3行でいうと

  • OpenAIとGoogle(有料)は、APIの入力を学習に使わないと書いています。ただしどの社も、不正利用の監視のために一定期間は残りえます。
  • ZDRは既定ではなく、契約や承認が要ります。さらに、対象の機能が限られ、ファイル保存やバッチなどは対象外の例があります。
  • ZDRでも、法令上の必要や、不正利用の疑いで検知された内容は残る場合があります。自分のアプリのログも別に設計が要ります。

この記事は、実際に使って確かめた記録ではありません。この記事は公式の文書を読んでまとめたものです。契約や法令の個別の判断は、専門家に相談してください。

先に結論

前提:用語を先にそろえる

標準の扱い:各社の公式の記載

項目 OpenAI Anthropic Google
学習への利用 APIのデータは、明示的に参加しない限り、モデルの学習や改善に使わない(2023年3月1日以降) 今回読んだ保持の文書には、学習の記載を確認していません Gemini APIの有料サービスは、プロンプトと応答を製品の改善に使わない。無料のサービスは使う
標準の保持 不正利用の監視ログは最長30日。法令上必要な場合や、サービスや第三者を守るために合理的に必要な場合は、それ以上 入出力はバックエンドから受領または生成後30日以内に自動削除。ただし例外あり(下記) Gemini API(有料)は「限られた期間」ログを取る。日数は読んだ規約に書かれていない
不正利用の疑いで残るもの 上記のログに含まれうる 利用ポリシー違反として自動検知された場合、入出力は最長2年、安全分類の点数は最長7年 Google Cloud側の文書では、疑いが検知された場合のプロンプトのログが最長90日
ZDRの取り方 事前の承認と追加要件への同意が必要。営業に問い合わせ 組織ごとに契約で有効にする。営業に問い合わせ 不正利用監視の例外の手続きを使う。ほかに機能ごとの設定がある

出典の日付は、OpenAIの「Your data」ページ、Anthropicのプライバシーセンターと開発者向け文書、Googleの規約(2026年3月23日発効、2026年4月28日更新)とGoogle Cloudの文書です。

無料と有料で扱いが変わる:Gemini API

Googleの規約では、Gemini APIとGoogle AI Studioに「無料(Unpaid)」と「有料(Paid)」の区分があります。無料の場合、送った内容と応答は製品の提供・改善・開発に使われ、品質向上のため人間の確認者が読み、注釈をつけ、処理することがある、と書かれています(Google アカウントやAPIキーなどとは切り離してから)。規約は、無料のサービスに、機密・個人情報を送らないよう求めています。EEA、スイス、英国では、無料のサービスにも有料の規約が適用される、という例外もあります。

有料は、プロンプトと応答を製品の改善に使わず、データ処理の付属書に従う、とされています。ただし、不正利用の検知などのため、一定期間ログを取ります。

Anthropicの例外

Anthropicの「How long do you store my organization's data」には、30日削除の例外が4つあります。Files APIのように保持期間をお客様が決めるサービス、ZDRのような別の合意、利用ポリシーの執行のための保持、法令上の保持です。フィードバック(良い・悪いのボタン、不具合報告)に紐づくデータは5年保持される、とも書かれています。

ZDRで何が変わり、何が残るか

OpenAI

OpenAIは、不正利用の監視ログからお客様の内容を除く制度を2つ用意しています。どちらも事前の承認が要り、組織単位またはプロジェクト単位で選べます。

対象外の機能は、ZDRを有効にしていても、アプリケーションの状態を保存することがあります。文書は「ZDRの対象外とされた機能は、ZDRが有効でも状態を保持しうる」と書いています。さらに、OpenAIは、特定のお客様に対して特定のモデルをZDRの対象外にする権利を、書面での事前通知とともに留保しています。重大なリスクの調査・防止のために必要な場合も同様で、その場合は内容を保持し、人が確認することがある、と書かれています。

OpenAIのエンドポイントごとの保持(公式の表より抜粋)

OpenAIの表は、エンドポイントごとに、学習への利用、不正利用の監視ログ、アプリケーション状態、ZDR対象かを示しています。学習への利用は、全行で「No」です。

エンドポイント 監視ログ アプリケーション状態 ZDR対象
/v1/responses 30日 既定で30日、またはstore=trueのとき。ZDRでは保存しない 対象(制限あり)
/v1/chat/completions 30日 なし(音声出力は1時間) 対象(制限あり)
/v1/conversations 削除まで 削除まで 対象外
/v1/files 30日 削除まで(expires_afterで指定も可) 対象外
/v1/vector_stores 30日 削除まで 対象外
/v1/embeddings 30日 なし 対象
/v1/audio/transcriptions なし なし 対象
/v1/batches、/v1/fine_tuning/jobs、/v1/evals 30日 削除まで 対象外

Assistants関連のオブジェクトは、削除してから30日後に消えるとあり、削除しないものは無期限に残る、と書かれています。上の表は一部の行だけを載せています。全体は公式ページで確かめてください。

「ZDR with Private Safety Processing」という選択肢もあります。ZDRの保護を保ったまま自動の安全監視を行う仕組みで、お客様が管理する保存先の設定など、追加の技術的・運用上の要件があると書かれています。僕らは、この仕組みの詳細は読んでいません。

Anthropic

Anthropicの開発者向け文書によると、ZDRは既定ではなく、組織ごとに契約で有効にします。新しい組織は、別に有効にする必要があります。

AnthropicのZDRで「対象」「対象外」とされた機能(公式文書より)

対象(Yes):Messages API、トークン数の計算、100万トークンの文脈窓、適応的な思考、ブラウザ操作、引用、コンピューター操作、文脈の編集と圧縮、データレジデンシー、メモリツール、PDF対応、プロンプトキャッシュ、ウェブ検索、ウェブ取得、テキスト編集ツール、Bashツールなど。

条件付き(Yes, qualified):キャッシュの診断、構造化出力。構造化出力は、JSONスキーマだけが最長24時間キャッシュされる、とあります。

対象外(No):エージェントスキル、バッチ処理、Claude Managed Agents、コード実行、Files API、MCPコネクタ、MCPトンネル(研究プレビュー)、プログラムによるツール呼び出し。

ウェブ取得は対象ですが、取得先のサイトの運営者が、リクエストのデータを自分の規則で保持することがある、と書かれています。

契約の内容によって、どの機能が対象かは異なりうる、と文書は書いており、最新の対象は契約書か担当者に確かめるよう案内しています。

Google

Google CloudのZDRの文書(Gemini Enterprise Agent Platformのページ。URLにはvertex-aiが残っています)は、ZDRを一言で定義せず、データを一定期間保持しうる領域ごとに、お客様がすることを並べています。

ZDRと両立しないものも書かれています。Grounding with Google Search(検索で根拠づけする機能)は、最長3日のログが残り、保存を止められない。Grounding with Google Mapsは30日で、止められない。Deep Researchエージェントのセッションは7日で、止められない。

Googleは、お客様の許可や指示なしに、データでモデルを学習・微調整しないと書いています(この文書が扱う管理されたモデル全般)。

自分のアプリのログと運用

見立てです。提供元のZDRを取っても、自分のアプリのログは別に残ります。AIを組み込んだアプリで、次を決めておくと事故が減ると思います。

  1. 何をログに残すか:入力の全文を残すと、そのログ自体が個人情報の保管庫になる。必要なら、識別子と長さ、モデル名、処理時間などに絞る。
  2. 保持期間と消し方:期限を決め、自動で消す。バックアップにも及ぶかを確かめる。
  3. 送る前に削る:氏名、連絡先、番号などを、AIへ送る前に伏せる処理を入れる。伏せたものを戻す対応表は、AIに渡さない。
  4. 保存される機能を意識する:ファイルのアップロード、会話の保存、ベクトル検索は、提供元側に残る。使うなら、削除の手順(消す呼び出し)を実装する。上の表のとおり、削除しないと残り続けるものがある。
  5. 契約と設定を確かめる:ZDRや地域の選択は、画面の設定でなく契約で決まるものがある。担当者に確かめ、文書に残す。
  6. 利用者への説明:何を誰に送るのか、プライバシーポリシーに合わせる。個人情報の取り扱いに関わる法令の扱いは、専門家に確認してください。

よくある失敗・つまずき

見立てです。公式文書の書き方から、起きやすいと思う点を挙げます。

気をつけること

出典

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