3行でいうと
- 各社の手引きは、言い方は違っても、「背景と目的を伝える」「資料は先に置き、質問は最後に置く」「例や出力の形を示す」で重なっています。会議の準備にも、そのまま当てはまると読めます。
- 想定問答は、渡した資料の範囲でしか作れません。Googleの手引きには、渡した文脈にない情報は「情報がない」と答えさせる例があります。資料にない数字を、AIが埋めてしまう場面を防ぐ考え方です。
- 道具の選び方は、機能の差よりも、会議の資料がどこにあるか、その中身を預けてよいか、で決まると読みました。
僕らは、ここで取り上げる道具で会議の準備をしたわけではありません。この記事は、各社の公式の文書を2026年10月22日に読み直してまとめたもので、実際に使って確かめた記録ではありません。僕らの考えは「見立てです」と書いた部分に分けました。
先に結論
- 頼み方の骨組みは、各社でほぼ同じ。 背景、目的、渡す資料、出してほしい形の4つです。会議の準備なら、「何の会議か」「何を決めたいか」「参加者は誰か」「持ち時間は」を、最初に渡すことになります。
- AIが知らないことは、書かないと入らない。 参加者の本音、社内の経緯、数字の根拠は、資料として渡さなければAIには分かりません。想定問答は、とくにこの影響を受けます。
- 選び方の基準は2つ。 資料が、すでに使っているアプリの中にあるか。会議の中身を、そのサービスに預けてよい条件か。この2つを確かめてから、機能を比べます。
- 最後は人が読む。 会議で口にする数字と名前は、元の資料と照らします。
準備でAIに頼めることは3つ
会議の準備を、仮に3つの作り物に分けます。分け方は僕らのものです。
- アジェンダ。 議題を、時間の割り振りつきで並べたものです。AIに渡すのは、会議の目的、持ち時間、参加者の役割、前回の宿題などです。
- 論点の整理。 議題ごとに、「決めること」「意見が割れそうなこと」「共有するだけのこと」を分けます。材料は、議題に関する資料やメールのやり取りです。
- 想定問答。 参加者から出そうな質問と、その答えの下書きです。答えの根拠になる資料を渡すことが前提になります。
見立てです。並べ替え、言い換え、抜け漏れの指摘は、渡した資料の中で完結します。一方、「この参加者は何を気にするか」は、資料に書かれていない限り、AIは一般的な推測で埋めます。あなたの職場の事情とは限りません。
Teamsの公式ページには、会議中にCopilotへ頼める質問の例として、各意見の立場を整理する、賛否の対立点を聞く、未解決の論点を確認する、といったものが挙がっています。これは会議中の機能の説明ですが、論点整理を頼むときの言葉づかいの見本としては参考になると思います(これも見立てです)。
公式の手引きを並べて読む
4つの公式資料から、会議の準備に関係する部分を表にしました。表の言葉は、僕らが言い換えたものです。
| 資料 | 背景・目的 | 資料の置き方 | 例・形 | 確認について |
|---|---|---|---|---|
| Microsoft Learn(Copilotのプロンプト) | コンテキストとゴールを分けて書く | 「ソース」として、参照させるファイルや情報を指定する | 「期待」を書く。例を示すと効果的 | AIの生成内容は誤りを含むことがあるので、情報源で確認するよう書かれている |
| Anthropic(Claudeの手引き) | 文脈の少ない同僚に頼むつもりで書く。指示の理由や目的も添える | 長い資料は上に、質問は最後に置く。複数の資料はタグで区切る | 例は3〜5個が目安。実際の用途に近く、多様にする | 回答の前に、資料の関連箇所を引用させる方法が挙がっている |
| Google(Gemini APIの手引き) | 明確で具体的な指示に、制約を足す | 大きな資料を先に、質問は最後に置く。間に「上記の情報に基づき」のような橋渡しを入れる | 例を示す方法(few-shot)を勧め、形式は統一する。複雑な仕事は分けて頼む | 提供された文脈にない情報は「情報がない」と答えさせる指示の例がある |
| OpenAI(API向けの手引き) | 指示は、役割、指示、例、文脈の順に並べるのが標準的とされている | 参照させる資料の始まりと終わりを、XMLタグなどで区切れる | 少数の例を示す方法(few-shot)。例は多様な入力をカバーする | ハルシネーション(もっともらしい誤り)への直接の対策は、読んだページには書かれていない |
OpenAIとGoogleのAPI向けの手引きは、本来は開発者向けです。頼み方の原則は、ふつうのチャットにも使えると考えて読みました。ここは僕らの解釈です。
公式資料の細かい数字と書き分け
- Anthropicの手引きは、20,000トークン以上の長い入力を扱うときのヒントとして、資料を上に、質問を最後に置くことを挙げています。複数の資料が入る複雑な入力では、質問を最後に置くと、回答の質が最大で30%上がることがある、とも書かれています。これは同社の説明で、僕らが確かめた数字ではありません。
- Googleの手引きは、例の数が多すぎると、モデルが例に引きずられる(過適合)ことがあると書いています。例の書式をそろえることも勧めています。「上記の情報に基づき」のような橋渡しの一文は、Gemini 3向けの説明の中に出てきます。
- Microsoft Learnのページには、Copilotの中で、
/、#、@の記号を使って、参照させる対象を指定する書き方が出ています。会議のデータや、メール、チャットを参照させる例は、Microsoft 365 Copilotのライセンスが必要だと書かれています。
数字や名称は、2026年10月22日に読み直した時点のものです。
道具の選び方:資料がどこにあるか
見立てです。機能の差を並べるより、先に「会議の資料はどこにあるか」を聞くほうが、選びやすいと思います。公式の資料から、判断に使える点を拾いました。
資料が、WordやGoogleドキュメントの中にある場合。
- Googleドキュメントのヘルプでは、Geminiに、文書全体や特定のセクションを対象に指示できると説明されています。Driveのファイルを「Sources」として指定して、根拠にさせることもできます。提案は文書の中に表示され、1つずつ採用するか、まとめて採用・却下するかを選べます。使うには、対象のGoogle WorkspaceかGoogle AIのプランが必要です。
- Microsoft 365 Copilotの概要ページでは、プランで動き方が分かれます。ライセンスが基本(Basic)の場合、組織のデータを自動では参照せず、ファイルをアップロードするか、開いている内容を使います。上位(Premium)の場合は、組織のデータを自動で取りにいき、手動でアップロードしなくてもよいと書かれています。どちらも、アクセスできる範囲は本人の権限に制限されます。
会議がTeamsで、会議チャットがある場合。
- Teamsの公式ページによると、Copilotは会議チャットから使えます。文字起こしが始まると、会議前24時間以内のチャットも情報源に含まれます。
- 会議の主催者は、参加者がCopilotをどこまで使えるかを設定できます。組織の外が主催する会議では動かないと書かれています。
- 読んだ範囲では、準備専用の機能の説明は見つけていません。会議の前に使えるのは、会議チャットを通した質問、と読みました。
資料が手元の文章やPDFだけの場合。
- 表の「資料を先に、質問は最後に」「引用させる」「例を示す」の型で頼めると思います。個々のサービスの機能は確かめていません。
会議の中身を預けてよいか
会議の資料には、取引先の名前、未発表の数字、人事の話が入ることがあります。公式資料に書かれている、データの扱いを読みました。
- Google。 Workspaceのプライバシーのページは、組織のプロンプトやコンテンツを、許可なく組織のドメインの外の生成AIモデルの学習に使わない、と説明しています。Geminiアプリのチャットやアップロードしたファイルも、許可なく人が確認したり、学習に使ったりしないとされています。ただし、このページが対象にするのは、対象のWorkspaceのエディションだけです。個人のアカウントのデータの扱いは、このページには書かれていません。
- Microsoft。 Entraアカウントでサインインした場合は、Enterprise Data Protectionが適用され、プロンプトと応答は、メールやSharePointのファイルと同じ契約条件で守られる、と書かれています。EUの利用者の通信はEUの域内にとどまり、そのほかの地域からの要求は、処理のためにEUなどへ送られることがある、ともあります。
- OpenAIとAnthropic。 この2社については、今回は会議の資料の扱いに関するページを読んでいません。確認できていません。
見立てです。会社の資料を扱うなら、会社が契約している道具か、個人のアカウントではないかを、先に確かめたいところです。公式の説明は法人向けを対象にしていることが多く、個人向けには当てはまらないことがあります。
想定問答を作る手順(見立て)
ここからは、公式の手引きの共通点を、会議の準備に当てはめた僕らの見立てです。どの会社の推奨でもありません。
- 会議のカードを書く。 目的、決めたいこと、持ち時間、参加者の立場を、4〜5行で書きます。背景と目的を渡す、という手引きの共通点にあたります。
- 資料を先に貼り、頼みごとは最後に書く。 議題の資料や前回のメモを先に置きます。
- 「渡した資料だけを根拠にする」と書く。 資料にないことは「資料にない」と答えさせます。Googleの手引きの考え方にならったものです。
- 答えに、根拠の箇所を付けさせる。 想定問答の答えごとに、資料のどの部分かを引用させます。Anthropicの手引きにある、引用させる方法を応用したものです。
- 形を決める。 「質問、答え、根拠、自信がない点」の4列の表、のように示します。
- 自分の目で3点を確かめる。 数字、日付、名前を、元の資料と照らします。さらに、AIが挙げなかった「いちばん嫌な質問」が、ほかにないかを自分で考えます。
頼みごとの例です。文面は僕らの作例で、公式の文書の引用ではありません。
「上の資料だけを根拠に、来週の予算会議で経理部長から出そうな質問を5つ挙げてください。各質問に、答えの案と、根拠になった資料の箇所を付けてください。資料にないことは『資料にない』と書いてください。」
気をつけること
- この記事は、実際に使って確かめた記録ではありません。手順と例文は、公式の共通点から組み立てた見立てです。
- WebFetchは要約を返す仕組みなので、公式ページの原文を逐語で確かめたわけではありません。表と本文は、要約を僕らの言葉で言い換えたものです。
- 数字、プラン名、ライセンスの区分は、変わりやすい点です。2026年10月22日に読み直した時点のものです。
- OpenAIとAnthropicのデータの扱い、ChatGPTやClaudeの会議向けの機能は、今回は確認していません。Googleの手引きはAPI向けの資料で、Googleドキュメントのヘルプは別の資料です。両方を同じ機能の説明として読まないでください。
- 会議の録音や文字起こしは、別の記事で扱っています。この記事は準備に限っています。
- AIの出力には誤りが混ざります。想定問答の答えは、口にする前に、元の資料で確かめてください。
- 会社の資料をAIに渡してよいかは、所属先の決まりが先です。これは法律や契約の助言ではありません。
出典
- Write effective prompts(Microsoft Learn、10月22日確認)
- Claude prompting best practices(Anthropic、10月22日確認)
- Prompt design strategies(Google AI for Developers、10月22日確認)
- Prompt engineering(OpenAI、10月22日確認)
- Help me write in Google Docs(Googleドキュメント ヘルプ、10月22日確認)
- Use Copilot in Microsoft Teams meetings(Microsoft、10月22日確認)
- Microsoft 365 Copilot overview(Microsoft Learn、10月22日確認)
- Generative AI in Google Workspace Privacy Hub(Google Workspace、10月22日確認)
更新履歴
-
2026年10月25日 書き方を直しました。
- 前:運営者が使っていないと読める書き方 → いま:「この記事は、実際に使って確かめた記録ではありません」。公式の資料を読んでまとめた記事で、使い心地は書いていない、という意味に直した
-
2026年10月22日 公式の資料を読み直しました。書いてあることに変わりはありませんでした。
