3行でいうと
- Microsoftの2024年の調査では、仕事でAIを使う人の78%が、自分で持ち込んだAIを使っていました。黙って使うのは、珍しいことではないようです。ただし、これは1つの調査の数字です。
- OpenAIとAnthropicの公式ページには、会社向けのプランは、既定で入力を学習に使わない、と書かれています。個人向けの設定は別で、使うAIが同じ名前でも、アカウントの種類で扱いが変わります。
- 迷ったら、「何の作業に、どんな情報を、どのサービスで」の3つを、会社に聞いてよいです。聞くことは、悪いことではありません。
この記事は、公式の文書を読んでまとめたものです。この記事は、実際に使って確かめた記録ではありません。会社の規則や法律に当たるかどうかの判断は、助言ではありません。会社の担当者や専門家に確かめてください。「見立てです。」で始まる段落と、たとえ話は、僕らの考えです。
先に結論
- 「シャドーAI」は、会社が把握していないところで、個人の判断でAIを仕事に使うことです。 これは僕らの言い換えです。読んだ公式の資料には、この言葉での定義は確認できませんでした。
- 黙って使う人は、実際に多い、という調査があります。 ただし、Microsoftの調査で、年は2024年です。
- 同じAIでも、個人のアカウントと会社のアカウントでは、入力の扱いが違います。 会社向けでは、管理者が設定を管理でき、サービスによっては会話の閲覧などもできる、と各社のページに書かれています。
- まず、会社に聞く。 聞くための材料は、公式のページから集められます。
たとえ話:自宅のUSBメモリで、会社の書類を持ち帰る
僕らのたとえです。公式の文書にあるものではありません。
便利だからと、自分のUSBメモリに会社の書類を入れて持ち帰る人がいるとします。仕事は進みます。ただ、会社は、その書類がどこにあるのか知りません。USBメモリを落としても、会社は気づけません。
個人のAIアカウントも、似ています。入れた内容が、どう扱われるかは、自分の設定とそのサービスの規約で決まります。会社の目は届きません。
「シャドーAI」と、Microsoftの調査
Microsoftは、2024年の調査(Work Trend Index)で、仕事に自分のAIを持ち込むことを「BYOAI」と呼んでいます。数字は次のとおりです(2024年2月15日から3月28日の調査)。
- AIを使う人の78%が、自分で持ち込んだAIを仕事で使っている。中小企業では80%。
- AIを使う人の52%は、いちばん大事な仕事でAIを使っていることを、言いたがらない。
- 53%は、大事な仕事でAIを使うと、自分が替えのきく人に見えると心配している。
調査は、日本を含む31の市場の、知識労働者3万1,000人です。Microsoftは、この持ち込みを、会社のデータを危険にさらすものとして書いています。
見立てです。「みんなやっている」は、安全の理由になりません。ただ、黙っている理由に「評価が下がりそう」があるなら、それは自分だけの悩みではない、とは言えそうです。
個人のアカウントと会社のアカウント:何が違うか
公式ページで確かめた範囲を、表にします(2026年10月16日に確認)。
| サービス | 個人向け | 会社向け |
|---|---|---|
| ChatGPT(OpenAI) | 「Improve the model for everyone」の設定をオフにできる。評価ボタンを押した会話は学習に使われうる | 既定では学習に使わない。Businessでは、管理者が、社員の会話を、見る・書き出す・消すことができる |
| Claude(Anthropic) | 「Model Improvement」の設定で選ぶ。安全の確認で見つかった会話も、使われうる | 既定では入力と出力を学習に使わない。ただし、評価ボタンなどで送った内容は使われうる |
| Gemini(Google) | この記事では読んでいない | Workspaceでは、顧客の許可なく学習に使わないと書かれている。管理者がGeminiのアプリをオフにでき、利用の記録(監査ログ)がある |
ここで大事なのは、「会社向けなら何でも入れてよい」ではないことです。上の記載は、サービス側の約束で、会社が決める「入れてはいけない情報」のルールとは別です。
会社向けの公式の記載(日付つき)
- OpenAI(「Enterprise privacy」、2026年1月8日更新と書かれている):Business、Enterprise、Eduの入力は、既定では学習に使わない。オプトインした場合など(フィードバック経由)は別。削除した会話は、Business・Enterpriseで30日以内に消える(法的な理由などの例外あり)。Businessは、管理者がワークスペースの会話を、見る、書き出す、消すことができる。
- OpenAI(「Data controls FAQ」):個人プランでは、設定「Improve the model for everyone」をオフにすると、新しい会話は学習に使われない。ただし、過去の会話が消えるわけではない。BusinessとEnterpriseは、書き出しとアカウントの削除を本人ができず、ワークスペースの所有者に頼む。
- Anthropic(会社向けの学習の扱いのページ、2026年8月18日の日付):会社向けの製品(Team、Enterprise、APIなど)の入力と出力は、既定では学習に使わない。ただし、評価ボタンなどで送った会話は、最長5年保存され、学習に使われうる。TeamとEnterpriseの所有者は、この評価の送信を、組織の設定でオフにできる。
- Anthropic(個人向けの学習の扱いのページ、2026年3月16日の日付表示):個人向けは、「Model Improvement」の設定、安全の確認、自分からの参加(テスター制度)のどれかがあるときに、学習に使われうる。Incognito chatは、学習に使われない。
- Google(Workspaceの生成AIのプライバシーのページ。冒頭の更新日は2026年10月6日、末尾には2026年10月13日(UTC)の表示もある):顧客の許可や指示なく、生成AIのモデルを学習させない。Geminiアプリの会話の保存期間は、管理者が決め、既定は18か月。
数字と設定名は、変わることがあります。
黙って使うと、何が困るのか
公式ページから確かめられることと、僕らの見立てを分けます。
確かめられること。 個人情報保護委員会(2023年6月2日の公表)は、事業者に向けて、個人情報を含む文章をAIに入れるときは、利用目的の範囲内かを確かめること、提供会社がそのデータを学習に使わないことを確かめること、と書いています。一般の利用者には、入力した個人情報が学習に使われることがあること、サービスの利用規約やプライバシーポリシーを確認して判断すること、と書いています。ここから先は見立てです。会社がAIの扱いを確かめる必要があるのに、会社の知らない使い方がある、という状態では、確かめようがないと思います。
見立てです。 黙って使うと、次のことが起きうると思います。
- 事故が起きたときに、言い出しにくくなり、連絡が遅れる。
- 会社が、どのAIを、どの契約で使うかを決めるときに、現場の使い方が見えない。
- 個人のアカウントの履歴は、会社の管理の外にあるので、あとから確かめにくい。
総務省は、2026年3月31日に、AI事業者ガイドラインの第1.2版を公表しています(総務省のページの記載)。同じページには、チェックリストなどの別添と、「活用の手引き(案)」があります。ただし、僕らは、これらの本文を読めていません。
相談してよいこと
会社に「AIを使いたい」と話すとき、次の3つを伝えると、相手も判断しやすくなると思います(見立てです)。
- 何の作業に使うか。 たとえば、会議のメモの整理、メール文面の下書き。
- どんな情報を入れるか。 個人情報や取引先の情報が入るのか、公開されている情報だけなのか。
- どのサービスの、どのプランか。 個人向けか、会社向けか。会社のアカウントを使えるのか。
そのうえで、会社に聞いてよいことは、たとえば次のとおりです。
- 使ってよいAIは、決まっているか。会社が契約しているものはあるか。
- 入れてはいけない情報の決まりは、あるか。
- 使ったことを、誰に、どう報告すればよいか。
- 事故(間違った送信など)が起きたときの連絡先は、どこか。
誤解されやすい点
「禁止と書いていないから、使ってよい」 ルールが無いときは、「使ってよい」ではなく「決まっていない」です。決まっていないときこそ、聞く場面だと思います(見立てです)。
「会社向けのプランなら、何でも安全」 各社のページは、入力を既定では学習に使わない、などの約束を書いています。ただし、フィードバックを送る場合などの例外があります。どんな情報を入れてよいかは、会社のルールが決めます。
「みんな黙って使っているから、大丈夫」 調査の数字は、黙って使う人が多いことを示すだけです。それが安全かどうかは、別の話です。
今日からできること、やってはいけないこと
今日からできること
- 自分の使い方を、3行で書き出す(作業、入れる情報、使うサービス)。
- 会社のルール(AIの利用の決まり、情報の取り扱いの決まり)を探す。
- 迷ったら、上司や情報管理の担当者に、書き出したものを見せて聞く。
やってはいけないこと
- 個人情報、取引先の情報、パスワードを、個人のアカウントのAIに入れる。
- 禁止か許可かを、自分の都合のよいほうに解釈する。
- 誰にも言わずに、会社のデータを自分のアカウントに移す。
気をつけること
- 内容は、2026年10月16日に読んだ公式ページのものです。各社の設定名や保存期間は、変わりやすいです。
- Microsoftの調査は、2024年のものです。いまの割合は確かめていません。調査の対象は知識労働者で、日本だけの数字は読んでいません。
- 「シャドーAI」という言葉の公式な定義は、読んだ資料では確認できていません。この記事の説明は、僕らの言い換えです。
- 個人向けのGeminiの扱いは、この記事では読んでいません。会社のアカウントで使える機能の範囲も、会社の設定で変わります。
- AI事業者ガイドラインは、ページの案内だけを読み、本文は読んでいません。
- 読んだページは、取り込んだ文章を要約して返す道具を通しています。原文のとおりの引用はせず、言い換えています。細かな言い回しは、原文で確かめていません。
- 就業規則や法律に当たるかどうかは、この記事では判断していません。助言ではありません。会社の担当者や、専門家に確かめてください。
出典
- AI at Work Is Here. Now Comes the Hard Part(Work Trend Index、Microsoft、2026年10月16日確認)
- 生成AIサービスの利用に関する注意喚起等について(令和5年6月2日、公表資料PDF)(個人情報保護委員会、2026年10月16日確認)
- AI事業者ガイドライン(総務省、2026年10月16日確認)
- Enterprise privacy(OpenAI、2026年10月16日確認)
- Data controls FAQ(OpenAI Help Center、2026年10月16日確認)
- Is my data used for model training?(商用製品向け、Claude Privacy Center、Anthropic、2026年10月16日確認)
- Is my data used for model training?(個人向け、Claude Privacy Center、Anthropic、2026年10月16日確認)
- Generative AI in Google Workspace Privacy Hub(Google Workspace、2026年10月16日確認)
更新履歴
- 2026年10月25日 書き方を直しました。
- 前:運営者が使っていないと読める書き方 → いま:「この記事は、実際に使って確かめた記録ではありません」。公式の資料を読んでまとめた記事で、使い心地は書いていない、という意味に直した
