3行でいうと
- 社内資料に「AIを使った」と書くことを、一律に求める全国共通の決まりは、僕らが読めた資料の範囲では見つかりませんでした。文化庁の資料も、AI事業者ガイドラインも、「取引の相手や関係者への説明」「関連する人への情報提供」という形で、場面ごとに書いています。
- 各社の規約は、読んだ範囲では、だますことを禁じる方向ですが、書き方は違います(Googleは、出所を人が作ったと偽ることを明示しています)。「資料に注記を入れよ」という形の決まりとは読み取れませんでした。
- 実務では、「元の資料の出典」「AIを使った旨」「生成の記録」を別々に残すと整理しやすい、というのが僕らの見立てです。AIが挙げた出典は、実在するかを自分で確かめます。
この記事では、ここで取り上げる文書の書き方を実際の職場で運用して確かめたわけではありません。この記事は、公式の文書を2026年10月16日に読んでまとめたものです。公的文書の一部(AI事業者ガイドラインの利用者の章など)は本文を読めておらず、その点は「気をつけること」に書きました。僕らの考えは「見立てです」と書いた部分に分けています。法律や契約の助言ではありません。
先に結論
- 確かなこと。 文化庁の資料には、AIで作ったものを公開するときに「AIを使ったと書け」「出典を付けよ」と一般的に求める記載は、読んだ範囲では見当たりませんでした。ただし、AI生成物を取引の対象にするときは、AIを使ったことなどを関係者に説明することが求められています。
- ガイドラインの言い方。 AI事業者ガイドライン(第1.2版)は、AIを利用している事実と活用の範囲を、関連する人に、相手の知識に合わせて伝えることを挙げています。これは「資料にこの文言を書け」という形式の指示ではありません。
- 規約の言い方。 Googleの規約は、生成物の出所を、人間だけが作ったと偽って欺くことを禁じています。OpenAIの利用ポリシーには、その点を直接扱う条項は読んだ範囲に見当たりませんでした。
前提:3つの言葉を分ける
「出典」という言葉は、ふつう3つのことを混ぜて使われます。分けて考えると、あとの話が読みやすくなります。
- 元の資料の出典。 資料に書いた数字や主張の、もともとの出どころ(法令、統計、公式のページなど)です。AIが答えた文章ではなく、その元になった資料のことです。
- AIを使った旨の表示。 下書き、要約、翻訳などに、どのAIをどう使ったかを示すことです。
- 生成の記録。 どんな頼みごとの文章(プロンプト)で、どんな答えが出たかの控えです。あとから説明するために残します。
著作権の面は、別の記事で扱っています。ここでは「どう書き残すか」に絞ります。
公的な文書が書いていること
文化庁「AIと著作権に関するチェックリスト&ガイダンス」(令和6年7月31日)
業務でAIを使う人向けの部分を読みました。次のようなことが書かれています。
- 生成物を使う前に、既存の著作物と似ていないかを、インターネット検索などで確かめる。
- 既存の著作物そのものや、題名、キャラクターの名前をAIに入力して作らせると、依拠性(既存のものを知ったうえで作ったとみなされること)が認められやすくなる。
- 依拠性がないことを説明できるよう、使ったプロンプトなどの生成の過程を、確認できる状態にしておくよう努める。
- AI生成物を取引の対象にする場合は、AIを使ったことや著作物性(著作権で守られるものかどうか)を、関係者に説明する。
- 業務で使う人は、社内のルールと、侵害が起きたときの対応を、あらかじめ考えておく。
一方、AI生成物を公開するときに「AIを使ったと明示せよ」「出典・出所を表示せよ」と一般的に求める記載は、僕らが読めた範囲には見当たりませんでした。ここは「無いと言い切れる」のではなく、「読んだ範囲に無かった」という意味です。
AI事業者ガイドライン 第1.2版(総務省・経済産業省、令和8年3月31日)
このガイドラインは、AIの開発者、提供者、利用者のそれぞれが取り組むことを整理した文書です。社内でAIを使う会社は、このうちの「AI利用者」(事業活動でAIを使う事業者)にあたります。本編の次の点を読みました。
- 透明性の項目で、関連する人への情報提供として、「AIを利用しているという事実」と「活用している範囲」が挙げられています。相手の知識や能力に応じて、提供・説明することが求められています(p.21)。
- 検証可能性の項目では、入力や出力、判断の根拠などのログを、量や内容に照らして合理的な範囲で記録・保存することが挙げられています(p.20〜21)。
- 画像などの生成物では、人間の判断を挟む工夫の例として、生成物であることを示す透かしが脚注に出てきます。
つまり、ガイドラインは「AIを使っていること」と「どの範囲で使ったか」を、関係する人が知れるようにする方向を示しています。ただし、これは事業者向けの指針で、社内資料の注記の書式を決めるものではありません。AI利用者向けの詳しい章(第5部)と別添は、僕らは本文を読めていません。
文部科学省の学校向けガイドライン(Ver.2.0、令和6年12月26日)
学校向けの文書ですが、「何を書き残すか」が具体的に書かれているので、参考として読みました。学習の課題で生成AIの出力を引用するときは、生成AIを使ったことを明記する、とされています。例として、ツールの名前、入力したプロンプト、利用した日が挙がっています。また、最後は人が判断して責任を持つこと、AIの出力をほぼそのまま自分の成果として出すのは不適切なことも書かれています。学校の話で、会社にそのまま当てはまるものではありません。
各社の規約は何を言っているか
3社の規約を読みました。いずれも、AIサービスの「使い方のルール」で、あなたが作る資料の書式を決めるものではありません。
| 会社と文書 | 版の日付 | AIの出力と「人が作った」の関係で読み取れたこと |
|---|---|---|
| OpenAI 利用ポリシー | 発効日 2025年10月29日 | 欺瞞、詐欺、なりすましを禁じる。AI生成を人間の作と偽ること、開示を直接扱う条項は、読んだ範囲に見当たらない。関連する記述として学業不正の禁止がある |
| Google 生成AI禁止の使用ポリシー | ページに「最終更新 2024年12月17日」 | 誤解を招く行為の項で、生成コンテンツの出所を、人間だけが作ったと偽って人を欺くことを禁じる。開示ラベルを独立して義務づける項目は見当たらない。教育、科学、芸術などの観点で例外を設けることがある、とある |
| Anthropic 利用ポリシー | ページには2026年11月12日に発効と表示(現行版か予告か不明) | 一般の利用者と直接やりとりするチャットボットなどは、相手にAIだと伝える。人間のふりをすることを禁じる。詐欺的・不正な行為の項に、盗用と並んで、AIの支援を受けた成果物を、許可や出典の明記なしに提出する行為が挙がっている |
読み方のポイントは2つです。1つ目は、読んだ範囲では、規約が禁じる中心は「だますこと」で、「注記を付けないこと」そのものではない点です(Anthropicには、盗用と並べて、許可や出典の明記なしにAIの支援を受けた成果物を提出する行為を挙げた項目もあります。ただし、社内資料にどう当てはまるかは、僕らには判断できません)。2つ目は、規約は各社のサービスを使う人への決まりなので、社内メモに注記を付けるかは、結局あなたの職場の決まりになる点です。
画像の「しるし」は、消えることがある
AIで作った画像には、作成元を示すメタデータ(C2PAという標準の情報)が付くことがあります。OpenAIのヘルプによると、ChatGPTの画像のメタデータには、作ったツールや作成日時などが入る場合があります。ただし、共有、編集、ファイル変換などの途中で消えることがあります。見つかった場合でも、内容が正確か、改変されていないか、権利が誰にあるかは保証されません。画像自体に埋め込む別の仕組み(SynthID)もある、とも説明されています。
だから、画像を社内資料に貼るときは、ファイルの「しるし」に頼らず、資料の側にも「AIで作った画像」と書いておくほうが確実だ、というのが僕らの見立てです。
引用書式の一例:APA
論文の引用書式のAPAは、ChatGPTの出力の書き方を示した記事(2023年4月7日公開、2025年9月15日更新)を載せています。使い方を方法の節などで説明する、プロンプトと生成された文章を示す、開発元を著者とした参考文献を付ける、長い回答は付録に載せる、という内容です。この記事は、2025年9月に新しい指針が出たため、現在は参考用のアーカイブ扱いと書かれています。新しい指針は読めていません。筆者は、AIが挙げた5件の文献のうち1件が実在しなかったとも報告しています。
社内資料での付け方:見立てです
ここからは、上の文書を読んだうえでの僕らの見立てです。公的機関や各社が推奨する書式ではありません。
1. 3つを別々に残す。 「元の資料の出典」は、AIの答えではなく、元の法令、統計、公式のページを書きます。「AIを使った旨」は、資料の末尾や欄外に短く書きます。「生成の記録」は、資料の外(共有フォルダなど)に保管します。
2. AIを使った旨には、最低限これを入れる。 文部科学省の例(ツール名、プロンプト、日付)と、AI事業者ガイドラインの「利用の事実と範囲」を合わせると、次の4点になります。
- どのAIサービスか(名前、可能なら版)
- いつ使ったか
- どの範囲か(下書き、要約、翻訳、図の作成など)
- 人がどこまで確認したか
3. 場面で濃さを変える。 全部の資料に同じ重さで書く必要はない、と考えます。
| 場面 | 書き方の目安(見立て) |
|---|---|
| 個人のメモ、ブレスト | 注記は不要でも困らない。ただし、そのまま他の人に回すなら一言入れる |
| 議事録、社内の報告書 | 末尾に1行の注記。AIが作った要約は、人が確認した旨も書く |
| 意思決定の根拠になる資料 | 注記に加えて、数字と主張の出典を元の資料まで書く。生成の記録を保管する |
| 社外に出す資料、取引の対象になるもの | 文化庁の資料のとおり、AIを使ったことを関係者に説明できるようにする。相手や契約の条件を先に確かめる |
| 図や画像 | 画像の近くに「AI生成」と書く。ファイルのメタデータには頼らない |
4. AIが挙げた出典は、必ず実在を確かめる。 AIは、存在しない文献を示すことがあります。APAの記事の報告もその一例です。出典は、元の資料を開いて、書いてあることが合っているかまで見ます。
5. 数字、日付、固有名詞は、人の目で確かめる。 文部科学省の文書も、最後は人が判断して責任を持つことを基本に置いています。注記に「人が確認した」と書くなら、実際に確認したことを裏づけられる状態にしておきます。
注記の文例(見立て)
どれも、そのまま使えるように作った僕らの例です。公的な書式ではありません。会社の決まりがあるなら、そちらが先です。
- 下書きにAIを使った場合:「本資料の第2章の下書きに、生成AI(サービス名、2026年10月)を使用した。内容は担当者が確認し、数字は出典の資料で照合した。」
- 要約にAIを使った場合:「会議の議事録の要約部分は、AIによる自動要約をもとに、担当者が修正した。」
- 画像の場合:「図3は、生成AI(サービス名)で作成した画像である。」
気をつけること
- この記事では、実際の職場でこの書き方を運用して確かめていません。この記事は、公式の文書を2026年10月16日に読んでまとめたもので、法律や契約の助言ではありません。迷ったら、法務や担当部署、専門家に聞いてください。
- 読んだページは要約の形で返ってきたので、原文のままの引用はせず言い換えています。
- AI事業者ガイドラインは、本編の前半(第2部まで)だけ読めました。AI利用者向けの第5部と、別添の利用者向けの章は、本文を読めていません。
- 「一般的な義務の記載が見当たらない」というのは、読んだ文書の範囲の話です。業界ごとの規則、取引先との契約、自治体や学会、出版社の投稿規定には、別の決まりがあるかもしれません。それらは調べていません。
- 3社とも、個人向けの利用規約や法人向けの契約は別にあります。読んだのは利用ポリシーだけで、出力の権利や補償の条件は読んでいません。Anthropicのポリシーのように、将来の日付が表示されている場合もあります。
- 日本の法令で、資料にAI利用を表示する義務がどこまであるかは、僕らは網羅的に調べていません。景品表示法のステルスマーケティング規制など、広告に関する決まりは、別の記事で扱っています。
出典
- AIと著作権に関するチェックリスト&ガイダンス(文化庁、令和6年7月31日、10月16日確認)
- AI事業者ガイドライン 第1.2版 本編(総務省・経済産業省、令和8年3月31日、10月16日確認)
- 初等中等教育段階における生成AIの利活用に関するガイドライン Ver.2.0(文部科学省、令和6年12月26日、10月16日確認)
- Generative AI Prohibited Use Policy(Google、最終更新2024年12月17日、10月16日確認)
- Usage Policies(OpenAI、2025年10月29日発効、10月16日確認)
- Usage Policy(Anthropic、2026年11月12日発効と表示、10月16日確認)
- C2PA in ChatGPT Images(OpenAI Help Center、10月16日確認)
- How to cite ChatGPT(APA Style、2023年4月7日公開・2025年9月15日更新、10月16日確認)
更新履歴
- 2026年10月25日 書き方を直しました。
- 前:運営者がやっていないと読める書き方 → いま:主語を記事にして、「この記事は、実際にやって確かめた記録ではありません」と書きました。運営者が使っているものを、使っていないと読ませないための直しで、内容や数字は変えていません。
