3行でいうと

  • お知らせ文の下書きに、名簿は要りません。日時・場所・持ち物などの用件だけで頼めて、名前や電話番号は自分で後から入れられます。
  • 入力した内容は、サービスの設定によっては学習に使われたり、一定期間保存されたりします。個人情報保護委員会も、個人情報を入れるかは、そのリスクを踏まえて判断するよう求めています。
  • 自治会やPTAが、法律上の「個人情報取扱事業者」に当たるかどうかは、僕らが読めた資料では確かめられませんでした。だから「入れない」を基本にするのが安全です。

この記事は、公式の文書を読んでまとめたもので、実際に使って確かめた記録ではありません。例文は僕らが作ったものです。法律の話は資料の紹介で、助言ではありません。個別の判断は、専門家や所管の窓口に相談してください。

先に結論

読めた範囲で言えることは、3つです。

  1. 文面づくりに、個人情報は要りません。 「いつ、どこで、何をするか」だけ渡せば下書きは作れます。名前や電話番号は、できあがった文に自分で書き足せます。
  2. AIに入れた内容の行き先は、サービスと設定で違います。 学習に使われることがあり、学習に使われない設定でも、数日から30日ほど保存されることが、各社の公式ヘルプに書かれています。
  3. 名簿そのものは、貼らない。 貼るなら、名前を「Aさん」などに置き換え、住所や電話番号は削ってからです。

たとえ話:文章の代筆を頼むとき、住所録は渡さない

僕らのたとえです。公式の文書にあるものではありません。

回覧板の文面を、文章の得意な知人に代わりに書いてもらうとします。頼むときに伝えるのは、「防災訓練、日曜の朝、集合場所は公園、読む人は高齢の方が多い」といった用件です。町内の全員の住所と電話番号が並んだ名簿まで渡す人は、まずいません。文章を整えるのに、名簿は要らないからです。

AIへの頼みごとも同じです。AIに頼みたいのは「文章の整え方」で、「誰がどこに住んでいるか」ではありません。

渡してよいもの、止まるもの

個人情報保護委員会(以下、委員会)のガイドラインを読むと、個人情報は、氏名のほか、住所・電話番号・メールアドレスなどの連絡先、顔の写真も例に挙がっています。メールアドレスは、それだけでも、所属や名前から人が分かれば含まれます。

これを、お知らせ文づくりの場面に当てはめた僕らの整理が、次の表です。

場面 渡し方の見立て
日時、場所、持ち物、集合時間 そのまま渡してよい
団体名、行事名 渡してよい(団体名でも、少人数の会では個人が分かることがあるので、気になれば「当会」と伏せる)
役員や会員の名前 「会長」「Aさん」など、役職や記号に置き換える
電話番号、住所、メールアドレス 渡さない。文面のあとで、自分で書き足す
名簿そのもの、出欠の一覧 貼らない
病気、けが、家庭の事情(例:「○○さんが入院した」) 書かない。次の「くわしく」の要配慮個人情報を参照

見立てです。会員の入院の知らせは、お知らせ文でよくある話題です。委員会のガイドラインでは、病歴や障害などは「要配慮個人情報」とされ、事業者が取得するには原則として本人の同意が必要です。人づてに聞いた話を、AIに入れる前に文に書くこと自体を、止まって考えたほうがよいと思います。

AIに入れた内容は、どうなるのか

委員会が2023年6月2日に出した注意喚起には、一般の利用者向けに3点が書かれています(言い換えです)。

個別のサービスの扱いは、公式ヘルプで確かめた範囲を次の表にしました(個人向けの無料・有料プランの話です。会社や学校のアカウント、API、法人向けは別のルールです)。

サービス 公式ヘルプの記載(個人向け) 確認日・ページの日付
ChatGPT(OpenAI) 設定「Improve the model for everyone」をオフにすると、新しい会話は学習に使われない。Temporary chatは、履歴に出ず、学習にも使われないが、安全のため最長30日保持され得る 2026年10月22日確認(ページの日付は「4か月以上前に更新」という相対表示だけで、具体的な日付は表示されていない)
Claude(Anthropic) 学習の利用を許可している場合、非識別化して最大5年保持され得る。オフにしても、すでに学習に使われた分は残る。Incognito chatは学習に使われない 2026年10月22日確認(ページの日付表示は2026年7月1日)
Gemini(Google) 履歴の保存(Keep Activity)がオンだと、改善に使われ、人間の確認者も関わる。オフでも72時間は保存される 2026年10月22日確認(ページの最終更新はプライバシーハブが2026年10月19日、プライバシー通知の部分が2026年10月13日と表示)

団体の名簿は、法律ではどうなのか

ここは資料の紹介で、助言ではありません。

委員会のガイドライン(通則編。2026年6月に一部改正)によると、「個人情報取扱事業者」は、個人情報をまとめて検索できる状態にしたもの(個人情報データベース等)を、事業のために使っている者です。ポイントは3つ読めました。

では、自治会、PTA、サークルは当たるのか。委員会のQ&A(2025年7月1日版)には、「自治会・町内会、同窓会、PTAなどの非営利団体も規制を受けるか」という質問(Q1-54)や、そうした団体が名簿を作って配る場合の質問(Q4-18)の見出しがあります。ところが、僕らは、回答の本文を取得できませんでした。ガイドライン本文の2-5にも、自治会などの名前は出てきませんでした。だから、「当たる」とも「当たらない」とも書けません。

見立てです。当たるかどうか分からないうちは、当たるつもりで丁寧に扱うのが無難だと思います。名簿を作るときは、何に使うかを会員に知らせる(通知か公表。ガイドラインは、書面を渡す、メールで送る、掲示する、などを例に挙げています)。名簿を会員以外に渡したり、AIの会社に送ったりするときは、本人の同意がいるかを確認する。こうした順番です。

読めた範囲のガイドラインの要点
  • 個人情報の例:氏名、連絡先、顔画像、メールアドレス(人が分かる場合)。
  • 要配慮個人情報の例:病歴(病名が分かる部分)、障害があること、健康診断の結果、犯罪の被害や前科など。取得は原則として本人の同意が必要。オプトアウト(本人が止めない限り提供してよいとする方式)による第三者提供は認められない。
  • 本人の同意の取り方の例:書面をもらう、同意するというメールを受け取る、チェック欄に入れてもらう、ボタンを押してもらう。

頼み方:用件だけ、空欄つきで

お知らせ文の頼み方は、Anthropicの頼み方の指南が参考になります。指南は、AIを「優秀だが、こちらの事情を知らない新入社員」にたとえ、事情を知らない同僚に見せて迷わず実行できるか確かめるよう書いています。また、背景や理由を添えること、してほしいことを具体的に書くこと、材料と指示を区切ることを勧めています。

僕らの例です(公式のものではありません)。

【頼みごと】自治会の防災訓練のお知らせ文を作ってください。
【読む人】70代以上の方が多い地区の住民。やさしい言葉で、300字以内。
【入れる項目】日時、集合場所、持ち物、雨のとき、問い合わせ先
【日時】(  ) 【場所】(  )
【問い合わせ先】(空欄のままにして。あとで自分で書きます)

できた文面を見て、「もう少しやわらかく」「雨のときの案内を1行足して」と直していきます。Anthropicの指南は、出力の形式を具体的に書くよう勧めています。口調そのものの指定を勧める記述は、読んだ範囲では見つかりませんでした。「丁寧に」「やさしい言葉で」といった書き添えは、僕らの書き方の例です。

今日からできること、やってはいけないこと

今日からできること

やってはいけないこと

誤解されやすい点

「配る文書だから、入れても同じ」 お知らせ文は配っても、元の名簿は配るものではありません。配る範囲と、AIの会社に送る範囲は、別の話です。

「学習に使われない設定にすれば、安心」 Geminiは、オフにしても72時間は保存されると書いています。ChatGPTのTemporary chatも、最長30日保持され得ます。学習に使われないことと、保存されないことは、別です。

気をつけること

出典

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