、Googleの端末内のモデルで、AICore(Androidのシステムの機能)の中で動きます。文書は、AICoreが入力や出力の記録を保存せず、インターネットに直接つながらないと書いています。モデルのダウンロードなどは、別の仕組み(Private Compute Services)を経由します。
アプリからは、ML Kit GenAI APIで使います。ML Kitの文書に出ている機能は次のとおりです。
| 機能 | 状態(文書の表記) |
|---|---|
| 要約 | Beta |
| 校正 | Beta |
| 書き換え | Beta |
| 画像の説明 | Beta |
| 音声認識 | Alpha |
| Prompt API(自由な指示) | Beta |
対応機種は、Google、Samsung、Xiaomi、OPPO、vivo、OnePlusなどの、一覧にある機種に限られます。Prompt APIは、Gemini Nanoの3つの段階(nano-v2、nano-v3、nano-v4)ごとに、機種の一覧が違い、新しい段階ほど対応機種が少ない、とあります。
文書に書かれた制約です。
- アプリが画面の最前面にあるときだけ、推論できる。背景では動かない。
- アプリごとの利用量の上限があり、超えるとエラーになる。
- Geminiのバージョンによって、同じ指示でも出力が違うことがある。
自分のモデルを動かす道:LiteRT-LM
LiteRT-LMは、Googleの、端末でLLMを動かす部品です。公式の概要によると、CPUはAndroid、iOS、macOS、Windows、Linuxなどで、GPUはAndroid、iOSなどで動きます。NPU(AI専用の回路)はAndroidが対応しています。Windowsの欄には印(ロケットのマーク)が付いていますが、ページに凡例がなく、プレビューかどうかは確認できていません。対応モデルには、Gemma 4のE2BとE4B、Gemma 3n、Gemma 3 1Bなどが挙がっています。言語ごとの状態は、Kotlin、Python、C++が安定版で、Swiftは早期プレビューです。
道3:公開アプリ「Google AI Edge Gallery」
GoogleのGitHubのREADMEによると、AI Edge Galleryは、オープンなモデルを端末内で動かす実験用のアプリです。Google PlayとApp Storeにあり、動作の条件は、Android 12以降、iOS 17以降です。READMEは、これを「実験的なベータ版」と呼んでいます。
READMEに書かれている機能には、チャット(考えるモードつき)、画像への質問、音声の文字起こしと翻訳、プロンプトを試す画面、モデルの管理と性能測定、Wikipedia検索などの「エージェント用のスキル」があります。macOS向けのダウンロードも案内されています(最低OSの記載は見つけられませんでした)。モデルは、Hugging Faceと連携して探してダウンロードし、自分のモデルを読み込むこともできます。READMEには「推論はすべて端末の中で行われ、インターネットは要らない」とあります。ただし、モデルのダウンロードには通信が要ります(Hugging Faceと連携、とあるため。ダウンロード時に何が送られるかは、読んだ範囲では確認できていません)。
スマホ向けモデルの大きさ(Gemma 4の公式表)
Googleの公式ページ(Gemma 4の推論メモリ)の表です。読み込みに必要なメモリの目安で、20%の余裕を含みます。スマホ向けは、LiteRT-LMを使います。ページには「推論の道具や環境で変わる」と注意があります。
| モデル | BF16 | 8ビット | 4ビット | スマホ向け | スマホ向け(テキストのみ) |
|---|---|---|---|---|---|
| Gemma 4 E2B | 11.4GB | 5.7GB | 2.9GB | 1.1GB | 0.84GB |
| Gemma 4 E4B | 17.9GB | 8.9GB | 4.5GB | 2.5GB | 2.2GB |
「E」は「実効パラメータ」の意味です。モデルカードによると、E2Bの実効パラメータは23億、埋め込みを含めた全体は51億。E4Bは、実効が45億、全体が80億です。文脈の長さは、どちらも128Kトークンです。公式ページは、スマホ向けの重みは、モバイル向けに最適化された版(qat-mobile)を使う、とも説明しています。
ここで書かれているのは、モデルを読み込むメモリの目安です。会話が長くなったときの記憶の分や、アプリ自体の分は、別に要ります。この表では、スマホの総メモリ(RAM)にどれだけ余裕があれば動くのかは、分かりません。
Appleの内蔵モデルについては、2025年の技術報告が、約30億パラメータで、2ビットの量子化を意識した学習をしたと述べています。
3つの道の比べ方
| Apple内蔵(Foundation Models) | Google内蔵(Gemini Nano) | AI Edge Gallery | |
|---|---|---|---|
| 誰が使う | アプリを作る人 | アプリを作る人 | 誰でも(ベータ版アプリ) |
| モデル | Appleの内蔵モデル | Gemini Nano | 選べる(Gemma 4など) |
| 機種の条件 | Apple Intelligence対応機種 | 対応機種の一覧 | Android 12以降、iOS 17以降 |
| 会話の長さ | 4,096トークン | モデル全体の値は確認できませんでした(要約APIの入力は4,000トークン未満と書かれています) | モデルによる |
| 注意 | 苦手な作業が文書に明記 | 前面のみ、利用量の上限 | 実験的なベータ版 |
見立てです。パソコン向けの記事のように、「自分で好きなモデルを選んで、長い資料を読ませる」用途は、いまのスマホでは、公式の条件の範囲では、控えめに考えるほうが無難です。短い文章の手直し、要約、音声の文字起こし、写真の質問のような、短い作業が向いていると読みました。
つまずきやすい点
- 対応機種ではない:Apple IntelligenceもGemini Nanoも、機種の一覧にない端末では使えません。
- モデルの準備に時間がかかる:Appleの文書は、Apple Intelligenceを有効にしても、モデルがダウンロードされて使えるまで時間がかかることがある、と書いています。
- 長い文章を渡してエラー:Appleの内蔵モデルは、4,096トークンまで。
- アプリを切り替えると止まる:Gemini Nanoは、前面のときだけ。
- オフラインだと思っていたら通信していた:モデルのダウンロードや、Private Cloud Computeの利用では通信が起きます。
気をつけること
- この記事は、実際に使って確かめた記録ではありません。公式の開発者文書、GitHubのREADME、モデルカードを読んだ範囲です。
- Appleの対応機種や言語は、Appleの公式ページの内容で、2026年10月22日に読み直しました。機種の一覧は増えることがあります。
- Gemini Nanoの機種の一覧とAPIの状態(Beta、Alpha)は、変わりやすい情報です。ML Kitの文書の表記をそのまま書きました。
- Appleの4,096トークンは、読んだ文書の記述です。同じ文書は、OSの版でモデルが更新されることと、
contextSizeで最大を調べられることも書いています。使う前に、自分の環境の値を確かめてください。 - Gemini Nano全体の会話の長さは、読んだ文書では確認できていません。ML Kitの要約APIのページには、入力は4,000トークン未満(約3,000英単語)と書かれていますが、これは要約機能の入力の制限で、モデル全体の値とは限りません。
- Gemmaの文書ページ(ai.google.dev)には、「この文書は廃止予定で、新しい文書はgemma.aiにある」という趣旨の案内が出ていました。表の数字は廃止予定のほうの文書のもので、移転先のページは読んでいません。
- AI Edge Galleryは、READMEで「ベータ版」と書かれています。機能は変わることがあります。ダウンロード時の通信の中身は、確認できていません。
- スマホ向けのメモリの数字は読み込みの目安で、実際に何ギガバイトのスマホで快適に動くかは、読んだ資料では確認できませんでした。
- 速さ(毎秒何トークン)や電池の消費は、公式の資料に数字が見当たらなかったので、書いていません。
- 個人情報を端末で扱う設計は、別の記事(個人情報を手元のAIで扱う設計)で書きます。
出典
- Foundation Models(Apple Developer Documentation、Apple、2026年10月22日確認)
- Generating content and performing tasks with Foundation Models(Apple Developer Documentation、Apple、2026年10月22日確認)
- Managing the context window(Apple Developer Documentation、Apple、2026年10月22日確認)
- SystemLanguageModel(Apple Developer Documentation、Apple、2026年10月22日確認)
- Core AI(Apple Developer Documentation、Apple、2026年10月22日確認)
- Core ML(Apple Developer Documentation、Apple、2026年10月22日確認)
- mlx-swift-lm(GitHub ml-explore、Apple、2026年10月22日確認)
- Apple Intelligence(Apple、2026年10月22日確認)
- Apple Intelligence Foundation Language Models Tech Report 2025(Apple Machine Learning Research、Apple、2026年10月22日確認)
- Gemini Nano(Android Developers、Google、2026年10月22日確認)
- ML Kit GenAI APIs(Google for Developers、Google、2026年10月22日確認)
- ML Kit GenAI Summarization(Android、Google for Developers、Google、2026年10月22日確認)
- LiteRT-LM overview(Google AI Edge、Google、2026年10月22日確認)
- google-ai-edge/gallery README(GitHub、Google、2026年10月22日確認)
- Gemma core models(Google AI for Developers、Google、2026年10月22日確認)
- Gemma 4 model card(Google AI for Developers、Google、2026年10月22日確認)
更新履歴
- 2026年10月25日 書き方を直しました。
- 前:運営者が使っていないと読める書き方 → いま:「この記事は、実際に使って確かめた記録ではありません」。公式の資料を読んでまとめた記事で、使い心地は書いていない、という意味に直した
