3行でいうと
- 3社の公式ヘルプはどれも、答えが間違うことがある、と自分で書いています。間違いには、存在しない引用や参考文献をそれらしく作ることも含まれます。
- 向かない場面として、公式の説明から読み取れたのは、新しい出来事、渡した資料の正確な読み取り、とても長い会話、医療・法律・お金などの専門的な判断、の4つです。
- 各社の共通の勧めは、答えを「下書き」として使い、大事な点は元の資料で確かめることです。
この記事は、公式の文書を読んでまとめたもので、実際に使って確かめた記録ではありません。「見立てです」と書いた部分は僕らの考えで、公式の文書に書かれていることとは分けています。
先に結論
公式の説明を読んで言えるのは、次のとおりです。
- 事実と違うことを、自信ありげに答えることがある。 OpenAI、Claude、Geminiのヘルプが、それぞれ自分で書いています。
- 知識には期限がある。 それより新しい話は、検索などの道具がないと分からない、と書かれています。
- 渡した資料を、正確に読めるとは限らない。 画像の表や大きなファイルが例です。
- とても長い会話には上限がある。
- 専門的な判断の代わりにはならない。 Googleは、医療・法律・金融などの専門的な助言として扱わないよう書いています。
「だから使うな」とは、どのページにも書かれていません。どれも「下書きとして使い、確かめる」を勧めています。
たとえ話:物知りだけれど、ある日から世間の情報を見ていない友人
僕らのたとえです。公式の文書にあるものではありません。
AIは、とても物知りな友人のようなものです。何を聞いても、すらすら答えてくれます。ただ、この友人には3つの癖があります。
- ある日を境に、世間の情報を仕入れるのをやめている。 それより新しい話は、本人は知りません。
- 「知らない」と言うより、それらしく答えてしまうことがある。 声の調子は、正しいときも間違うときも、同じように落ち着いています。
- 机の上に置かれた紙の範囲でしか、話を聞けない。 長く話し込むと、机がいっぱいになります。
大事な数字や日付は、別の方法で確かめる。この付き合い方が、公式の説明からも読み取れます。
このたとえは分かりやすさのためのものです。AIが本当に「知っている」「忘れる」のかは、読んだ資料には書かれていません。
公式が書いている「苦手」の5つ
1. もっともらしい間違い
OpenAIのヘルプは、ChatGPTの答えに、事実の誤り(定義や日付など)が混じることがあり、存在しない引用、研究、参考文献を作ってしまうこともある、と書いています。この現象を「ハルシネーション」(事実でないことを、もっともらしく作ってしまうこと)と呼びます。難しい質問や、あいまいな質問にも、自信ありげに答えることがある、とも書かれています。
ClaudeとGeminiのヘルプにも、同じ趣旨の説明があります。Claudeは、権威がありそうに見えて、事実に基づかない引用を作ることがある、正しく見えて間違っていることがある、と書いています。Geminiは、作り話を事実のように示すことがある、特に人物についての答えは、不正確・不適切なことがある、としています。
総務省の令和6年版の白書も、ハルシネーションには技術的な対策があるが、完全には抑えられないとして、検索などの手段と併用して、答えが正しいか確かめることが望ましい、と書いています。
見立てです。3社と国の資料が同じことを書いているので、「ときどき起きる不具合」というより、「いまの生成AIにつきものの性質」として付き合うのが現実的だと思います。ハルシネーションの見分け方は、別の記事で扱っています。
2. 新しい出来事、最新の情報
OpenAIのヘルプは、モデルの学習データには期限があり、それ以後の出来事は、検索などの道具を使わないと分からない、と説明しています。Claudeのヘルプも、分野によっては最新の情報を持たず、現在の出来事について混乱することがある、と書いています。
Geminiのヘルプには、Geminiは自分の機能(学習のしかた、出典を示すか、最新の情報を出せるか)を、誤って説明することがある、という一文があります。AIに「最新の情報を知っていますか」と聞いても、その答え自体が当てにならないことがある、ということです。
また、OpenAIのヘルプによると、検索の機能を使っても、技術的な問題、有料の壁、サイト側の設定(robots.txt)によって、取得できないサイトがあります。
3. 渡した資料の、正確な読み取り
「資料を貼ったり、ファイルを渡せば大丈夫」とは限りません。OpenAIの「データ分析」のヘルプは、次の注意を書いています。
- スキャンした資料、画像になった表、複雑なレイアウトからは、正確な値を確実には取り出せないことがある。正確な数字が要るときは、表計算ファイルやテキストのファイルを勧める。
- ファイルが大きい、複雑、構造が整っていない場合は、アップロードできても、分析が不完全になることがある。
- 方法やグラフの種類が、頼んだ意図と違うことがある。大事なときは指定する。
計算については、このヘルプは「苦手」とは書いていません。計算や集計は、AIがPythonのコード(プログラムの文章)を書いて実行して行う場合がある、と説明し、そのコード、出力、前提を見直してから使うよう求めています。計算そのものの得意・不得意は、読んだ公式ページには書かれていませんでした。
4. とても長い会話
Claudeのヘルプは、会話の長さには上限があると説明しています。AIは、一度の会話で扱える量に限りがあり、これを「コンテキストウィンドウ」(作業記憶のようなもの。一度に見渡せる量)と呼んでいます。長い会話と、添付したファイルで、この枠が埋まっていきます。上限に近づくと警告が出ます。
対処として、ヘルプは、新しい会話を始めること、必要な部分だけ読み込む「プロジェクト」を使うこと、使わない資料を外すこと、などを挙げています。
5. 専門的な判断、偏りのある見方
Googleのヘルプは、Geminiの答えを、医療、法律、金融などの専門的な助言として扱わないよう書いています。Claudeのヘルプも、重要度の高い助言は慎重に確かめるよう書いています。
偏りについては、OpenAIが、ひとつの見方を絶対の真実のように示す、微妙な問題を単純にしてしまう、科学の合意や社会の議論の重みを取り違える、といったことが起こりうると書いています。総務省の白書も、偏りを含む回答をうのみにし続けると、不公平な結果が固定化・拡大するおそれがある、としています。
開発者向けの文書にある、間違いを減らす工夫
Anthropicの開発者向け文書「Reduce hallucinations」は、間違いを減らす方法をいくつか挙げています。
- 「分からないときは、分からないと答えてよい」と、はっきり許可する。
- 長い文書では、まず根拠になる箇所をそのまま抜き出させ、その抜き出しだけをもとに答えさせる。
- 主張ごとに、裏づけの引用を付けさせ、見つからなければその主張を取り下げさせる。
- 同じ頼みを何回か実行して、答えの食い違いを見る。食い違いは、間違いのしるしかもしれない、としています。
文書は、これらで間違いは大きく減るが、完全にはなくならない、重要な内容は確かめるよう書いています。
見立てです。日常で使うなら、頼みに「分からなければ、分からないと言ってください」と一言足すのが、1つ目の方法に近い使い方だと思います。ただ、普通のアプリで同じように効くかは、公式の文書に書かれておらず、この記事でも確かめていません。
誤解されやすい点
「自信のある言い方なら、正しい」 OpenAIは、間違っているときにも自信ありげに答えることがある、と書いています。言い方の調子は、正しさの目印になりません。
「新しいモデルになれば、間違いはなくなる」 読んだ資料では、そうは書かれていません。Anthropicの文書は、工夫で大きく減るがなくならない、総務省の白書は、完全には抑えられないとしています。
今日からできること、やってはいけないこと
どれも、上の公式ページの内容を土台にした、僕らの整理です。
今日からできること
- 答えに、数字、日付、人の名前、引用が出てきたら、その部分だけ、元の資料や公的なページで確かめる。
- 最近の話題では、検索の機能を使い、出典のリンクを開いて、答えのとおりに書かれているかを見る。OpenAIのヘルプは、検索が使われたかを、アイコンや出典の有無で確かめられると書き、Claudeのヘルプは、検索を使った答えでも、元のページの文脈が要約で落ちることがある、と書いています。
- 会話が長くなったり、話題が変わったりしたら、新しい会話を始める。
- 答えは「下書き」として受け取る。OpenAIのヘルプも、最終の情報源ではなく下書きとして扱うよう書いています。
やってはいけないこと
- 医療、法律、お金の重要な判断を、AIの答えだけで決める。
- 確かめずに、AIの答えを資料やメールにそのまま貼る。
- 秘密や他人の個人情報を入れる。総務省の白書は、入力した情報が、出力を通じて外部に出るおそれがある、と挙げています。入れてよいかどうかは、サービスと設定で違います。
気をつけること
- 説明は、2026年10月16日に読んだ公式ページのものです。サービスの機能は変わりやすいです。OpenAIの「Does ChatGPT tell the truth?」のページは、「更新は先月」とだけあり、具体的な日付は読み取れませんでした。Claudeの長さの上限のページは、日付が読み取れず、ページにあった会話の大きさの数字が今も同じかは分かりません。そのため、本文では数字を挙げませんでした。
- この記事は、実際に使って確かめた記録ではありません。この記事は、公式の文書を読んだまとめです。
- 公式ページは、取り込んだ文章(抽出された文章)を通して読んでいます。原文の言い回しや脚注は、確かめていません。引用はせず、言い換えて書いています。
- 文字や数を数えること、暗算などの得意・不得意は、読んだ公式ページには書かれていませんでした。この記事では扱っていません。
- 長い会話で答えの質が落ちるかどうかは、読んだClaudeのページには書かれていませんでした。
- OpenAIのページは、検索などの道具が「既定で有効」という記述と、「有効にしないと検索しない」という記述が、読んだ範囲では両方ありました。実際の画面で検索が使われているかは、答えに出典が付いているかなどで、自分で確かめてください。
- 総務省の白書は、令和6年版(2024年)です。その後の状況は、読んでいません。
- 医療・法律・お金の話は、助言ではありません。専門家に相談してください。
出典
- Does ChatGPT tell the truth?(OpenAI Help Center、2026年10月16日確認)
- Claude is providing incorrect or misleading responses. What's going on?(Claude Help Center、Anthropic、ページ上の日付 2026年3月16日、2026年10月16日確認)
- Learn about responses from Gemini Apps(Gemini Apps Help、Google、2026年10月16日確認)
- Reduce hallucinations(Claude Platform Docs、Anthropic、2026年10月16日確認)
- Understanding usage and length limits(Claude Help Center、Anthropic、2026年10月16日確認)
- Data analysis with ChatGPT(OpenAI Help Center、2026年10月16日確認)
- 令和6年版 情報通信白書「生成AIが抱える課題」(総務省、2026年10月16日確認)
更新履歴
- 2026年10月25日 書き方を直しました。
- 前:運営者が使っていないと読める書き方 → いま:「この記事は、実際に使って確かめた記録ではありません」。公式の資料を読んでまとめた記事で、使い心地は書いていない、という意味に直した
