3行でいうと

  • 事実は、AIの知識に任せず、自分の資料として渡します。Microsoft、Google、Anthropicの公式は、参照させる資料を指定する、または渡す方法を挙げています。Microsoftの資料は、AIの出力を情報源で確認するよう書いています。
  • 会社の資料を渡す前に、データの扱いを確かめます。Google、OpenAI、Anthropicの公式は、法人向けの入出力を、既定では学習に使わないと説明しています。ただし、対象は法人向けのエディションや商用製品で、個人向けは別です。
  • 「業界初」「他社の2倍」のような強い表現は、根拠が要ります。消費者庁のページは、効果や性能をうたう表示に、合理的な根拠を示す資料を求める仕組みを説明しています。

この記事は、実際に使って確かめた記録ではありません。僕らの考えは「見立てです」と書いた部分に分けました。法律の助言ではありません。

先に結論

事実を3つに分けてから頼む

見立てです。提案書に入る事実を、出どころで3つに分けておくと、AIへの渡し方が決まります。

  1. 自社の事実。 価格、仕様、導入実績、納期、保証の範囲。社内の資料にあります。そのまま渡す対象です。
  2. 相手の事実。 相手の会社の課題、業界、これまでのやり取り。商談メモやメールにあります。渡すときは、個人名や機密を含むかを見ます。
  3. 外の事実。 市場の規模、競合の機能や価格、統計。AIの記憶に頼ると、古い、または誤った数字が入りやすい部分です。出典のある資料を自分で選んで渡します。

この3つのうち、AIに自由に書かせてよいのは、文のつなぎ方、順序、言い回しだけ、と考えると整理しやすいと思います。

公式の「資料の渡し方」を並べる

資料を渡して根拠にさせる方法を、公式の文書で確かめました。

資料 何が書かれているか 条件
Microsoft Learn(Copilotのプロンプト) 「ソース」として、参照させるファイルや情報を指定する。ライセンスがあれば、メール、会議、チャットなどの業務データも参照できる 業務データの参照には、Microsoft 365 Copilotのライセンスが必要と読める
Microsoft 365 Copilotの概要 基本(Basic)は組織データを自動では参照せず、ファイルのアップロードか開いている内容を使う。上位(Premium)は組織データを自動で取得する どちらも、アクセスは本人の権限の範囲に限られる
Googleドキュメントのヘルプ Driveのファイルを「Sources」に指定して、データや根拠にできる。提案は文書内に表示され、採用か却下かを選べる 対象のGoogle WorkspaceかGoogle AIのプランが必要
Anthropic(Claudeの手引き) 長い資料は上に、質問や指示は最後に置く。資料はタグで区切る。回答の前に、関連箇所を引用させる方法がある プランの条件は、読んだ範囲には出てこない

Microsoft Learnのページは、AIが作った内容は誤りを含むことがあるので、提供された情報源で確認するよう勧めています。Googleのヘルプは、Geminiの提案が文書の中に出て、適用する前に確かめられる形になっていることを説明しています。

「引用させる」とはどういう頼み方か

Anthropicの手引きは、長い資料を扱うとき、回答の前に、まず資料の中の関連する部分を引用させる方法を挙げています。こうすると、質問に関係のない部分に引きずられにくくなる、と説明されています。

提案書に当てはめると、たとえば次のような頼み方になります。これは僕らの作例で、公式の文章ではありません。

「次の資料だけを根拠にして、導入効果の段落を書いてください。書く前に、使う数字ごとに、資料の該当箇所を引用してください。資料にない数字は書かないでください。」

引用がそろえば、数字の確認は、引用と元の資料を見比べる作業に変わります。ただし、AIが引用を取り違えることもありえます。引用された箇所が、実際に元の資料にあるかは、人が見ます。

会社の資料を渡すときの、データの扱い

提案書の材料には、価格表、顧客名、未発表の仕様が入ります。公式の文書に書かれている、法人向けの扱いを並べます。

提供元 学習への利用 書かれていたこと
Google(Workspace) 組織のプロンプトとコンテンツは、許可なく組織のドメイン外のモデルの学習に使わない 対象は、該当するWorkspaceエディション。個人アカウントのデータの扱いは、このページには書かれていない
Microsoft(365 Copilot) 学習の記述は、読んだページにはない Entraアカウントでサインインすると、プロンプトと応答は、メールやファイルと同じ契約条件で保護される
OpenAI(Business、Enterprise、Edu、API) 既定では、ビジネスデータをモデルの学習に使わない。ただし、利用者が明示的に共有を選んだ場合は別 保持期間は管理者が設定する。削除した会話は30日以内に消される(法律上の例外あり)。APIは最大30日保持
Anthropic(商用製品) 既定では、入出力を学習に使わない。ただし、評価ボタンなどで明示的にフィードバックを送った場合は別 フィードバックを送ると、会話全体が最長5年保存される。個人向けのプランは、読んだページの対象外

OpenAIのページの更新日は、2026年1月8日と表示されていました。Anthropicのページは、2026年8月18日付と読めました。いずれも2026年10月22日に確認したものです。

見立てです。この表で大事なのは、右の列の「対象」だと思います。Googleの説明は法人向けのエディションが対象で、Anthropicのページは商用製品が対象です。同じ会社の個人向けの無料プランや有料プランに、同じ説明が当てはまるとは読めません。個人のアカウントに顧客の資料を入れるのは、会社の決まりと、この表の対象を、先に確かめてからにしたいところです。

強い表現と、景品表示法の考え方

消費者庁の「不当表示規制」のページを読みました。景品表示法の第5条は、商品やサービスの品質、価格などについて、消費者に誤認させる不当な表示を禁じている、と説明されています。

ここで大事な点が1つあります。このページは、優良誤認も有利誤認も、「一般消費者」に示す表示、一般消費者に誤認される表示として説明しています。企業向けの提案書や営業資料が、どこまでこの規制の対象になるかは、このページからは読み取れません。この記事では、確認していません。

見立てです。対象になるかどうかとは別に、「業界初」「No.1」「他社の2倍」「確実に〇〇%削減」のような言葉は、AIの下書きに自然に入りやすく、根拠がなければ書かない、という基準は営業の信用の面でも持っておく価値があると思います。AIには、根拠の資料がある主張だけを使うよう、頼みの文に書きます。

提案書の確認の手順(見立て)

ここは、公式の文書の共通点を、提案書に当てはめた僕らの見立てです。どの会社や省庁の推奨でもありません。

  1. 事実の一覧表を作る。 「項目、数字、出どころの資料、確認日」の4列の表です。AIには、この表の数字だけを使うよう頼みます。
  2. 空欄は、空欄のまま渡す。 分からない項目は「未確認」と書き、AIには、未確認の項目を埋めずに「要確認」と残すよう頼みます。
  3. 数字の言い換えを許さない。 「約」「ほぼ」「最大」などの語の足し引きで、意味が変わります。下書きの数字は、一覧表と一字ずつ照らします。
  4. 比較と最上級は、根拠の箇所を付けさせる。 付けられない表現は、削るか言い換えます。
  5. 顧客名と事例は、許可を確かめる。 事例として載せてよいか、相手に確認したかを、別の欄で管理します。
  6. 確認は3回に分ける。 数字、固有名詞(社名、製品名、人名)、約束の言葉(納期、保証、効果)の順に、それぞれ別に読みます。

気をつけること

出典

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