3行でいうと

  • 資料を入れる前に確かめることは5つです。会社の決まり、契約の種類、個人の情報、会社の秘密、保存期間と保存場所です。
  • いちばんの分かれ目は、個人の契約か会社の契約かです。同じAIでも、入力の扱いがはっきり違います。
  • 会社向けの契約では、ChatGPTもClaudeも、既定では入力と出力を学習に使わないと公式に書かれています。
  • 「学習に使わない」と「社外に出ない」は同じではありません。会社向けでも、資料は一定期間保存されます。

この記事は、公式・一次資料(AI会社の公式ヘルプ、官公庁の原典、法律の条文)を読んでまとめたものです。この記事は、実際に使って確かめた記録ではありません。法律や契約の話は、条文と公式資料の紹介で、自分の会社のケースが当てはまるかどうかの個別の判断は、弁護士など専門家と、会社の担当部署に相談してください。

先に結論

資料を入れる前に確かめることは、5つです。

  1. 会社に、AIの使い方の決まりがあるか。あれば、それに従う。
  2. 今使っているのは、個人の契約か、会社の契約か。ここがいちばんの分かれ目です。
  3. 資料に、個人の情報(顧客名簿、従業員の情報など)が入っていないか。
  4. 資料が、会社の「秘密」にあたらないか。取引先との秘密保持の約束はないか。
  5. 入れたあと、どのくらいの期間、どこに保存されるか。

公式資料を読むと、同じAIでも、個人向けの契約と、会社向けの契約とで、入力の扱いがはっきり違います。個人のアカウントに仕事の資料を貼ることと、会社が契約した環境に貼ることは、別のことです。

何が問題か

具体的な場面を考えます。

どれも、時間を節約できます。一方で、貼った資料は、AI会社のコンピューターに送られます。個人向けの契約では、入力が学習に使われる設定のことがあります(詳しくは同じ連載の記事「学習に使われないようにする設定」)。

確認1:会社の決まりと契約

まず、会社の決まりです。公式の資料を読んで言えるのは、国のガイドラインが、会社など「AIを業務で利用する者」に向けて、同じ方向の注意を書いていることです。

総務省と経済産業省の「AI事業者ガイドライン」第1.2版(2026年3月31日)の第5部は、AIを事業で使う側(AI利用者)に向けた項目です。そこに、次のようなことが書かれています(言い換えです)。

このガイドラインは、法律ではありません。ガイドライン自身が、関係者が自主的に取り組むための「非拘束的なソフトロー」(強制力のない指針)と説明しています。ただ、会社が社内の決まりを作るときの参考にされるものです。

見立てです。会社の決まりがまだない場合は、それ自体が、まず確認するべき問題だと思います。決まりのないまま、社員がそれぞれの判断で使うのは、危険です。

確認2:個人の契約か、会社の契約か

3つのAIの公式ヘルプで、仕事向けの契約の扱いを確かめました。

サービス 会社向けの契約での入力の扱い(公式の記載) 確認元
ChatGPT(OpenAI) Business、Enterprise、Edu、APIは、既定では入力と出力を学習に使わない。個人向けのChatGPTは、内容を学習に使うことがある OpenAI Help(How your data is used to improve model performance)、OpenAIのEnterprise privacyのページ
Claude(Anthropic) 商用の製品(Claude for Work、API)は、既定では入力と出力を使わない。ただし、評価ボタンなどのフィードバックを送ったり、自分から参加を選んだりすると使われ得る Claude Privacy Center(Is my data used for model training?)
Gemini(Google) Google Workspace(会社向け)は、組織の外での学習に、許可なく使わない。チャットとアップロードしたファイルは、人間の確認者に見られない Generative AI in Google Workspace Privacy Hub

注意点は、3つあります。

確認3:個人の情報が入っていないか

顧客名簿や従業員の情報が入った資料は、個人情報保護法に関わってきます。個人情報保護委員会の注意喚起(2023年6月2日)には、次のことが書かれています(言い換えです)。

委員会のリーフレットには、提供会社が入力を学習に使うと決めている場合、個人データを入れると、第三者への提供になり、原則として本人の同意が要る(個人情報保護法の第27条、第28条)、と説明されています。

詳しくは、同じ連載の「AIに入れてはいけない情報」の記事に書きました。個人情報保護法は、2026年7月に改正法が成立しています。施行時期は、委員会のページには見つかりませんでした。内容も僕らは読めていません。最新のルールは、個人情報保護委員会の公式ページで確認してください。

確認4:会社の「秘密」と、取引先との約束

営業秘密とは

不正競争防止法の第2条第6項には、営業秘密の定義があります。e-Govの法令検索で読んだ条文を言い換えると、「秘密として管理されている生産方法、販売方法その他の事業活動に有用な技術上又は営業上の情報であって、公然と知られていないもの」です。

経済産業省のページは、これを「有用性」「秘密管理性」「非公知性」の3つの要件を満たす情報と説明しています。そのうえで、秘密情報が不正に持ち出されたときに、不正競争防止法で民事上・刑事上の措置をとるには、その情報が「営業秘密」として管理されている必要がある、と書いています。

経済産業省は、営業秘密管理指針(2025年3月改訂)と、秘密情報の保護ハンドブック(2024年2月改訂)も公開しています。

AIに入れたことは、どう扱われるのか

ここが肝心ですが、「AIに入れたことが、秘密としての管理に影響するか」は、僕らが読んだ資料では確認できていません。経済産業省のページにも、AIに関する記述は見つけられませんでした。法律上どう評価されるかは、個別の事情によるため、専門家に確認してください。

取引先との約束

取引先と秘密保持契約(NDA)を結んでいることがあります。そこで、受け取った資料をほかの人(外部のサービスを含む)に渡すことが、どう扱われているかは、契約ごとに違います。この記事は、実際に使って確かめた記録ではありません。

見立てです。取引先から受け取った資料を、AIに入れてよいのかは、契約書を読んで、必要なら法務の担当者に聞くのが確実だと思います。

確認5:保存期間と、消せるか

会社向けの契約でも、保存されます。公式ヘルプで確かめた範囲を書きます。

  • OpenAIのAPI:入力と出力を含む記録(乱用の監視用)が、最長30日保持される。法律上の必要などがあれば、さらに長くなる。ゼロデータ保持(記録を残さない契約)を、承認された顧客に提供している。(OpenAIのAPIのドキュメントより)
  • AnthropicのAPI:入力と出力を、受け取りまたは生成から30日以内に削除する。ゼロデータ保持は、合意がある場合の例外。利用規約違反として検知された入力と出力は、最長2年、分類の点数は最長7年保持され得る。(Claude Privacy Centerより)
  • Anthropicの仕事用チャット(Claude for Work、Enterprise):削除した会話は、履歴からすぐ消え、裏側の保存から30日以内に消える。(同上)
  • Geminiの会社向け:会話履歴の保存は、管理者が管理する。(Workspaceのプライバシーハブより。数字は、ページによって読み取りが分かれたため、書いていません)

見立てです。保存期間は、「何日で消えるか」だけでなく、「誰が消せるか」も大切です。会社の管理者が一括で管理できるか、各自で消すのか、確認しておくとよいと思います。

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入れる前の早見表

見立てです。どの資料から考えるか、目安をまとめます。法律上の可否ではなく、僕らの整理です。

資料の種類 考え方
公開済みの資料(会社案内、公開した記事) 比較的、リスクは低い。それでも、会社の決まりに従う
社内向けの一般的な文書(手順書、議事録の要点) 会社が許可したサービスで。個人のアカウントは避ける
顧客・従業員の個人情報が入った資料 名前などを伏せるか、学習に使われない契約かを確かめてから。法務に確認
取引先から受け取った資料 秘密保持契約を確認してから
未発表の製品、財務、設計図など 原則として、入れない。入れるなら、会社の承認を得た環境だけ
パスワード、認証コード、APIキー どんな場合も入れない(別の記事を参照)

気をつけること

  • この記事は、実際に使って確かめた記録ではありません。この記事は、公式・一次資料を読んでまとめたものです。
  • 契約の名前(Business、Enterprise、Workspaceなど)や条件は変わります。公式ヘルプなどは2026年10月23日に読み直した時点のものです(e-Govの条文と、ガイドライン本編のPDFの細かい項目は、10月8日に読んだままです)。お使いの契約の内容は、契約書と、会社の管理者に確認してください。
  • OpenAIのEnterprise privacyのページには、削除した会話が30日以内に消える、という記載もありますが、確認できたのは1ページだけなので、表には入れていません。
  • Geminiの会社向けの会話履歴の保存期間は、読み取った数字がページ内で食い違ったため、書いていません。
  • 経済産業省・総務省のガイドラインや、営業秘密管理指針は、AIへの入力を直接の題材にしているわけではありません。AIに入れたことが営業秘密の扱いにどう影響するかは、確認できていません。
  • 個人情報保護法の改正(2026年7月成立)の内容は、読めていません。
  • 法律・契約の個別の判断は、弁護士など専門家に相談してください。

出典

更新履歴

  • 2026年10月25日 書き方を直しました。

    • 前:運営者が使っていないと読める書き方 → いま:「この記事は、実際に使って確かめた記録ではありません」。公式の資料を読んでまとめた記事で、使い心地は書いていない、という意味に直した
  • 2026年10月23日 公式の資料を読み直して、次の点を直しました。

    • 前:改正法の内容と施行時期は読めていない → いま:施行時期は委員会のページに見つからず、内容も読めていないと書きました
    • 前:条件は10月8日に読んだ時点のもの → いま:公式ヘルプなどは10月23日に読み直した時点のもの(e-Govの条文とガイドライン本編PDFの細かい項目は10月8日のまま)
  • 一部の出典は読めなかったため、その部分は前のままです。