この記事は、実際に使って確かめた記録ではありません。この記事は公式の文書や論文を読んでまとめたものです。
3行でいうと
- オンデバイスのモデルの文脈の長さは4,096トークン(約4K)です。これを超えるとエラーになります。
- 長い文書や推論が要る場面向けに、サーバー側のPrivate Cloud Compute版(32Kトークン、推論の段階つき)があります。
- 日本語は、Appleが示すApple Intelligenceの対応言語に入っています。
- LM StudioやOllamaのように好きなモデルを選ぶ道具ではなく、アプリ開発者向けの部品です。
先に結論
Foundation Modelsは、「端末に入っているAppleのモデルを、Swiftのアプリから呼ぶ」ための仕組みです。モデルは自分で選べません。システムが持っているモデルを使います。その代わり、ダウンロードや配布の手間が要らず、通信なしで動きます。
見立てです。ふだんのチャット用に好きなモデルを動かしたい人は、LM StudioやOllamaのほうが目的に合います。Foundation Modelsが向くのは、自分のアプリに「要約」「分類」「項目の抜き出し」のような小さな賢さを組み込みたい場合です。公式は、得意な仕事として要約や項目の抜き出しなどを挙げ、基本的な計算・コード生成・論理的な推論は向かないと例示しています。
前提:用語
- オンデバイスのモデル:クラウドに送らず、手元の機器の中で動くモデルです。
- フレームワーク:アプリ開発者が使う部品の集まりです。Foundation Modelsでは、Swiftというプログラミング言語から呼びます。
- トークン:AIが文章を数える単位です。Appleの文書では、英語のような文字の言語では3〜4文字で1トークン、日本語・中国語・韓国語などでは、おおむね1文字で1トークンとされています。
- コンテキスト長(コンテキストウィンドウ):1回の会話(セッション)でモデルが扱える、トークンの総量です。
中身:何が入っていて、何ができるか
2つのモデル
Appleの文書によると、標準の道具立ては次の2つです。
| SystemLanguageModel(オンデバイス) | PrivateCloudComputeLanguageModel | |
|---|---|---|
| プライバシー | 保たれる | 保たれる |
| オフライン | 使える | 使えない |
| 利用回数 | 無制限 | 1日あたりの上限あり |
| 推論(考える段階) | 非対応 | 複数の段階 |
| コンテキスト長 | 4K | 32K |
出典は、Appleの「Adding server-side intelligence with Private Cloud Compute」の比較表です。Private Cloud Compute(PCC)は、Appleのサーバー側の仕組みで、アプリは認証やAPIキーを扱わずに使えるとされています。使うには、資格の条件を満たし、特別な権限(エンタイトルメント)を申請する必要があります。
同じ文書に、PCC版のコードの書き換えは1行で済む、とあります。公式文書の例です。この記事では、実行していません。
// Create a session with the server-side model.
let session = LanguageModelSession(model: PrivateCloudComputeLanguageModel())
推論の段階は、light、moderate、deepの3つです。文書は、まずmoderateで評価し、複雑な設計判断のような場面でdeepを使う、と案内しています。deepは遅くなる代わりに、見落としを減らす、という説明です。
4つの主な機能
Appleの概要ページと技術文書から、機能を並べると次のとおりです。
- セッション:
LanguageModelSessionが会話の状態を保ち、すべてのやり取りを記録(トランスクリプト)します。 - ガイド付き生成(構造化出力):Swiftの型に
@Generableと付けると、モデルがその型どおりの結果を返します。Appleの技術文書は、これを制約付きの生成だと説明しています。出力が壊れた形式になるのを防ぎます。 - ツール呼び出し:アプリ側の関数(
Tool)を定義すると、モデルが必要に応じて呼びます。 - モデルの切り替え:
LanguageModelというプロトコルに合わせれば、Appleのモデル以外も同じ書き方で使えます。
Appleのモデル以外も使える
2026年6月の更新(Foundation Models updates)に、次の記述があります。
LanguageModelプロトコルで、サーバーでも手元でも、どんなモデルも同じ枠組みで使える。CoreAILanguageModelとMLXLanguageModelで、オンデバイスのモデルをつなげる(オープンソース)。- 画像をプロンプトに入れて解析する道も、同じ6月の更新に載っています(VisionフレームワークのOCRなどの道具と組み合わせる)。安全性の文書も、Appleのモデルは画像とテキストの両方を入力にできると書いています。日本語での画像理解の精度は、この文書から分かりません。
「Running a Core AI model in a Foundation Models session」には、Core AIでオープンソースのモデルを書き出して、アプリに同梱し、同じセッションAPIで呼ぶ手順があります。動作条件はmacOS 27、iOS 27、Xcode 27以降です。最初の1つには0.6B(6億)パラメータくらいのモデルを勧める、と書いてあります。
つまり、「Appleの組み込みモデル以外も呼べる」のは確かです。ただし、これは開発者がアプリの中に組み込む話です。LM Studioのように、利用者が画面でモデルを選ぶ道具とは別物です。
制約:数字で見る
コンテキストは4,096トークン
「Managing the context window」は、オンデバイスのモデルの文脈を「1セッションあたり4096トークン」としています。プロンプトや指示だけでなく、ツールの定義、@Generable の型の構造、モデルの返事もすべて、この枠を使います。超えると LanguageModelError.contextSizeExceeded が出て、セッションは返事をしなくなります。
2026年2月の更新で、contextSize(上限の取得)と tokenCount(for:)(トークン数を数える)が加わりました。
僕らの計算です。日本語が1文字で約1トークンなら、4,096トークンは、指示や返事の分を除くと、数千文字の文章を渡すだけで一杯になる大きさです。長い記事を丸ごと要約するのは難しいと考えられます。Appleの文書が勧めるのは、文書を分けて別々のセッションで要約し、結果をまとめる方法です。
文脈を節約する公式の勧め
「Managing the context window」の主な案内です。
- プロンプトは3段落以内にする。丁寧すぎる言い回しを避ける。
- 返事の長さは、「3文で」のようにプロンプトで指定する。
maximumResponseTokensは暴走を防ぐ用途に限る。上限で切ると、文が途中で終わることがある。 @Generableの型は単純にする。@Guideの説明文もトークンを使う。- ツールは1回の依頼に3〜5個まで。説明は短く。毎回必要な情報なら、ツールにせず、プロンプトに直接入れる。
- 超えたら、新しいセッションを作る。最初と最後のトランスクリプトだけ引き継ぐ、要約を引き継ぐ、などの方法がある。
モデルは時期で変わる
SystemLanguageModel は、OSの更新で入れ替わります。文書は、現在3つの版があるとしています。
- iOS・macOSなど 26.0〜26.3
- 26.4
- 27.0
2026年2月の更新は、26.4で指示への従いやすさとツール呼び出しが良くなり、ガードレール(有害な内容を止める仕組み)も、無害な内容を止めすぎないよう改善した、としています。6月の更新も、27のモデルで指示に正確に従うようになった、とあります。そのため公式は、OS更新のたびに、アプリのプロンプトを新旧のモデルで試すよう勧めています。
つまり、同じプロンプトでも、利用者のOSの版によって結果が変わりえます。
向く仕事、向かない仕事
「Generating content and performing tasks」の表によると、次のとおりです。
- 向く:要約、項目の抜き出し、文章の理解、書き直し、分類・判定、創作、タグ付け、ゲームの台詞。
- 避ける:基本的な計算(「bagelにbは何個」)、コード生成、論理的な推論(方角の推理など)。
日本語での精度が、この表の「向く仕事」でどこまで保たれるかは、この文書からは分かりません。
日本語の扱い
Appleの文書は、オンデバイスのモデルが多言語で、プロンプト・指示・出力に別々の言語を使えるとしています。対応言語は、Apple Intelligenceの対応言語に従います。Appleのサポートページ(2026年10月22日に確認)では、27のソフトウェアで対応する言語は次のとおりです。英語、デンマーク語、オランダ語、フランス語、ドイツ語、イタリア語、ノルウェー語、ポルトガル語、スペイン語、スウェーデン語、トルコ語、ベトナム語、中国語(簡体字・繁体字)、日本語、韓国語です。
注意点がいくつかあります。
- 対応外の言語を検出すると
unsupportedLanguageOrLocaleのエラーになります。 - ガードレールは、対応する言語にしか働きません。対応外の短い言葉が混ざった場合、検出に失敗して、ガードレールも働かないことがある、と書かれています。
- 米国英語以外では、指示に「The person's locale is ja_JP.」のような決まった英語の文を入れると、幻覚(もっともらしい誤り)が減る、と文書は案内しています。出力の言語は、「必ず日本語で答える」のように指示で固定します。
動かせる機器
Appleのサポートページによると、27のApple Intelligenceは、M1以降のMacで使えます。必要な空き容量は、M3以降でメモリ12GB以上のMacが最大14GB、その他が最大8GBです。これはApple Intelligence全体の目安で、言語モデル1つの大きさではありません。
技術文書で分かるモデルの中身
2025年7月のAppleの技術報告(Apple Intelligence Foundation Language Models Tech Report 2025)は、当時のオンデバイスのモデルを、約3B(30億)パラメータとしています。主な工夫は次のとおりです。
- モデルを2つのブロックに分け、後半のKVキャッシュ(会話の記憶の置き場)を前半のものと共有する。これでKVキャッシュのメモリを37.5%減らした、とされています。
- 重みを平均して1つあたり2ビットに圧縮(量子化を考慮した学習)。KVキャッシュは8ビット。品質の低下を補う小さな追加部品(アダプター)も学習した。
- この圧縮で、MGSM(多言語の算数)が約4.6%下がり、MMLUが1.5%上がった、と2025年6月のAppleの解説ページにあります。7月の技術報告(arXiv版)の表3は、オンデバイスのMMLUが16ビットの67.8から2ビットの64.4に下がると示していて、解説ページの数字とは一致しません。条件の違いは、この記事では確かめていません。
2025年6月のAppleの解説ページでは、人手評価で、オンデバイスのモデルは、やや大きいQwen-2.5-3Bに全言語で優位、英語ではQwen-3-4BやGemma-3-4Bと同程度とされています(Apple自身の評価です)。これは2025年版のモデルの評価で、2026年の26.4や27の版の数字は、今回確認できていません。
選び方の見立て
見立てです。
- アプリを作る人:まずオンデバイスで試し、足りなければPCCを検討する。これはAppleの案内と同じ順序です。Evaluationsフレームワークで、自分のプロンプトを測ってから決める、とあります。
- オフラインで、個人情報を外に出したくない機能:オンデバイスが向きます。ただし、4Kの枠に収まる仕事に分ける必要があります。
- ふだん使いのチャットや、長い文書の処理:LM StudioやOllamaで、大きいモデルを選ぶほうが自由度があると見ています。
つまずきやすい点
- 枠を超える。ツールの定義や型の説明も、枠を使います。依頼の文より先に、枠が埋まることがあります。
- モデルのバージョンを見落とす。テスト済みのプロンプトが、OS更新で変わりえます。
- ガードレールの拒否。入力でも出力でも、
guardrailViolationが出ることがあります。文書は、文を言い換えて試すことと、利用者にわけを伝えることを勧めています。 - 構造化出力での拒否。文字列の返事なら「申し訳ありませんが…」と返りますが、型で受け取る場合は、
refusalのエラーになります。 - PCCの1日の上限。上限に達したら、翌日まで待つか、iCloud+の上位プランが案内されます。
気をつけること
- この記事は、実際に使って確かめた記録ではありません。コード例は、公式文書の例を短くしたものです。
- 4,096トークンの数字は、「Managing the context window」と「Generating content and performing tasks with Foundation Models」の2か所で確認しました(PCCの比較表は「4K」と書いています)。ただし、OSの版が上がると変わる可能性があります。
- 現在のオンデバイスのモデルのパラメータ数や、日本語の精度は、公式の文書では確認できていません。2025年の技術報告の「約3B」は、当時のモデルのものです。
- Foundation Modelsの更新ページの最新の項目は、10月22日に読んだ範囲では2026年6月でした。
- KVキャッシュの37.5%減、約3B、2ビットの学習、MGSMとMMLUの変化、他社モデルとの比較は、2025年6月のAppleの解説ページで10月22日にも読めました。ただし、7月の技術報告(arXiv版)の表3とは数字が一致しない点があります(上のとおり)。いずれも2025年版のモデルの話です。
- 文書にある27のOSや、PCCの利用条件、1日の上限の回数は、変わることがあります。上限の具体的な回数は、文書に書かれていませんでした。
- Apple Intelligenceの対応機器・地域・言語は、Appleのページが更新されます。
- 個別のアプリでの扱い(App Storeの審査、プライバシー表示)は、この記事では扱っていません。
出典
- Foundation Models(Apple Developer Documentation、Apple、2026年10月22日確認)
- Foundation Models updates(Apple Developer Documentation、Apple、2026年10月22日確認)
- SystemLanguageModel(Apple Developer Documentation、Apple、2026年10月22日確認)
- Managing the context window(Apple Developer Documentation、Apple、2026年10月22日確認)
- Adding server-side intelligence with Private Cloud Compute(Apple Developer Documentation、Apple、2026年10月22日確認)
- Supporting languages and locales with Foundation Models(Apple Developer Documentation、Apple、2026年10月22日確認)
- Generating content and performing tasks with Foundation Models(Apple Developer Documentation、Apple、2026年10月22日確認)
- Updating prompts for new model versions(Apple Developer Documentation、Apple、2026年10月22日確認)
- Improving the safety of generative model output(Apple Developer Documentation、Apple、2026年10月22日確認)
- Running a Core AI model in a Foundation Models session(Apple Developer Documentation、Apple、2026年10月22日確認)
- Generating Swift data structures with guided generation(Apple Developer Documentation、Apple、2026年10月22日確認)
- Updates to Apple's On-Device and Server Foundation Language Models(Apple Machine Learning Research、Apple、2025年6月9日、2026年10月22日確認)
- Apple Intelligence Foundation Language Models Tech Report 2025(Apple Machine Learning Research、Apple、2025年7月、2026年10月22日確認)
- Apple Intelligence の対応機器・言語(Appleサポート、Apple、2026年10月22日確認)
- Apple Intelligence(Apple、2026年10月22日確認)
更新履歴
- 2026年10月25日 書き方を直しました。
- 前:運営者が使っていないと読める書き方 → いま:「この記事は、実際に使って確かめた記録ではありません」。公式の資料を読んでまとめた記事で、使い心地は書いていない、という意味に直した
